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第145話 謎の襲撃者⑧
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え? ……ちょ、ちょっと待って。
頭が混乱してきた……。
今、真唯さんは何て言った?
正也さんの姿を指して、侵入者だと言ったのか?
いやいや、でも正也さんは山梨にいるから……あれ? でも、それを確認しただろうか?
先生が電話をかけている。
相手は百恵ちゃんだろうか?
しばらくして話を終えた先生が、険しい表情で私たちを見た。
「……天道正也は昨日から行方不明らしいわ。いま百恵たちが全力で捜索中だけれども、まだ行方はつかめていないそうよ」
「……な、なんで……?」
最悪な展開だった。
「その天道正也って誰なのかしら?」
真唯さんが聞いてくる。
「ああ……この子と同じ訓練生よ。能力は『認識阻害』……卒業間近だけれどまだ正式なJPA能力者ではないわね」
「そう、だったら私が知らないのも無理ないか……。で、そいつは何者なの? どうして私を……いえ、あのスマホを盗んで行ったのかしら?」
そんなこと聞かれても分かるはずがない。
先生も同じ気持ちなんだろうか、眉間にシワを寄せて考え込んでいる。
「で……でも、まだその侵入者が正也さんて決まったわけじゃ……」
「どういうことかしら?」
自分の目を疑われた真唯さんが、少し不機嫌に私を見る。
「だ……だって、さっき河合さんが……四人目の侵入者は死ぬ子先生と同じくらいの強能力者だって言ってました。……正也さんの能力の事はよく知りませんけど、訓練生が監視官である先生と同程度のレベルだなんてありえないんじゃないですか?」
との私の訴えに、
「……そうね、それはそうだわ」
と、先生が返事をした。
「正也は高校生時代からJPA訓練生に昇格して、妹共々、優勝ではあったけれどもずば抜けた能力使いでは無かったはずよ? 少なくとも私と同格だなんてありえないわね……」
「どの程度の能力者なの?」
「自分と、その半径2メートル内にいる人間の気配を遮断する能力よ」
「それだけ?」
「今のところはね。もっと訓練すればその有効範囲を広げられるし、認識阻害の応用で相手の注意の方向をコントール出来るようになるかも知れないと期待はされているけども、まだまだその粋には達していないわ」
さらりと言う先生だが、認識阻害範囲を広げられると言うことは、成長次第で……例えば軍隊なんかを丸ごとステルス状態に出来るということか?
さらに相手の注意の方向をコントールすると言うことは、敵の行動を操れるという事で……いやはや……どんなやばい能力よそれ???
……期待の新人と言われている私だが、他の訓練生も充分にヤバい人間ばかりである、このぶんだとまだ見ぬ卒業生の先輩方にはマジでキチガイレベルの能力者がうじゃうじゃいそうで怖い。
監視官への認定試験が難しいのもうなずける。
「河合の能力精度は私が保証するわ。彼女は相手の能力レベルを観測することも出来るから、その天道正也という人物は間違いなく熟練者レベルの使い手なはずよ?」
「……だとすると話しが合わないわね。一体どういうことかしら?」
先生は考えこむ。
スマホを奪っていった四人目の能力者は『認識阻害』使いで、そしてそれと同じ能力をもつ正也さんは現在行方をくらましている。
犯人として疑わしいが、しかし河合さんの観測した能力レベルと実際の正也さんのレベルは一致しないという。
「だったら、やっぱり犯人は正也さんじゃなくって、別の同じ能力使いって事じゃ……?」
期待を込めて先生と真唯さんを見るが、二人とも難しい表情は解けないでいた。
「……少なくとも、認識阻害を使える人間はJPAの中で三人いるわ」
真唯さんが口を開いた。
「でも、私の知る限り、その三人はJPAS所属……つまり弱能力者なのよ。認識阻害は使えても、ほんの一瞬、注意を反らす程度の効果しか持っていないわ」
「え……でも……」
「となると、考えられるのはJPA以外の組織メンバーなのだけれど、それもなかなか考えづらいのよね……」
「ど、どうしてですか?」
「だって、そんな能力者がいたなら私なんてとっくに誘拐されてると思わない?」
「あ……」
「JPA以外の組織って言ってもね、所詮、逸れ者の集まりみたいなもので実際はそんなに大した能力者はいないのよ。小さな組織じゃ訓練施設や研究部所なんて大規模な施設を持てないんだからそれも当然よね? だから、連中がちょっかいかけてきてもウチのJPASレベルの戦闘員で充分対処出来るのよ」
「か、海外組織もあるとか聞きましたけど。海外ならJPAと同格の組織もあるんじゃないでしょうか?」
悪あがきで食い下がってみる。
しかし真唯さんは笑って答える。
「もちろんあるわよ。でも、海外の大組織がウチに喧嘩を売ってくることはまず無いわね?」
「な、なぜですか??」
「超能力者同士の大戦争になるからよ。そうなったらお互い国家規模の損害が出てしまうわ、それを覚悟してでも仕掛ける理由なんて無いと思わない」
「…………~~~~……」
論破されて黙り込むしかない私。
ちょうど真唯さんの部下の人が内藤刑事の伝言を伝えに来た。
「宝塚様の携帯ですけど……所在が分からなかったそうです」
「今、組織からも連絡が来たわJPASでも、あんたのスマホは特定出来なかったようね、残念だけどたぶん破壊されたわ」
借りたスマホを机に置き、怒りの炎を揺らめかせ、先生は目を座らせた。
頭が混乱してきた……。
今、真唯さんは何て言った?
