超能力者の私生活

盛り塩

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第144話 謎の襲撃者⑦

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「――――ラミア」
『キュウイ♪』

 二時間ほど仮眠し、目を覚ました私はすっかり充填が完了していた。
 ……なんだか以前より復活が早くなっている気がするが、ま、それは成長の証と思って良しとしよう。

 私はさっそく真唯さんの怪我を治しにかかった。
 ラミアに命令し、怪我の程度に合った力を受け取る。
 それを彼女の体にかざすと、黄金の光に包まれる。
 そしてその光が収まった頃には真唯さんの傷はすっかり消えて無くなっていた。

「ん……?」
 薄っすらと目を開ける真唯さん。

「目が覚めたようね、やれやれやっと話しが進められるわ」
 先生が少し憎まれ口を混ぜながらホッとした表情を作る。

「……あれ、私…………ああ、そうか……」
 しばらく思案した後、彼女は全てを理解した顔で私を見た。

「怪我を治してくれたのね……ありがとう宝塚さん」
「あ……いえいえ全然、大したこと無いです、へへへ」

「で、だっ!!」
 鼻の下を擦り謙遜する私を押しのけて、死ぬ子先生が真唯さんに詰め寄った。

「さっそくだけど話の続きを聞かせてもらうわよ!!」
「話の続き……?」

 ポカンとする真唯さん。
 その頭を両手で掴んでぐりんぐりんシェイクする先生。

「寝ぼけてんじゃないわよ!! ここまで引っ張っといて忘れましたとか絶対通用せんからな!! さあ吐け!! 『し』の後は何なの、言いなさいよっ!!」
「あ……ああ~~あがががががががが……やめ、やめなさいっ!!」

 ――――ズゴッ!!
 と真唯さんの掌底が先生の顎へ綺麗にヒットした。

「全く……寝起きでちょっと朦朧としてただけよ……髪の毛がボサボサになってしまったじゃない」

 不機嫌そうに手櫛で整える真唯さんと、脳震盪で床に突っ伏す先生。
 なるほど、さすがに同期生だけあってこの生物の扱いは慣れているご様子だ。

「そんな事よりも、あなたたち大丈夫だった? あの襲撃者達は?」
「私と先生で撃退しました。三人とも殺してしまいましたけど……今は刑事の内藤さんが診療所の警備をしてくれています」
「そう……内藤さんが、なら安心ね。怪我人は私だけ?」
「はい。一応、先生が負傷しましたけど……まぁ、それは私が治しました」
「ああ……そういえばマリア、私を庇って負傷したんだっけ?」
「ぐぐ……そうよ、一つ貸しなんだから、もうちょっと丁寧に扱いなさいな」

 膝をガクガク揺らしながら先生が立ち上がってきた。

「そうね、それは感謝するわ。まさか私に向かって撃つなんて思わなかったから反応が遅れてしまったわ」
「……でしょうね。いくら能力使用中でもあんたがあんな雑な襲撃に無反応だなんておかしいと思ったのよ。咄嗟に助けられたから良かったものの、あんた下手したら今頃、頭打ち向かれてお陀仏だったのよ?」
「……今まで何回か襲撃されたけど、みんな私の誘拐が目的だったからね、命を狙われる事なんて一度も無かったのよ」
「それが……今回の襲撃は、どうも真唯さん目的じゃ無さそうなんです……」

 私が言うと真唯さんは『わかっている』という表情で見返してきた。

「連中の目的はあのスマホだったんでしょ? 正確に言えば例の画像データね?」
「はい。気付いていたんですか?」
「……意識を失う寸前に、私の手からスマホを抜き取って行った人物が一瞬見えたからね。そいつの姿はスマホとともにすぐに見えなくなったけど……認識阻害の能力だとすぐにわかったわ、多分、襲撃してきた三人は囮で、あのスマホを奪い取るのが本当の目的だったというところかしら?」

 すごいなこの人、あの一瞬のうちにほとんど完璧に状況を把握していたのか……?
 ――――て、いやいや、今なんて言ったこの人??

「抜き取って行った人物がですと!??」

「ええ、ほんの一瞬でけどね」
 してやったりな笑みで彼女は笑った。

「そいつは多分、私に気付かれずにまんまとあの場を去ったつもりだろうけど、生憎と相性が悪かったわね。私の透視は能力の阻害も透かして見ることが出来る。ヤツの顔はしっかりと見てやったわ」

「そ、それは誰よ!! まさか例の画像の男って言うんじゃないでしょうね!??」
 先生が声を荒げるが、真唯さんは首を横に振って、

「いいえ、あの画像の人物じゃ無さそうだったわ。顔はまぁ……変装でどうとでもなるけども、背格好や雰囲気が全然違ったからね、多分、違う人物よ?」
「じやあ誰なのよ!?」
「私の知らない人間だったわね。JPAの名簿はほとんど全員記憶しているから……やっぱりよその組織の人間かもね?」
「どんな特徴だった?」
「若い男だったわ……二十歳くらいでしょうね。爽やかな雰囲気で二枚目な優男って感じ……でも体格は良かったわね、格闘技でもしているような……」

 そこまで聞いて、否が応にも浮かんでくる一人の人間像。
 いやいや……まさか、その可能性はさっき否定したはずじゃないか??
 私は嫌な汗をじっとりと背中に滲ます。

「真唯……ちょっとあんたのスマホ借りるわよ」

 サイドチェストに置いてあった真唯さんのスマホを手に取り、それで私を念写する。
 そして出てきた画像には柔道の訓練をしている私と正也さんが写っていた。
 それを見た真唯さんはギュッと眉をひそめて私を見た。
 そして一番聞きたくなかった言葉を私たちに言った。

「……この男よ」と。
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