超能力者の私生活

盛り塩

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第135話 森田真唯③

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「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ……気持ち悪かったぁ……」

 シャワーを借り、アホにかけられたゲロを綺麗に洗い流して私はゲッソリする。
 朝シャワーの快適さよりもゲロの気持ち悪さのほうが圧倒的に強い。

「なんか……ごめんね、マリアが迷惑かけて……」
 着替えのシャツとタオルを渡してくれながら、真唯さんは申し訳無さそうな顔をしてくれる。

「いえいえ、こちらこそ先生がご迷惑お掛けしちゃって……」
 私も真唯さんに頭を下げる。

「ぷっ、くくく……」
「あ、ははは……」

 私たちは見つめ合って笑ってしまった。
 二人とも、同じ馬鹿のせいで頭を下げ合っていたのだ、可笑しくないわけはない。

「なぁにぃ二人して笑っているのよう~~……気持ち悪いわね~~……」
 そんな私たちに死ぬ子先生は悪態をついてくるが、

『いや、あんたに言われたらお終いだわ』

 と、二人同時に言い返してやった。




「ラミア……しょうがないから先生を若返らせてあげて」
『キュウィ!』

 にょにょにょにょ~~~~~と先生の容姿がみるみる若返っていく。

「おぉ~~~~~~~~っ!???」

 それを見て目を丸くする真唯さん。
 代わりに痩せていく私を見てさらに、

「あらあらあらあら…………!???」
 と、もう一つ大きく目を開いた。

 やがて現れた可愛らしい女の子二人に、真唯さんはまるで手品でも見せられたかのように感心し、手を叩いた。
 今回の先生はJKバージョンにしておいた。さすがに幼女の姿で酒を飲まれるのはハラハラするからだ。

「……話には聞いていたけど、すごい能力ねぇ……。あの所長が絶賛するのもうなずけるわ」
 私とラミアをマジマジと見つめて真唯さんはため息を吐く。

「ね、これってどんな病気や怪我も治せるの?」
 面白そうに、興奮した顔で尋ねてくる。

「まぁ、多分は……病気に関してはまだ試したことがないですけど」
「あなたさぁ、こんな馬鹿の教え子なんてやっていないで私の助手にならない?」
「へ?」
「あなたなら絶対いい医者になれるわ。ね、私と組んで一緒に仕事しない?」
「こらこら、人の教え子を勝手に危険に晒してんじゃないわよ」

 私をスカウトしようとする真唯さんを、ちょっと不機嫌そうに止めに入る死ぬ子先生。

「う~~ん……だめかしら?」
「ダメに決まってるでしょ? この子の能力の希少性はマユっちだって充分わかるでしょうに、目立ったことをしたらあなただって危険に晒されかねないのよ?」
 と、朝食として用意してくれた入院食を突っつきながら言う先生。

「やれやれ……勿体ない話ね……」
 そう説得され、しぶしぶ納得する真唯さん。

「そんな事よりもさ、私にも着替えを貸してくれないかしら? さすがにあの服はもう入らないわ」
 と、脱ぎ捨ててあった幼女服を指差して先生は言った。




 服を借り、朝食を済ませた私たちはさっそく……と言うかようやく本題に入ることにした。

「で、私に鑑定してほしい画像って何かしら?」

 食後の缶コーヒーを渡してくれながら真唯さんは先生に尋ねた。
 ちなみに本日は木曜日だが休診日になっているらしい。
 それでも事務的な仕事など細かな雑務はあるらしいが、私たちの相手をしている時間は充分あると言ってくれた。

「これよ」

 と、Yシャツとパンツ姿の先生は私のスマホを真唯さんに見せる。
 ちなみに私はサイズがコロコロ変わるので入院服を着させてもらっている。
 そこに写っている例の画像を見て真唯さんは片眉を上げた。

「ずいぶん画像がぼやけてるわね? ……これ本当にあなたが念写したの?」
「……そうよ」
「ふうん……マリアにしては随分精度が悪いように見えるけど……ああ、そうか、何かで邪魔されてるのねこれ」
 真唯さんは少し観察しただけでかなりの状況を理解したようだ。

「さすがね、その通りよ。これはとある能力によって封印されていた記憶。それを解いて念写したのだけれど、それでも完全には写しきれなかったの」
 先生が、事の顛末を一から説明した。

「……なるほどねぇ、その瞬っていう微能力者がベヒモス化した瞬間の場面がこれだと。で、写っているこの人物が何かそれに関係しているんじゃないかと?」
「そうよ、でも見ての通り画像がぼやけて輪郭くらいしか解らないのよ」

「う~~~~~~ん…………」
 真唯さんが目を細めて画像を見つめる。

「まあ、まだ少し……その封印の能力とやらが残っているみたいだから、それが原因だとは思うけれどもね」
「え? その画像を見ただけでそんな事までわかるんですか!??」
 私はびっくりして訊ねると。

「まあね、昨日の夜言ったでしょ、私はって」
「……目が……?」

「それが彼女の能力って話よ」
 意味がわからずポカンとしていると死ぬ子先生が解説してくれた。

「彼女の能力はね『天眼通《てんがんつう》』――――の透視能力よ」

 先生は思わせぶりにニヤリと笑うと、足を組み替え、胸をそらして自慢気に言った。

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