正也さんの姿を指して、侵入者だと言ったのか?
いやいや、でも正也さんは山梨にいるから……あれ? でも、それを確認しただろうか?
先生が電話をかけている。
相手は百恵ちゃんだろうか?
しばらくして話を終えた先生が、険しい表情で私たちを見た。
「……天道正也は昨日から行方不明らしいわ。いま百恵たちが全力で捜索中だけれども、まだ行方はつかめていないそうよ」
「……な、なんで……?」
最悪な展開だった。
「その天道正也って誰なのかしら?」
真唯さんが聞いてくる。
「ああ……この子と同じ訓練生よ。能力は『認識阻害』……卒業間近だけれどまだ正式なJPA能力者ではないわね」
「そう、だったら私が知らないのも無理ないか……。で、そいつは何者なの? どうして私を……いえ、あのスマホを盗んで行ったのかしら?」
そんなこと聞かれても分かるはずがない。
先生も同じ気持ちなんだろうか、眉間にシワを寄せて考え込んでいる。
「で……でも、まだその侵入者が正也さんて決まったわけじゃ……」
「どういうことかしら?」
自分の目を疑われた真唯さんが、少し不機嫌に私を見る。
「だ……だって、さっき河合さんが……四人目の侵入者は死ぬ子先生と同じくらいの強能力者だって言ってました。……正也さんの能力の事はよく知りませんけど、訓練生が監視官である先生と同程度のレベルだなんてありえないんじゃないですか?」
との私の訴えに、
「……そうね、それはそうだわ」
と、先生が返事をした。
「正也は高校生時代からJPA訓練生に昇格して、妹共々、優勝ではあったけれどもずば抜けた能力使いでは無かったはずよ? 少なくとも私と同格だなんてありえないわね……」
「どの程度の能力者なの?」
「自分と、その半径2メートル内にいる人間の気配を遮断する能力よ」
「それだけ?」
「今のところはね。もっと訓練すればその有効範囲を広げられるし、認識阻害の応用で相手の注意の方向をコントール出来るようになるかも知れないと期待はされているけども、まだまだその粋には達していないわ」
さらりと言う先生だが、認識阻害範囲を広げられると言うことは、成長次第で……例えば軍隊なんかを丸ごとステルス状態に出来るということか?
さらに相手の注意の方向をコントールすると言うことは、敵の行動を操れるという事で……いやはや……どんなやばい能力よそれ???
……期待の新人と言われている私だが、他の訓練生も充分にヤバい人間ばかりである、このぶんだとまだ見ぬ卒業生の先輩方にはマジでキチガイレベルの能力者がうじゃうじゃいそうで怖い。
監視官への認定試験が難しいのもうなずける。
「河合の能力精度は私が保証するわ。彼女は相手の能力レベルを観測することも出来るから、その天道正也という人物は間違いなく熟練者レベルの使い手なはずよ?」
「……だとすると話しが合わないわね。一体どういうことかしら?」
先生は考えこむ。
スマホを奪っていった四人目の能力者は『認識阻害』使いで、そしてそれと同じ能力をもつ正也さんは現在行方をくらましている。
犯人として疑わしいが、しかし河合さんの観測した能力レベルと実際の正也さんのレベルは一致しないという。
「だったら、やっぱり犯人は正也さんじゃなくって、別の同じ能力使いって事じゃ……?」
期待を込めて先生と真唯さんを見るが、二人とも難しい表情は解けないでいた。
「……少なくとも、認識阻害を使える人間はJPAの中で三人いるわ」
真唯さんが口を開いた。
「でも、私の知る限り、その三人はJPAS所属……つまり弱能力者なのよ。認識阻害は使えても、ほんの一瞬、注意を反らす程度の効果しか持っていないわ」
「え……でも……」
「となると、考えられるのはJPA以外の組織メンバーなのだけれど、それもなかなか考えづらいのよね……」
「ど、どうしてですか?」
「だって、そんな能力者がいたなら私なんてとっくに誘拐されてると思わない?」
「あ……」
「JPA以外の組織って言ってもね、所詮、逸れ者の集まりみたいなもので実際はそんなに大した能力者はいないのよ。小さな組織じゃ訓練施設や研究部所なんて大規模な施設を持てないんだからそれも当然よね? だから、連中がちょっかいかけてきてもウチのJPASレベルの戦闘員で充分対処出来るのよ」
「か、海外組織もあるとか聞きましたけど。海外ならJPAと同格の組織もあるんじゃないでしょうか?」
悪あがきで食い下がってみる。
しかし真唯さんは笑って答える。
「もちろんあるわよ。でも、海外の大組織がウチに喧嘩を売ってくることはまず無いわね?」
「な、なぜですか??」
「超能力者同士の大戦争になるからよ。そうなったらお互い国家規模の損害が出てしまうわ、それを覚悟してでも仕掛ける理由なんて無いと思わない」
「…………~~~~……」
論破されて黙り込むしかない私。
ちょうど真唯さんの部下の人が内藤刑事の伝言を伝えに来た。
「宝塚様の携帯ですけど……所在が分からなかったそうです」
「今、組織からも連絡が来たわJPASでも、あんたのスマホは特定出来なかったようね、残念だけどたぶん破壊されたわ」
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