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第143話 謎の襲撃者⑥
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「……さて、この死体はどうしましょうかね? 警察組織《こちら》で処理しますか? それともソチラで処分しますか?」
聞かれた河合さんが死ぬ子先生を見る。
「……こちらで預かるわ、色々調べたいしね。それよりもあなた、随分と事情を知っているような話しぶりね?」
探るようなニヤケ顔で、先生がビール片手に私服警官を見やった。
「ああ……これは失礼」
と彼は一言謝り、そして小声で、
「私の娘も超能力者でしてね、そちらの組織のことは親として把握しているんですよ」
と、私達に言った。
彼は滋賀県警に務める内藤という刑事さんで、階級は警部。
数年前、彼の娘が超能力に目覚め、体調を激しく崩した時に治療に当たったのが真唯さんだったという。
それが切っ掛けで親である彼もJPAの存在を知り、それ以来、真唯先生には親子共々お世話になっているらしい。
「先月も署の健康診断で胃潰瘍だって診断を受けて先生に相談したんですわ。……そしたら『ライトノベル小説を100冊読め』って診断を受けましてなぁ……。で、その通りにしたら立ち所に回復しまして。いやぁ~~超能力ってものは素晴らしいものですな」
はっはっは、と笑う警部さん。
……なるほど、これはかなり事情を理解してくれている相手だ。
てか、読んだんだ……。
「して、今回の騒動は一体何が原因なんですかな? ……差し支えなかったらで構いませんが」
一転、真面目な顔をして先生に尋ねた。
「……ちょっと泥棒に入られたのよ」
皮肉交じりに答える先生。
「はぁ……泥棒……こりゃまた派手に侵入されたものですな。……それで何を盗まれたのですかな?」
「この子の携帯をちょっとね。……調べられるかしら?」
「やってみましょう。契約時のお名前をお教え頂けますかな?」
内藤さんが私に聞いてきた。
「え……と?」
わけがわからず戸惑っていると、先生が説明してくれる。
「GPSを探知して調べてくれるそうよ。やってもらったら?」
あ、そうか、その手があったか。
「えと、宝塚……女優《ひろいん》です」
「ん?」
目が点になる内藤さん。
「ですから宝塚女優です!!」
「――――あ~~……まあ、まあ、まあ……わっかりました……」
何がわかったというのか? 小一時間、問い正したい気分だ。
「今、本部が調べておりますので、暫くしたら連絡が来るはずです」
無線でやり取りしていた内藤さんが戻ってきた。
「……しかし、盗まれたと言うことは……犯人はこの三人以外にまだ居たと言うことですかな?」
「……多分ね」
「多分とは?」
ぶっきらぼうに答える先生に眉を寄せて内藤さんが訊ねる。
「……ここから先はこっちの両分ね、あなたたち警察ではどうにもならない世界の話よ、悪いけど」
先生がそう言うと彼はそれ以上は何も聞かずに、
「では、我々はしばらくここの警備をするってことで宜しいですかな?」
と、慣れた感じで確認してくる。
「あ、はい。よろしくお願いしますね」
それに河合さんが答えると、内藤さんは了解と言い残し、パトカーに乗り込んで行った。
「……ずいぶんとあっさり引いてくれましたね」
私が言うと、
「過去にも何度かありましたからね、その度、内藤さんが来てくれて警備してくれるんです。私たちの正体も上手いこと誤魔化して報告書を書いてくれているみたいですし、良い人ですよ」
河合さんがそう答えてくれた。
診療所の玄関には人が詰めかけて来ていた。
見るとみなここの常連患者さんみたいで、事情を説明している看護師さんの袖を引っ張り、心配そうに話を聞いている。
みんな騒動を聞きつけ、診療所が心配で見に来た様子だった。
その光景をみて、真唯さんが普段どういう医者であるのかが想像できた。
真唯さん家の冷蔵庫を拝借し、中にあった食材全てをジャンボお好み焼きに変えて平らげた私は回復促進のためにベッドに横になった。
その様をイライラした顔で先生は見つめてくる。
「……なにか?」
「いや、じれったいわねと思って。……もういいから外の警官二、三人適当に吸ってきたらどう?」
「年頃の乙女に卑猥を連想させるような行動を促さないように」
「あんたが勝手に連想しているだけでしょうが」
「……ともかく、よほどの理由がない限り、罪もない人に危害を加えるつもりはありませんよ私は」
「あんたねぇ……警察官に罪がないとでも思ってんの?」
「……半殺しにさせてしまうほどの罪は無いでしょう?」
「十人もいたら二、三人くらいはそのくらいの罰を与えてもいい奴はいると思うわよ? なんなら私が念写で選定してあげましょうか?」
「いらないです。先生の能力見ているとなんだか私まで人間不信になっちゃいそうだから」
「不信じゃないわよ。人間っていうのはみんなゲロカスでボケナスでスカポンチャンピンポンでゲジャゲジャな下等な存在なのよ、だからこれは確信よ!!」
「……語彙が壊滅するほど性格がよじれたくないので、やっぱり見たくないです」
