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第131話 旅飯
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ぶっちゃけて言ってしまおう。
私は新幹線に乗るのが初めてだ。
中学の修学旅行は京都で、本当ならそこでデビューするはずだったのだが、悲しいことに私はそれを欠席してしまっていた。
理由はまぁその……家庭の事情と言いましょうか……。何となく親戚の人に旅費を出してもらうのが忍びなかったと言うか何というか……。
ともかくその日は熱が60度くらいあると言って欠席したのですよ。
そういうわけで、私は今とっても感動しています。
もの凄く速く過ぎていく景色に、これがほんとに鉄のレールの上を走っているのかと疑いたくなるほどに静かな車内。
そして何より、ワゴンで運ばれてくる車内販売が泣かせるではないか。
一度これで弁当を買うのが夢だったのだ。
「え~~と、新幹線弁当三つにおにぎり弁当五つ、あとカツサンドにミックスサンド、それからアーモンドチョコレートとポテチ、抹茶アイスとコーラ五本お願いします」
販売係のお姉さんを呼び止めて注文をする。
「……………………。」
固まるお姉さん。
「えくすきゅーずみぃ~~?」
手をふぁさふぁさと振ってみる。
「はっ!? あ、し、失礼いたしました!! え~~と……ご注文のほどは……?」
「ですから、新幹線弁当三つにおにぎり弁当五つ、カツサンドにミックスサンド、アーモンドチョコレートとポテチ、抹茶アイスとコーラ五本お願いします」
「は、はぃぃ……っ!!」
慌てて品をワゴンから取り出すお姉さん。
「……あと、私はビールに鯛入りちくわと柿の種をお願いばぶばぶ」
「はいっ……え~~~~と、全部で8970円になります」
「はい、一万円ばぶ」
「お預かりします。1030円のお返しになります、ありがとうございました」
お辞儀をして去っていくお姉さん。
そしてすかさずビールを開ける幼女。
「…………案外気付かれないものですねぇ」
「何事も堂々とやれば案外なんでも許されちゃうものばぶよ?」
ごくごくとビールを傾けながらケケケと笑う幼女先生。
私の大量注文で呆気にとられたか、幼女が酒を頼んでしまうのを見逃してしまうお姉さん……迂闊すぎる(笑)
ほかの乗客も自分達の観光や仕事に手一杯で、ちくわ片手にビールをあおる幼女という異様さに気付く者はいない。
まぁ世間なんてそんなものである。
私もこれまでのスプラッタな事件の数々で鍛えられてきたのか、それしきの非常識など気にしなくなっていた。
「……もぐもぐ、で、先生? もぐもぐ……なんでいきなり、もぐもぐ……新幹線なんです? 私……昨日の今日で疲れているんですけど……もぐもぐ」
「ごくごく……ちょっと、ぷっは~~。滋賀に、ぽりぽり……用事が、ごくごく、あってねばぶばぶ」
「……その、ばぶばぶ気に入ってるんですか?」
「うん、せっかくだからねばぶばぶ」
ま、まぁ……幼女にしたのは私なんだから文句は言わないが、ばぶばぶ言われる度に萌えてしまう自分がいちいち悔しい。
「……で、その滋賀県に用ってのは?」
「知り合いの超能力者に会いに行くばぶよ」
「知り合いの超能力者??」
「そうばぶ。……ちょっとこいつを鑑定してもらおうかと思ってばぶ」
そう言って先生がクマさんポーチからスマホを取り出した。
「あっ!! それ私が貸してたスマホ、返してくださいよぅ……」
「まだばぶ。鑑定が終わったら返してやるばぶ」
「鑑定って一体何ですか??」
……まさか売るつもりじゃないだろうな。
怪しげな目で見るが、先生はその小さな指で画面をピコピコ操作すると一枚の画像を見せてきた。
そこには画面の半分ほどを占めるぼやけた手の甲と、その奥にさらにぼやけて映る人の影があった。
「もぐもぐもぐ……この写真が何なんです」
新幹線弁当の深川めしを口いっぱい頬張りながら尋ねる。
「瞬の隠された記憶の中身ばぶよ」
ぶ~~~~~~~~っ!!!!
