超能力者の私生活

盛り塩

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第138話 謎の襲撃者①

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「……それは、さすがに言い過ぎよ」

 真唯さんが白けた目で私を見てきた。

「はい?」
「……あなた今、声に出して言っていたわよ、『神具にも匹敵する』とか」

 あああ、しまったまた悪い癖が!!!

「恥っずかしい子ね……もしかして中二病かしら?」
「あ……そうなんだ、じゃあしょうがないわね」

 今度はあたたかい目で微笑んでくれる。
 うぉおいっ!! 違うぞっ!??

「でも、あなたもちょっと私を過信しすぎね、この画像……思ったよりも苦戦しそうよ?」
 唇を丸めて真唯さんは先生にもそう言った。

「え、そうなの? ……記憶の障壁はこの宝塚さんがあらかた粉々にしたはずだけれど?」
「……あなたの念写を辿って探ってるんだけど……何ていうか……正体不明の能力片がノイズみたいに邪魔してなかなか探りきれないのよ……」
「それってあの、黒幕の能力ですよね?」
「そうね、瞬も葬ったというのに……なんてしぶとい能力なの」
 私の言葉に死ぬ子先生も悔しそうに爪を噛む。

「……この力の主は相当な能力者みたいね、少なくとも……JPAの中でもトップクラスの能力レベルを持っているはずよ」

 真唯さんの見立てに私と先生は目を見合わせた。

「トップレベルってどのくらいですか?」
 私が先生に訊くと。

「……ウチで言えば女将や料理長……あと片桐ってところかしら?」
「そ、そんな能力者が敵に回ってるってことですか!??」

 片桐さんの悪魔的な強さを思い出しゾッとする。
 女将や料理長もそうだが、この三人はそれぞれ、不死身のはずの私を回復の間も与えず、おそらく瞬殺できる。
 そんなレベルの相手だと言うのだ。

「……まだ、敵と決まったわけじゃないわ、まずは目的を探ることよ。それにこの相手はPK能力者じゃない。あきらかにESP能力者よ」
「え~~~~と……PKとか、それなんでしたっけ?」

 それを聞いた先生がガクッと肩を落とす。

「ま、まぁつまり戦闘タイプじゃないだろうって話しよ」

 それだけ言うと先生は缶コーヒーを傾けた。
 うん、最初っからそう言ってくれればわかりやすいのだ。

 ふうふう……と真唯さんの荒い息遣いが聞こえる。
 相当、能力に力を注ぎ込んでいる様子だ。
 なにがどういう理屈で苦戦しているか私にはよくわからないが、頑張ってくれていることはわかる。

 そしてそのまま画像を見つめ一時間ほどが経ったころ。

「……見えてきたわ」
 汗だくになった彼女がぼそっと呟いた。

「はっ!??」
 頬杖をついて寝ていた先生がビクッと起きる。

 ……おい、真唯さんが頑張ってくれているのになんて態度だあんた!!
 と、寝ぼけ眼で睨み付けてやる。

「本当? でかしたわマユっち、さあ、情報を伝えて!!」

 カモンカモンと興奮する先生。
 私も真唯さんの次の言葉に注目する。

「……性別は……男で……痩せ型、顎髭とサングラス……そして能力は……」
 そこで、真唯さんの言葉が止まる。

「どうしたのマユっち? 能力は?? そこが肝心なのよ、ヤツの能力は何なの!!」

 かぶりつく勢いで先生が詰め寄るが、真唯さんは固まっている。

「真唯さん?」
「おい、どうしたそこでフリーズするな頑張れマユっち!!」

「……能力は……し」

 と言いかけた所で、窓の外に複数の人影が現れた。

「――――なっ!??」
 いきなりの気配に、それでも死ぬ子先生は敏感に反応した。

 ――――ガシャァァァァァァンッ!!!!

 同時に窓ガラスが一斉に砕け散った!!
 そして続いて鳴り響く、連続した銃声!!

 ダラララララララララララララッ!!!!

 窓枠はひしゃげて飛び散り、家具や家電も無数の銃弾に破壊されていく。

 なに!? いきなり何がっ!??
 数発の銃弾を食らった私は血を吹き出し吹き飛ばされる。

 先生は真唯さんを庇うように彼女に飛びついてソファーごと後ろに倒れ込む。
 血が弧を描いているのが見えた。

 どっちの血だ!?

 その心配を無視して、襲撃者達は部屋になだれ込んできた!!
 ――――その数三人。

 三人はみな全身を黒い戦闘服で固めていて、顔も黒い覆面をしている。
 手にはマシンガンを持っていて、それそれの銃口が私たちを狙っていた。

 一体なんだコイツラは!?
 なぜ突然私たちを襲って来たッ!??

 そんな疑問を置いて、私はすぐに動いた。
 傷を回復させるために精気が消耗される。
 さっき先生を若返らせたぶん、精気は残り少なかった。
 体力がなくなり目眩がしてくる。

 だが問題無い。
 エサは目の前にいるじゃないか。

「ラミアっ!!」と叫び。

 ――――ダンッ!!
 床を蹴る。

 目の前の一人が私に向かって引き金を引くが、

 ダララララ――――!!!!
 その弾が身体にめり込むことも構わず私はそいつに飛びかかった。

「――――っ!!!!」

 銃弾に怯まず向かってくる私に慌てた素振りを見せる侵入者。
 もう一人がそれに反応し、銃口を向けてくるが、

 ――――ガシッ!!!!

 私の手のほうが一瞬早かった!!
 それぞれの手で二人の身体を掴み――――、

「先に仕掛けて来たのはそっちだからね!!」
 痛みに乗せた怒りの声で二人を睨みつけると同時に、
『ギュキュキュッ!!!!』
 ラミアが吠えた。

「――――ぐ、う!??……!??」
 二人の身体からみるみる精気が送られてくる。

「う……うがあわわわぁぁぁぁぁぁ……!!!!」

 断末魔の叫びを上げ、二人は朽木のように枯れて、その体を折り曲げていく。
 代わりに私の傷が癒えて、体格も戻っていった。
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