「○△□〒!!※〆!!っ!!※■◎▽っっっつっっつっ!!!!」
興奮してまだ何か喚き散らしている先生を無視して、私は仮眠する事にした。
聞かれた河合さんが死ぬ子先生を見る。
「……こちらで預かるわ、色々調べたいしね。それよりもあなた、随分と事情を知っているような話しぶりね?」
探るようなニヤケ顔で、先生がビール片手に私服警官を見やった。
「ああ……これは失礼」
と彼は一言謝り、そして小声で、
「私の娘も超能力者でしてね、そちらの組織のことは親として把握しているんですよ」
と、私達に言った。
彼は滋賀県警に務める内藤という刑事さんで、階級は警部。
数年前、彼の娘が超能力に目覚め、体調を激しく崩した時に治療に当たったのが真唯さんだったという。
それが切っ掛けで親である彼もJPAの存在を知り、それ以来、真唯先生には親子共々お世話になっているらしい。
「先月も署の健康診断で胃潰瘍だって診断を受けて先生に相談したんですわ。……そしたら『ライトノベル小説を100冊読め』って診断を受けましてなぁ……。で、その通りにしたら立ち所に回復しまして。いやぁ~~超能力ってものは素晴らしいものですな」
はっはっは、と笑う警部さん。
……なるほど、これはかなり事情を理解してくれている相手だ。
てか、読んだんだ……。
「して、今回の騒動は一体何が原因なんですかな? ……差し支えなかったらで構いませんが」
一転、真面目な顔をして先生に尋ねた。
「……ちょっと泥棒に入られたのよ」
皮肉交じりに答える先生。
「はぁ……泥棒……こりゃまた派手に侵入されたものですな。……それで何を盗まれたのですかな?」
「この子の携帯をちょっとね。……調べられるかしら?」
「やってみましょう。契約時のお名前をお教え頂けますかな?」
内藤さんが私に聞いてきた。
「え……と?」
わけがわからず戸惑っていると、先生が説明してくれる。
「GPSを探知して調べてくれるそうよ。やってもらったら?」
あ、そうか、その手があったか。
「えと、宝塚……女優《ひろいん》です」
「ん?」
目が点になる内藤さん。
「ですから宝塚女優です!!」
「――――あ~~……まあ、まあ、まあ……わっかりました……」
何がわかったというのか? 小一時間、問い正したい気分だ。
「今、本部が調べておりますので、暫くしたら連絡が来るはずです」
無線でやり取りしていた内藤さんが戻ってきた。
「……しかし、盗まれたと言うことは……犯人はこの三人以外にまだ居たと言うことですかな?」
「……多分ね」
「多分とは?」
ぶっきらぼうに答える先生に眉を寄せて内藤さんが訊ねる。
「……ここから先はこっちの両分ね、あなたたち警察ではどうにもならない世界の話よ、悪いけど」
先生がそう言うと彼はそれ以上は何も聞かずに、
「では、我々はしばらくここの警備をするってことで宜しいですかな?」
と、慣れた感じで確認してくる。
「あ、はい。よろしくお願いしますね」
それに河合さんが答えると、内藤さんは了解と言い残し、パトカーに乗り込んで行った。
「……ずいぶんとあっさり引いてくれましたね」
私が言うと、
「過去にも何度かありましたからね、その度、内藤さんが来てくれて警備してくれるんです。私たちの正体も上手いこと誤魔化して報告書を書いてくれているみたいですし、良い人ですよ」
河合さんがそう答えてくれた。
診療所の玄関には人が詰めかけて来ていた。
見るとみなここの常連患者さんみたいで、事情を説明している看護師さんの袖を引っ張り、心配そうに話を聞いている。
みんな騒動を聞きつけ、診療所が心配で見に来た様子だった。
その光景をみて、真唯さんが普段どういう医者であるのかが想像できた。
真唯さん家の冷蔵庫を拝借し、中にあった食材全てをジャンボお好み焼きに変えて平らげた私は回復促進のためにベッドに横になった。
その様をイライラした顔で先生は見つめてくる。
「……なにか?」
「いや、じれったいわねと思って。……もういいから外の警官二、三人適当に吸ってきたらどう?」
「年頃の乙女に卑猥を連想させるような行動を促さないように」
「あんたが勝手に連想しているだけでしょうが」
「……ともかく、よほどの理由がない限り、罪もない人に危害を加えるつもりはありませんよ私は」
「あんたねぇ……警察官に罪がないとでも思ってんの?」
「……半殺しにさせてしまうほどの罪は無いでしょう?」
「十人もいたら二、三人くらいはそのくらいの罰を与えてもいい奴はいると思うわよ? なんなら私が念写で選定してあげましょうか?」
「いらないです。先生の能力見ているとなんだか私まで人間不信になっちゃいそうだから」
「不信じゃないわよ。人間っていうのはみんなゲロカスでボケナスでスカポンチャンピンポンでゲジャゲジャな下等な存在なのよ、だからこれは確信よ!!」
「……語彙が壊滅するほど性格がよじれたくないので、やっぱり見たくないです」
「○△□〒!!※〆!!っ!!※■◎▽っっっつっっつっ!!!!」
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