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第71話 いびつな力②
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連れて行かれたのは病棟の地下にある集中治療室だった。
「おう来たか姉貴、宝塚も」
「こんにちは宝塚さん……死ぬ子先生も」
部屋の前には菜々ちんと百恵ちゃんも待っていた。
「あれ? ……二人ともどうして?」
「知らん。吾輩は姉貴に呼ばれただけじゃ」
そっぽを向いて答える百恵ちゃん。
「私も、七瀬先生に呼ばれたんですけど、宝塚さんはどうして?」
「あぁ……いやその、ははは」
「あい……じゃぁ、説明しまぁ~~……」
死ぬ子先生が扉の前に歩み出て、三人を見回す。
「説明?」
「な、なんだ姉貴? ……何を始める気じゃ?」
さすが姉妹だけあって、死ぬ子先生が何かをすると言ったら大抵ろくでもない事だと知っているのだろう、後ずさりながら頬を引きつらせた。
そんな妹のリアクションを無視し、先生は話を始める。
「あい~~……これからこの三人にはぁ~~……チームをぉ~~組んで行動してもらいま~~す……」
「はぁ!??」
「え??」
何の脈絡もない突然の宣言に、私と菜々ちんは思わず顔を見合わせる。
「なのでぇ~~、これからぁ……宝塚さんのぉ~~……」
「ちょっと、待て待て姉貴っ!!!!」
一瞬放心していた百恵ちゃんだが、すぐに我に返り、泡を食いながら先生に食って掛かった。
「チーム!?? どういうことじゃ?? なぜ吾輩がよりによってヒロインなんぞと!??」
「それはぁ~~……ちょうどぉ~~……相性がぁ……いいからよぉ」
「相性!?? ふざけるなっ!! 吾輩とヒロインの相性など良いわけがないじゃろうがぁ!!!!」
姉の首を締め付けてブルンブルン振る妹。
いや……本人を目の前にして相性全否定とは、さすが妹の方も人に対する配慮というか常識というか礼儀というか思いやりというかとにかく色々なものが欠けているなあははははははははは。
「性格じゃぁなくてぇ~~……能力のぉ~~はなしねぇ……ああ、おねえちゃん死んじゃうぅ、死んじゃうぅ……妹に殺されちゃうぅ~~……そんな人生も悪くないわぁ~~~~……ふふふふふふ……ぐふ♡」
青くなって泡を吹き、クテる先生。
いいぞ妹。私は応援しているぞ。
「ああ、うっとおしいわっ!! その喋り方に異常な性格!! 家にいる時のようにシャンと出来んのか、シャンとっ!!」
家ではシャンとしてるんだ……。てか二人とも実家暮らしなんだ……。
「まあまあまあまあまあまあ!! 百恵さんもその辺で、先生? 死ぬ子先生?」
二人の間に割って入ってペシペシと頬を叩き、蘇生を試みる菜々ちん。
ビクッとして目を覚ますと、先生は説明の続きを始める。
「宝塚さんはねぇ……これからぁ監視官候補生として訓練するのよぅ。だからねぇ菜々にはその補佐として~~……百恵にはぁ護衛役としてぇ……彼女の訓練に付き合って欲しいのよ~~……」
「監視官じゃと!??」
「宝塚さんが?? ……すごい」
やたら驚いている二人。
すごいと言われたが、まだ目指している段階だから何もすごくないのよ?
「ま、まぁ……なんかそういう話になったんだけど……」
こそばゆい思いでポリポリと頬を掻いていると、百恵ちゃんが涙を滲ませつつ再び先生食って掛かり「ふざけるなっ!!」と蹴り飛ばした。
「あふんっ!!」
喘ぐ変態。
「……そんな……ヒロインが……監視官……」
そしてワナワナと震えて床にうずくまり、
「姉貴や片桐らと同格に……み、認めんっ!! そんなこと吾輩は断じて認めんぞーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
頭を掻きむしって激しく悔しがった。
「え……と、何がそんなにオオゴトなのかな?」
その尋常ならざる悔しがりっぷりに気圧されつつ、菜々ちんに身を寄せ小声で尋ねてみる。と、彼女は少し気まずそうにしながらも、丁寧に教えてくれた。
「えっとですね……監視官はJPAの役職でも相当上の方になりまして、当然その為にクリアしなければいけない試験は難しいものになるんですよ。そのため、それに挑む最低限の実力が無いものはそもそも試験資格すら与えられません。まずは皆さんその資格を得るために候補生として頑張るわけですが、それにすら選ばれない人間がほとんどだったりします」
「え、そんなに……?」
「ちなみに片桐さんは二十二歳で監視官になっていますが、これは現在の最年少記録です」
「マジですか……やっぱり凄いんだなあの人」
試験や資格のことはいまいちピンとこないが、最年少記録はどんなことでも凄いに決まっている。
「なに言っているんですか? 宝塚さんも十六歳で候補生なんて……もしかしたら最年少記録かも……うぎゃぁっ!!」
そう言った菜々ちんの背中にべったり張り付く死ぬ子先生。
「なに言ってんのよぉ~~……候補生までだったらぁ……十五歳で選ばれたぁ……私が一番でしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
そしてどさくさにまぎれ、もにゅもにゅと胸を揉みしだく妖怪死ぬ子。
おいやめろ、うらやましいことをするでない。
「ご……ごめんなさい、ごめんなさい!! でもそのあと十二年間も合格できなかったみたいですからつい存在を忘れてしまっていて!!」
「うるさいわなぁ~~……あなた私と心中したいのぉぉぉぉぉっ?
