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第156話 黒幕の正体②
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「魅力的なお話だけどもやめとくわ」
そんな正也さんの挑発を軽く躱して先生はその申し出をはっきりと断った。
「そうですか? 理由を聞いてもいいですか」
まるでその答えが解っていたかのように平然と受ける正也さん。
対して先生は、
「……監視官だからよ」
と、ごく簡潔に答えた。
まともに相手をしていられないとでも言う風に。
「わかりました。では他の三人はどうです? 最恩さんに百恵ちゃん、それに宝塚さん、キミたちはどうする? 先生についてく? それとも所長かな? 僕のおすすめは所長だよ、断然こっちの方が楽しいと思うよ?」
まるで街中で少女をナンパする大学生のような軽さで私たちを勧誘してくる。
私はまったく意味がわからず正也さんに聞き返した。
「所長は……一体何をしているんです……? 何が目的で真唯さんを暴走させたんですか? どうして……こんなひどいことをするんですか」
真唯さんが消される瞬間を思い起こして私は涙を浮かべる。
しかし正也さんは面倒くさそうに耳垢を掻いて息を吐いた。
「……どうもこうも、所長の人間嫌いは宝塚さんも知ってるだろ? だからだよ」
「――――嫌いってそんな事で」
「所長の能力『念話』は人間の本性を底の底まで仇ける能力だ。それを若い頃から見続けてきたあの人にとって、一般人なんてそんな事で殺していいほどの価値にしか見えていないんだろうね。何かと理由をつけて殺して回るのが趣味だからねあの人」
「…………………………………………」
私はかつての往来での殺人行為を思い出して黙り込んだ。
「で、チマチマ殺してたんだけど、そのうちそれに賛同するメンバーも増えてきて、段々と殺しも派手になってきて、気がついたら組織に目を付けられるようになってきてね? だから最近じゃその火消しをするのも大変なんだよ?」
「……火消し?」
「そう。今回みたいにさ、ベヒモスを作って大量虐殺計画とか……ほら、こんなの組織にバレたら大変でしょ? だから知られないように証拠は隠滅し、知った相手は殺して回ってるのさ」
――――ベヒモスを……作るだと?
そして何かに合図するように正也さんは手をひらひらと掲げて見せた。
と――――、
ジャカジャカジャカジャカッ!!!!
店の客が一斉に銃器を手に取り立ち上がり、私たちを取り囲んだ!!
「――――なっ!??」
愕然と周りを見回す私たち。
なんだこの人達は!?
まさか全員正也さんの仲間!??
その客の何人かは小栗庵で見たことのある人もいた。
「お……お前ら…………」
百恵ちゃんが掠れた声で呟く。
すると銃を向けていた客の一人が彼女に銃口を向けながら震えた声で訴えかける。
「な……七瀬隊長、お願いです、抵抗をしないで下さい!!」
その男性は百恵ちゃんの部下――――JPASの戦闘員だった。
「……どういうことじゃ?」
百恵ちゃんが正也さんを睨みつける。
しかし正也さんは何も臆することなく返事を返す。
「見たまんまだよ。ここにいる人は全員所長の賛同者さ。……みんな過去に一般人から差別を受けた超能力者たちさ」
「223番……」
百恵ちゃんが男を番号で呼ぶ。
呼ばれた男は顔を青ざめさせながらも、彼女に向けた銃を下げようとはしない。
「お、俺は……」
震えながらその男は言った。
「俺は所長に拾われた恩があります!! 能力を気味悪がられて……イジメられてた俺を学校から引きずり出してくれた所長に!! ……だからあの人が一般人を殺せと言ったら俺は迷わず殺します!!」
「……理由があれば構わん、しかし無差別な快楽殺人は容認出来んぞ?」
との百恵ちゃんの返事、さらに死ぬ子先生が続ける。
「どっちにしろ、仲間殺しは重罪よ? ……わかっているんでしょうね?」
先生の怒りに正也さんは、
「どうなんでしょうね? ほら、あの人ちょっと掴みどころないですから。でもさすがに森田先生を殺したのはマズかったですよね? 結果的に秘密も隠しきれなかったし、完全に悪手でしたよ。こんなことならあの場で全員殺しておくべきでした」
「……残念ね、私は生きているし秘密も知ったわ。この事を本部に報告すれば所長は終わるわね?」
「はい。ですから聞いているんです」
そしてもう一度正也さんは私たちに聞いてきた。
「このままだと僕は君たちを処分しなきゃならなくなる。出来ればそれはしたくないんだけど……どうだろう、所長と一緒に無差別殺人を楽しんでみないかい?」
しかしその言葉に応える者はいなかった。
代わりに先生が言葉を返す。
「それを楽しんでるのはあんたじゃないの正也?」
「あは? まぁそうなんですけどね(笑)」
そして正也さんは首をコキコキ鳴らすと、
「そっかぁ……じゃあ本部にバレたくはないんで……ここで全員殺しますね?」
と、笑顔のまま宣言した。
――――ジャジャキッ!!!!
同時に無数の銃口が私たちに向けられる!!
それを見て私の薄い期待は完全に砕け散る。
――――そうか、正也さんはもう完全に敵なのか。
ダラララララララララララララララ――――――――ッ!!!!