あさりとはまぐり、出汁の染み込んだお米が弾丸となって前に座るジェントルマンのハゲ頭に積もった。
「か、か、隠された記憶って、あの謎の能力のですか!??」
「そうばぶ」
「い、一体どうやって……いつの間に!?」
「骨の刃に刺されたときばぶね。あの瞬間、私の能力を発動させてヤツの記憶の内側を激写してやったばぶ!!」
そしてニヤリと笑う先生。
そうか、そういえば先生の能力は最後に触れた相手だけはカメラを向けずとも念写することが出来るのだった。
「本当はもっとしっかりフレームにおさめて撮った方が綺麗に取れるんだけどね、あの時はそんな暇無かったし、手探りでこの一枚取るのが精一杯だったわ。あ、ばぶ」
426番さんに渡す直前にごそごそやっていたのはコレだったのか。
あのギリギリの状況で……なんて抜け目のない。
ふざけた存在だけれども、歴戦の猛者でもあるのだなと改めてそう思った。
「……で、この写真の人物は誰と誰なんです?」
「手前の手は瞬のものよ。奥の人物はわからないばぶね。でもこれは瞬がベヒモス化した瞬間の様子を彼の目線で写したものだから、その人物が例の黒幕の可能性は高いわね」
黒幕とはつまり……瞬をベヒモス化し、その記憶を封印し、そして再び彼を化け物に変えて暴れさせた張本人かもしれない人物。
そしてそれが事実なら、私が倒すべき人物でもあるのだ。
「……この男が…………」
移された光景全体がぼやけて顔は判別出来ないが、そのシルエットで男だと言うことだけはわかった。
私は新幹線に乗るのが初めてだ。
中学の修学旅行は京都で、本当ならそこでデビューするはずだったのだが、悲しいことに私はそれを欠席してしまっていた。
理由はまぁその……家庭の事情と言いましょうか……。何となく親戚の人に旅費を出してもらうのが忍びなかったと言うか何というか……。
ともかくその日は熱が60度くらいあると言って欠席したのですよ。
そういうわけで、私は今とっても感動しています。
もの凄く速く過ぎていく景色に、これがほんとに鉄のレールの上を走っているのかと疑いたくなるほどに静かな車内。
そして何より、ワゴンで運ばれてくる車内販売が泣かせるではないか。
一度これで弁当を買うのが夢だったのだ。
「え~~と、新幹線弁当三つにおにぎり弁当五つ、あとカツサンドにミックスサンド、それからアーモンドチョコレートとポテチ、抹茶アイスとコーラ五本お願いします」
販売係のお姉さんを呼び止めて注文をする。
「……………………。」
固まるお姉さん。
「えくすきゅーずみぃ~~?」
手をふぁさふぁさと振ってみる。
「はっ!? あ、し、失礼いたしました!! え~~と……ご注文のほどは……?」
「ですから、新幹線弁当三つにおにぎり弁当五つ、カツサンドにミックスサンド、アーモンドチョコレートとポテチ、抹茶アイスとコーラ五本お願いします」
「は、はぃぃ……っ!!」
慌てて品をワゴンから取り出すお姉さん。
「……あと、私はビールに鯛入りちくわと柿の種をお願いばぶばぶ」
「はいっ……え~~~~と、全部で8970円になります」
「はい、一万円ばぶ」
「お預かりします。1030円のお返しになります、ありがとうございました」
お辞儀をして去っていくお姉さん。
そしてすかさずビールを開ける幼女。
「…………案外気付かれないものですねぇ」
「何事も堂々とやれば案外なんでも許されちゃうものばぶよ?」
ごくごくとビールを傾けながらケケケと笑う幼女先生。
私の大量注文で呆気にとられたか、幼女が酒を頼んでしまうのを見逃してしまうお姉さん……迂闊すぎる(笑)
ほかの乗客も自分達の観光や仕事に手一杯で、ちくわ片手にビールをあおる幼女という異様さに気付く者はいない。
まぁ世間なんてそんなものである。
私もこれまでのスプラッタな事件の数々で鍛えられてきたのか、それしきの非常識など気にしなくなっていた。
「……もぐもぐ、で、先生? もぐもぐ……なんでいきなり、もぐもぐ……新幹線なんです? 私……昨日の今日で疲れているんですけど……もぐもぐ」
「ごくごく……ちょっと、ぷっは~~。滋賀に、ぽりぽり……用事が、ごくごく、あってねばぶばぶ」
「……その、ばぶばぶ気に入ってるんですか?」
「うん、せっかくだからねばぶばぶ」
ま、まぁ……幼女にしたのは私なんだから文句は言わないが、ばぶばぶ言われる度に萌えてしまう自分がいちいち悔しい。
「……で、その滋賀県に用ってのは?」
「知り合いの超能力者に会いに行くばぶよ」
「知り合いの超能力者??」
「そうばぶ。……ちょっとこいつを鑑定してもらおうかと思ってばぶ」
そう言って先生がクマさんポーチからスマホを取り出した。
「あっ!! それ私が貸してたスマホ、返してくださいよぅ……」
「まだばぶ。鑑定が終わったら返してやるばぶ」
「鑑定って一体何ですか??」
……まさか売るつもりじゃないだろうな。
怪しげな目で見るが、先生はその小さな指で画面をピコピコ操作すると一枚の画像を見せてきた。
そこには画面の半分ほどを占めるぼやけた手の甲と、その奥にさらにぼやけて映る人の影があった。
「もぐもぐもぐ……この写真が何なんです」
新幹線弁当の深川めしを口いっぱい頬張りながら尋ねる。
「瞬の隠された記憶の中身ばぶよ」
ぶ~~~~~~~~っ!!!!
あさりとはまぐり、出汁の染み込んだお米が弾丸となって前に座るジェントルマンのハゲ頭に積もった。
「か、か、隠された記憶って、あの謎の能力のですか!??」
「そうばぶ」
「い、一体どうやって……いつの間に!?」
「骨の刃に刺されたときばぶね。あの瞬間、私の能力を発動させてヤツの記憶の内側を激写してやったばぶ!!」
そしてニヤリと笑う先生。
そうか、そういえば先生の能力は最後に触れた相手だけはカメラを向けずとも念写することが出来るのだった。
「本当はもっとしっかりフレームにおさめて撮った方が綺麗に取れるんだけどね、あの時はそんな暇無かったし、手探りでこの一枚取るのが精一杯だったわ。あ、ばぶ」
426番さんに渡す直前にごそごそやっていたのはコレだったのか。
あのギリギリの状況で……なんて抜け目のない。
ふざけた存在だけれども、歴戦の猛者でもあるのだなと改めてそう思った。
「……で、この写真の人物は誰と誰なんです?」
「手前の手は瞬のものよ。奥の人物はわからないばぶね。でもこれは瞬がベヒモス化した瞬間の様子を彼の目線で写したものだから、その人物が例の黒幕の可能性は高いわね」
黒幕とはつまり……瞬をベヒモス化し、その記憶を封印し、そして再び彼を化け物に変えて暴れさせた張本人かもしれない人物。
そしてそれが事実なら、私が倒すべき人物でもあるのだ。
「……この男が…………」
移された光景全体がぼやけて顔は判別出来ないが、そのシルエットで男だと言うことだけはわかった。
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