超能力者の私生活

盛り塩

文字の大きさ
上 下
128 / 292

第128話 隠された記憶㉕

しおりを挟む
 ギギギ……と鈍い動きで破壊された右腕を見つめる瞬。

 先生の結界弾すら跳ね返した硬い骨格に自信があったのか、彼は意味がわからないとばかりに百恵ちゃんを見返した。
 対して百恵ちゃんは冷ややかな目線のまま語る。

「……吾輩のガルーダをそこらの爆薬と同じに考えておるとしたら、それは大きな間違いじゃぞ……」
 そして手を天に掲げ、

「――――ガルーダ」
 振り下ろす。

 と、――――ズドドドドドドムッ!!!!
 今度は瞬の左足が吹き飛んだ。

「貴様の骨格がどんなに頑丈だろうと、吾輩のガルーダは――――、」

 ――――ズドドドドドドムッ!!!!
 さらに右足が爆発する。

 ガシャンッ。
 両足を破壊された瞬は壊れた人形のように崩れ落ちる。

「その組織の内部――――細胞の隙間隙間に入り込んで種を植え付ける事が出来る」

 ――――ズドドドドドドムッ!!!!
 そして左腕。

「……内側から無数の爆破を食らっては、自慢の装甲もたまらんようじゃなぁ!!」

 ――――ズドドドドドドドドドドドドドドドムッ!!!!
 そして腰骨と肋骨が爆発。

 残ったのは頭部とそこから伸びる背骨だけになった。

「…………ふん、また元の姿に戻ったのう? ……じゃが、もう油断も容赦もせん……」

 そう言って冷ややかな目の奥に炎を灯す百恵ちゃん。
 一番硬い頭蓋骨に覆われた瞬の頭部だが、彼女のガルーダにはまるで意味がない。

「――グルゥギギギィ!!!!」

 ――――シュッ!!!!

 能力で浮き上がり、逃げようとするが、しかしガルーダはテレポート属性。速さで逃げられるものでもない。
 中にある脳、眼球、肉組織――――全ての隙間にガルーダは爆弾の種を植え付ける。

「貴様への借りはこれで返すぞ、消えてなくなれぃっ!!!!」
 両手を掲げ――――、

「怒れっ!! ガルーダァァァァァァァァァッ!!!!」
 叫び、振り下ろす!!

 ――――ボッ!!!!
 一瞬だけ、瞬の頭が膨れ上がったかと思うと、

 ――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドムッ!!!!

 小さな、しかし無数の炸裂が残った全身を襲った。
 その爆発は繋がり、大きな爆発へと変わる。

 ゴバァァァァァァァァァァァァンッ!!!!

 炎の無いその爆発は、彼の肉体が粉々に砕け散り霧散する様子を鮮明に伝えてくれる。
 そうして瞬は文字通り、塵となって空に消えて行った。



 ――――どしゃっ!!
 百恵ちゃんが力尽きて倒れた。

「百恵さん!!」
 そこへ菜々ちんが走っていき、彼女を抱きかかえる。

「…………ぐ、すまんのぉ……いまので一気に精神力を使い切ってしまった」

 さっきの技――――無数の極小爆発を作り出すのはやはり相当な負担なのだろう。
 全回復で復活したはずの百恵ちゃんが、もうすでに満身創痍である。
 連発は出来ない、彼女の奥の手だったのだろう。

「いいえ、百恵さんのおかげでみんな助かりました、ありがとう御座います!!」
 涙を浮かべて菜々ちんがお礼を言う。

「……ふん、なにを言うか、吾輩は戦闘班の隊長じゃぞ? むしろおヌシらに怪我をさせてしまった落ち度を謝りたいくらいじゃ」
 そして彼女は私に顔を向けて、

「ヒロインもすまなかった……助けられたな。この借りはいつか必ず返そうぞ……」

 彼女には珍しく素直な表情でテレたように私にそう言ってくれたが、残念な事にその顔を私はあまり覚えていなかった。
 その時にはすでに私は安堵で気を失っていたからだ。

 結局、この戦闘で無事だったのは菜々ちんと426番さんだけだった。
 それだけ瞬は――――いや、彼に掛けられた謎の能力が強力だったという事である。
 瞬を倒してしまい、能力も消えて謎だけが残ったが、きっとこの黒幕とは因縁が繋がっているだろう。