そして私たちに向けて一斉掃射が始まる。
『ラミア結界術!!』
私はラミアにバリアを命じる。
先生も結果の盾を作って守りを固めた。
――――いまさら実弾攻撃なんて私たちには効かない。
百恵ちゃんと菜々ちん二人を結界の中に取り込んで、銃弾を弾き返す。
そして反撃を百恵ちゃんに頼もうとした所で――――、
ヌッと目の前に人が現れた。
それは私の本当に目と鼻の先。もう少しでキスしそうな至近距離。
「認識阻害や、あかんで油断しちゃ?」
そうニヤける彼女は――――天道渦女だった。
そんな正也さんの挑発を軽く躱して先生はその申し出をはっきりと断った。
「そうですか? 理由を聞いてもいいですか」
まるでその答えが解っていたかのように平然と受ける正也さん。
対して先生は、
「……監視官だからよ」
と、ごく簡潔に答えた。
まともに相手をしていられないとでも言う風に。
「わかりました。では他の三人はどうです? 最恩さんに百恵ちゃん、それに宝塚さん、キミたちはどうする? 先生についてく? それとも所長かな? 僕のおすすめは所長だよ、断然こっちの方が楽しいと思うよ?」
まるで街中で少女をナンパする大学生のような軽さで私たちを勧誘してくる。
私はまったく意味がわからず正也さんに聞き返した。
「所長は……一体何をしているんです……? 何が目的で真唯さんを暴走させたんですか? どうして……こんなひどいことをするんですか」
真唯さんが消される瞬間を思い起こして私は涙を浮かべる。
しかし正也さんは面倒くさそうに耳垢を掻いて息を吐いた。
「……どうもこうも、所長の人間嫌いは宝塚さんも知ってるだろ? だからだよ」
「――――嫌いってそんな事で」
「所長の能力『念話』は人間の本性を底の底まで仇ける能力だ。それを若い頃から見続けてきたあの人にとって、一般人なんてそんな事で殺していいほどの価値にしか見えていないんだろうね。何かと理由をつけて殺して回るのが趣味だからねあの人」
「…………………………………………」
私はかつての往来での殺人行為を思い出して黙り込んだ。
「で、チマチマ殺してたんだけど、そのうちそれに賛同するメンバーも増えてきて、段々と殺しも派手になってきて、気がついたら組織に目を付けられるようになってきてね? だから最近じゃその火消しをするのも大変なんだよ?」
「……火消し?」
「そう。今回みたいにさ、ベヒモスを作って大量虐殺計画とか……ほら、こんなの組織にバレたら大変でしょ? だから知られないように証拠は隠滅し、知った相手は殺して回ってるのさ」
――――ベヒモスを……作るだと?
そして何かに合図するように正也さんは手をひらひらと掲げて見せた。
と――――、
ジャカジャカジャカジャカッ!!!!
店の客が一斉に銃器を手に取り立ち上がり、私たちを取り囲んだ!!
「――――なっ!??」
愕然と周りを見回す私たち。
なんだこの人達は!?
まさか全員正也さんの仲間!??
その客の何人かは小栗庵で見たことのある人もいた。
「お……お前ら…………」
百恵ちゃんが掠れた声で呟く。
すると銃を向けていた客の一人が彼女に銃口を向けながら震えた声で訴えかける。
「な……七瀬隊長、お願いです、抵抗をしないで下さい!!」
その男性は百恵ちゃんの部下――――JPASの戦闘員だった。
「……どういうことじゃ?」
百恵ちゃんが正也さんを睨みつける。
しかし正也さんは何も臆することなく返事を返す。
「見たまんまだよ。ここにいる人は全員所長の賛同者さ。……みんな過去に一般人から差別を受けた超能力者たちさ」
「223番……」
百恵ちゃんが男を番号で呼ぶ。
呼ばれた男は顔を青ざめさせながらも、彼女に向けた銃を下げようとはしない。
「お、俺は……」
震えながらその男は言った。
「俺は所長に拾われた恩があります!! 能力を気味悪がられて……イジメられてた俺を学校から引きずり出してくれた所長に!! ……だからあの人が一般人を殺せと言ったら俺は迷わず殺します!!」
「……理由があれば構わん、しかし無差別な快楽殺人は容認出来んぞ?」
との百恵ちゃんの返事、さらに死ぬ子先生が続ける。
「どっちにしろ、仲間殺しは重罪よ? ……わかっているんでしょうね?」
先生の怒りに正也さんは、
「どうなんでしょうね? ほら、あの人ちょっと掴みどころないですから。でもさすがに森田先生を殺したのはマズかったですよね? 結果的に秘密も隠しきれなかったし、完全に悪手でしたよ。こんなことならあの場で全員殺しておくべきでした」
「……残念ね、私は生きているし秘密も知ったわ。この事を本部に報告すれば所長は終わるわね?」
「はい。ですから聞いているんです」
そしてもう一度正也さんは私たちに聞いてきた。
「このままだと僕は君たちを処分しなきゃならなくなる。出来ればそれはしたくないんだけど……どうだろう、所長と一緒に無差別殺人を楽しんでみないかい?」
しかしその言葉に応える者はいなかった。
代わりに先生が言葉を返す。
「それを楽しんでるのはあんたじゃないの正也?」
「あは? まぁそうなんですけどね(笑)」
そして正也さんは首をコキコキ鳴らすと、
「そっかぁ……じゃあ本部にバレたくはないんで……ここで全員殺しますね?」
と、笑顔のまま宣言した。
――――ジャジャキッ!!!!
同時に無数の銃口が私たちに向けられる!!
それを見て私の薄い期待は完全に砕け散る。
――――そうか、正也さんはもう完全に敵なのか。
ダラララララララララララララララ――――――――ッ!!!!
そして私たちに向けて一斉掃射が始まる。
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私はラミアにバリアを命じる。
先生も結果の盾を作って守りを固めた。
――――いまさら実弾攻撃なんて私たちには効かない。
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そして反撃を百恵ちゃんに頼もうとした所で――――、
ヌッと目の前に人が現れた。
それは私の本当に目と鼻の先。もう少しでキスしそうな至近距離。
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