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第141話 謎の襲撃者④
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「……能力の匂い??」
河合さんの呟きに、私は眉を寄せて聞き返す。
能力に匂いなんてあったっけ?
「あ、ごめんなさい。私、念臭能力を持っているんです」
「ね……念臭とは???」
また出てきた新しい超能力用語に私は汗を流す。
すると死ぬ子先生が額を押さえてジト目で私を睨んできた。
「……あなたねぇ、渡した教科書全然読んでないでしょ?」
……教科書とはあれか? ジョイマッスル滝口著の『あなたも飛ばせる波動波』とかその他もろもろの怪しいオカルト雑誌のことか?
読んでいるわけがない。
そう目で答えると先生は『でしょうね』という顔でため息まじりに解説してくれる。
「念臭――――(クレアセント)とは、普通の臭覚に頼らず現実には存在しない香りを感知することができるESP能力よ」
「ぐ……具体的に……」
「だから……人や物の存在はもちろん、敵や味方、運の流れなんかを匂いに変えて知覚できる能力よ。よく言うでしょ『何だが怪しい匂いがするぜえ?』みたいなの。アレのことね」
「あ~~~~……何となくわかるかもぉ……」
「私の場合はそんなに大したものじゃなくて、能力者を匂いで区別出来る程度のものなんですけどね」
河合さんがテレたようすで謙遜してきた。
「そう、それであなたは感じたのね? その匂いを」
「はい。……四つ感じました」
「四つ!?」
その数字に驚く私。
「なに? 私たち以外で???」
「はい、三人はそこの襲撃者達です」
と、倒れている三人を指差す。
「……こいつら超能力者だったの!?」
「ええ、とは言っても大した能力者ではないようですが、せいぜいが私達JPASレベルかそれ以下の能力者です」
すごいな……相手の能力レベルまで判別できるのか。
「て、ことは……やっぱりこいつらただの強盗とかじゃないってこと?」
「……ですね。過去の例もありますし、やはり他の組織が先生を狙って襲撃してきたと考えるのが自然だと思います。」
私の問いかけに神妙な表情で頷く河合さん。
先生は再び襲撃者たちの顔を確認している。
「……干からびててよくわからないけど……それでもウチの組織の人間じゃなさそうね。でも一応本部に確認はしておいてね」
「はい」
応援の看護師さんの一人にそう指示をする先生。
…………? 一応確認?
「先生……まさかJPAの人間を疑ってるんですか!?」
「疑ってるわよ? ……なによその顔は」
心外とばかりに私を見返す先生。
その顔には何の負い目も浮き出ていなかった。
「いや、いくら何でも……それはヒドいんじゃないかと……」
「……あのねえ」
額を押さえて呆れる先生。
「あんたもウチの異常性知ってるでしょ? 仲間意識は大切だけれど、そんな可愛い集まりじゃないのよウチは。一応、超能力者同士助け合いましょうっていうのが思想だけれども、中には過激な派閥だって存在するわ」
「そ……そうなんですか」
「ですか、じゃないわよ。この前説明したでしょ『異端者』がいるって」
あ~~……そういえば……。
すっかり忘れていたが、そんな者の存在を教えてもらった気がする……。
たしかその異端者を監視するのが監視官の役目だとも。
「完っっっっっっ璧に忘れてた顔してるわよね?」
「じゃ、じゃあ……その『異端者』が襲撃者だったって事ですか」
「かも知れないってことよ。JPA以外にも超能力組織は細々とだけど存在するわ、そいつらの仕業かもしれないし、海外の連中かもしれない。ともかく真唯レベルの能力者を欲しがる組織なんて世界中に山ほどあるから数えだしたらキリが無いわ」
「はぁ……」
その話を聞いて私はあらためてゾッとする。
私も真唯さんと同じく希少能力者だからだ。
「まぁ、それでもJPAに喧嘩を売れる組織なんてほとんどいないから、おのずと怪しいのは身内って事になってくるのよね、経験則的にね」
監視官の先生はそれだけ身内の裏切りや暴走を見てきたという事だろう。
だからまずは内部から調べる癖が付いているのかもしれない。
「で、その四人目の能力者っていうのは誰のことかしら?」
先生が河合さんに尋ねた。
そうだ、襲撃者は三人だ、四人では計算が合わない。
そして河合さんは確信のある表情で答えた。
「四人目は、その三人より強力な能力者ですね。レベルで言えば七瀬監視官に匹敵するほどの者です」
「ほう?」
先生の眉がピクリと反応する。
監視官と同じ程度の能力者なんてそれこそJPA全体でも数えるほどしかいないはずだけども……?
もしそれが本当ならばかなり厄介な相手と言うことになる。
「え? で、でもそんな人間いませんでしたよ!? 襲撃してきたのは確かにこの三人だけだったし……」
私が言うと河合さんが鼻をヒクつかせて、
「……三人の襲撃者からは別のルートで侵入していますね……この部屋の扉から入って来ているようです」
と、警察犬さながらに河合さんは答えた。
「扉って……いや、だって……やっぱり誰も来なかったよ!??」
意味がわからないと表情で訴えるが、
「でも、私の嗅覚では確かに扉からこう進んで……ここで折り返して、そして再び扉から廊下へ抜けてます」
その説明では、四人目の能力者はいったん真唯さんの側まで寄って、折返し逃走したとなっている。
「え……私達になんの危害も加えずに? それって何のために……?」
「決まってるでしょ」
私の疑問に先生が苦虫を十匹くらい食ったような顔で答える。
「こいつらの狙いは、もともとあの画像だったってことよ」
河合さんの呟きに、私は眉を寄せて聞き返す。
能力に匂いなんてあったっけ?