 根拠はないが直感でそう感じた。




「――――て、起きろ~~~~~~~~いっ!!!!」
 落ちた私を強制的に引き戻す百恵ちゃん。

「な……あが、あが、だめ……もう寝かせて……」
 虚ろな目と、ヨダレを垂らした口で弱々しい抗議をするが、

「まだじゃ!! まだ治してほしい人間がいるんじゃーーーーっ!!!!」
 そうして彼女は姉と323番さんを指差す。

 ――――あ、ホントだ。

 先生もマズいが、323番さんがヤバい。
 首を半分くらい切断されて、すでに流れる血も尽き意識も無くなっている。
 しかし今のうちならラミアの回復できっと助けることが出来る。
 問題は、私の精気の補充だが――――、
 ジト……と菜々ちんを見つめる私と百恵ちゃん。

「……う……」

 一瞬もの凄く嫌そうな顔をした彼女だが、仲間の人命が掛かっているのだ、拒否はしなかった。

「……では、頂きます。ぐふふふふふ……」
「あ、あの宝塚さん、せめてそのいやらしい表情はやめて貰えますぅぅぅぅ~~~~~~~~ーーーーーーーーっ!!!!??」

 掴んだ腕から精気を強制吸引する。

「おほほほほほほほ♡ やっぱりむさ苦しいオジさんより、べっぴんさんの養分は美味ですなぁ~~~~~~~~♡」

「へ……変なこと言わないでくだ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーぐふっ!!」

 そうして無傷で残ったのは426番さんだけとなった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

沈まぬ大陸の世界史(UKW)「初期設定案と今後の取り組み等について」

Sigure cou
SF
0.はじめに 本作品は、実在するいかなる組織・団体・個人とも関係が無い。フィクション作品となっております。 私は皆様と一緒に、スターウォーズのレジェンズ(正史ではない方)やSCP財団のように、皆様と一緒に作っていく。仮想世界を想定して作っております。 勿論ですが、骨がなければ肉の形を保つのが難しいように、軸がなければ皆様が少しでもこの作品に興味を持ってくださって関連作品等を作ってくださろうと思っても。作品を作るのが難しくなってしまうと思われるため。 この世界線での軸(正史)を作る為にも主である私も頑張っていこうと思います。ぜひ、この作品「沈まぬ大陸の世界史(UKW)」を応援してくださると有り難いです。これからよろしくお願いいたします。少しでも興味や好感を持って頂けたら有り難いです。関連作品を作ってくださるような心優しい方が居ましたら。コメントやご連絡下さい。大変長くなりましたが、何卒これから宜しくお願いいたします。m(_ _)m またこちらのものは私がかなり前に一年近く考えた「初期案」であり。現在までで歴史や兵器、軍隊の仕組み等に対する価値観等に少々の解釈の変更や設定の変更等が行われる可能性がありますので、あくまでもスタート0の状態であると思って頂けると幸いです。またこの下書きは一年近くかけてちょびちょび付け足していった為。文章等に多少気になるとこらがあると思います。それと同時にこちら大雑把なあらすじと言っておきながら3万字程とまぁまぁ読むと長いものとなっております。そちらの程、御理解の元読んで頂けると幸いです。 あらすじ ムー大陸と呼ばれる現代では幻の大陸とされる太平洋に存在したと想定されている巨大な大陸。そこには古代に高度に進んだ技術を持った文明があったとされ。大規模な自然災害により。古代に1日で滅び海底に沈んでしまったとされる大陸。この大陸が沈まなかった世界線では、どのような世界線が描かれるのか。皆様と一緒に作っていく。IF世界史です。興味や好感を持てて頂けると幸いです。興味を持って下さり関連作品を作ってくださる方等が居ましたらご連絡貰えると有り難いです(コメントでも有り難いです)

処理中です...