「あ、ごめんなさい。私、念臭能力を持っているんです」
「ね……念臭とは???」
また出てきた新しい超能力用語に私は汗を流す。
すると死ぬ子先生が額を押さえてジト目で私を睨んできた。
「……あなたねぇ、渡した教科書全然読んでないでしょ?」
……教科書とはあれか? ジョイマッスル滝口著の『あなたも飛ばせる波動波』とかその他もろもろの怪しいオカルト雑誌のことか?
読んでいるわけがない。
そう目で答えると先生は『でしょうね』という顔でため息まじりに解説してくれる。
「念臭――――(クレアセント)とは、普通の臭覚に頼らず現実には存在しない香りを感知することができるESP能力よ」
「ぐ……具体的に……」
「だから……人や物の存在はもちろん、敵や味方、運の流れなんかを匂いに変えて知覚できる能力よ。よく言うでしょ『何だが怪しい匂いがするぜえ?』みたいなの。アレのことね」
「あ~~~~……何となくわかるかもぉ……」
「私の場合はそんなに大したものじゃなくて、能力者を匂いで区別出来る程度のものなんですけどね」
河合さんがテレたようすで謙遜してきた。
「そう、それであなたは感じたのね? その匂いを」
「はい。……四つ感じました」
「四つ!?」
その数字に驚く私。
「なに? 私たち以外で???」
「はい、三人はそこの襲撃者達です」
と、倒れている三人を指差す。
「……こいつら超能力者だったの!?」
「ええ、とは言っても大した能力者ではないようですが、せいぜいが私達JPASレベルかそれ以下の能力者です」
すごいな……相手の能力レベルまで判別できるのか。
「て、ことは……やっぱりこいつらただの強盗とかじゃないってこと?」
「……ですね。過去の例もありますし、やはり他の組織が先生を狙って襲撃してきたと考えるのが自然だと思います。」
私の問いかけに神妙な表情で頷く河合さん。
先生は再び襲撃者たちの顔を確認している。
「……干からびててよくわからないけど……それでもウチの組織の人間じゃなさそうね。でも一応本部に確認はしておいてね」
「はい」
応援の看護師さんの一人にそう指示をする先生。
…………? 一応確認?
「先生……まさかJPAの人間を疑ってるんですか!?」
「疑ってるわよ? ……なによその顔は」
心外とばかりに私を見返す先生。
その顔には何の負い目も浮き出ていなかった。
「いや、いくら何でも……それはヒドいんじゃないかと……」
「……あのねえ」
額を押さえて呆れる先生。
「あんたもウチの異常性知ってるでしょ? 仲間意識は大切だけれど、そんな可愛い集まりじゃないのよウチは。一応、超能力者同士助け合いましょうっていうのが思想だけれども、中には過激な派閥だって存在するわ」
「そ……そうなんですか」
「ですか、じゃないわよ。この前説明したでしょ『異端者』がいるって」
あ~~……そういえば……。
すっかり忘れていたが、そんな者の存在を教えてもらった気がする……。
たしかその異端者を監視するのが監視官の役目だとも。
「完っっっっっっ璧に忘れてた顔してるわよね?」
「じゃ、じゃあ……その『異端者』が襲撃者だったって事ですか」
「かも知れないってことよ。JPA以外にも超能力組織は細々とだけど存在するわ、そいつらの仕業かもしれないし、海外の連中かもしれない。ともかく真唯レベルの能力者を欲しがる組織なんて世界中に山ほどあるから数えだしたらキリが無いわ」
「はぁ……」
その話を聞いて私はあらためてゾッとする。
私も真唯さんと同じく希少能力者だからだ。
「まぁ、それでもJPAに喧嘩を売れる組織なんてほとんどいないから、おのずと怪しいのは身内って事になってくるのよね、経験則的にね」
監視官の先生はそれだけ身内の裏切りや暴走を見てきたという事だろう。
だからまずは内部から調べる癖が付いているのかもしれない。
「で、その四人目の能力者っていうのは誰のことかしら?」
先生が河合さんに尋ねた。
そうだ、襲撃者は三人だ、四人では計算が合わない。
そして河合さんは確信のある表情で答えた。
「四人目は、その三人より強力な能力者ですね。レベルで言えば七瀬監視官に匹敵するほどの者です」
「ほう?」
先生の眉がピクリと反応する。
監視官と同じ程度の能力者なんてそれこそJPA全体でも数えるほどしかいないはずだけども……?
もしそれが本当ならばかなり厄介な相手と言うことになる。
「え? で、でもそんな人間いませんでしたよ!? 襲撃してきたのは確かにこの三人だけだったし……」
私が言うと河合さんが鼻をヒクつかせて、
「……三人の襲撃者からは別のルートで侵入していますね……この部屋の扉から入って来ているようです」
と、警察犬さながらに河合さんは答えた。
「扉って……いや、だって……やっぱり誰も来なかったよ!??」
意味がわからないと表情で訴えるが、
「でも、私の嗅覚では確かに扉からこう進んで……ここで折り返して、そして再び扉から廊下へ抜けてます」
その説明では、四人目の能力者はいったん真唯さんの側まで寄って、折返し逃走したとなっている。
「え……私達になんの危害も加えずに? それって何のために……?」
「決まってるでしょ」
私の疑問に先生が苦虫を十匹くらい食ったような顔で答える。
「こいつらの狙いは、もともとあの画像だったってことよ」
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