そうなんでしょぉぉぉぉぉ? だったらぁぁぁぁっ……いくらでも付き合ってあげるわよぉ~~……!! 火の中でも海の底でもねぇぇぇぇぇっ!!」
ブルンブルン乳を揉まれまくり絶叫する菜々ちんと、ひとり床に四つん這いになり悔しがる百恵ちゃん。そんな彼女の口からは、
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
と何かの念仏のように同じ言葉が繰り返されていた。
「おう来たか姉貴、宝塚も」
「こんにちは宝塚さん……死ぬ子先生も」
部屋の前には菜々ちんと百恵ちゃんも待っていた。
「あれ? ……二人ともどうして?」
「知らん。吾輩は姉貴に呼ばれただけじゃ」
そっぽを向いて答える百恵ちゃん。
「私も、七瀬先生に呼ばれたんですけど、宝塚さんはどうして?」
「あぁ……いやその、ははは」
「あい……じゃぁ、説明しまぁ~~……」
死ぬ子先生が扉の前に歩み出て、三人を見回す。
「説明?」
「な、なんだ姉貴? ……何を始める気じゃ?」
さすが姉妹だけあって、死ぬ子先生が何かをすると言ったら大抵ろくでもない事だと知っているのだろう、後ずさりながら頬を引きつらせた。
そんな妹のリアクションを無視し、先生は話を始める。
「あい~~……これからこの三人にはぁ~~……チームをぉ~~組んで行動してもらいま~~す……」
「はぁ!??」
「え??」
何の脈絡もない突然の宣言に、私と菜々ちんは思わず顔を見合わせる。
「なのでぇ~~、これからぁ……宝塚さんのぉ~~……」
「ちょっと、待て待て姉貴っ!!!!」
一瞬放心していた百恵ちゃんだが、すぐに我に返り、泡を食いながら先生に食って掛かった。
「チーム!?? どういうことじゃ?? なぜ吾輩がよりによってヒロインなんぞと!??」
「それはぁ~~……ちょうどぉ~~……相性がぁ……いいからよぉ」
「相性!?? ふざけるなっ!! 吾輩とヒロインの相性など良いわけがないじゃろうがぁ!!!!」
姉の首を締め付けてブルンブルン振る妹。
いや……本人を目の前にして相性全否定とは、さすが妹の方も人に対する配慮というか常識というか礼儀というか思いやりというかとにかく色々なものが欠けているなあははははははははは。
「性格じゃぁなくてぇ~~……能力のぉ~~はなしねぇ……ああ、おねえちゃん死んじゃうぅ、死んじゃうぅ……妹に殺されちゃうぅ~~……そんな人生も悪くないわぁ~~~~……ふふふふふふ……ぐふ♡」
青くなって泡を吹き、クテる先生。
いいぞ妹。私は応援しているぞ。
「ああ、うっとおしいわっ!! その喋り方に異常な性格!! 家にいる時のようにシャンと出来んのか、シャンとっ!!」
家ではシャンとしてるんだ……。てか二人とも実家暮らしなんだ……。
「まあまあまあまあまあまあ!! 百恵さんもその辺で、先生? 死ぬ子先生?」
二人の間に割って入ってペシペシと頬を叩き、蘇生を試みる菜々ちん。
ビクッとして目を覚ますと、先生は説明の続きを始める。
「宝塚さんはねぇ……これからぁ監視官候補生として訓練するのよぅ。だからねぇ菜々にはその補佐として~~……百恵にはぁ護衛役としてぇ……彼女の訓練に付き合って欲しいのよ~~……」
「監視官じゃと!??」
「宝塚さんが?? ……すごい」
やたら驚いている二人。
すごいと言われたが、まだ目指している段階だから何もすごくないのよ?
「ま、まぁ……なんかそういう話になったんだけど……」
こそばゆい思いでポリポリと頬を掻いていると、百恵ちゃんが涙を滲ませつつ再び先生食って掛かり「ふざけるなっ!!」と蹴り飛ばした。
「あふんっ!!」
喘ぐ変態。
「……そんな……ヒロインが……監視官……」
そしてワナワナと震えて床にうずくまり、
「姉貴や片桐らと同格に……み、認めんっ!! そんなこと吾輩は断じて認めんぞーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
頭を掻きむしって激しく悔しがった。
「え……と、何がそんなにオオゴトなのかな?」
その尋常ならざる悔しがりっぷりに気圧されつつ、菜々ちんに身を寄せ小声で尋ねてみる。と、彼女は少し気まずそうにしながらも、丁寧に教えてくれた。
「えっとですね……監視官はJPAの役職でも相当上の方になりまして、当然その為にクリアしなければいけない試験は難しいものになるんですよ。そのため、それに挑む最低限の実力が無いものはそもそも試験資格すら与えられません。まずは皆さんその資格を得るために候補生として頑張るわけですが、それにすら選ばれない人間がほとんどだったりします」
「え、そんなに……?」
「ちなみに片桐さんは二十二歳で監視官になっていますが、これは現在の最年少記録です」
「マジですか……やっぱり凄いんだなあの人」
試験や資格のことはいまいちピンとこないが、最年少記録はどんなことでも凄いに決まっている。
「なに言っているんですか? 宝塚さんも十六歳で候補生なんて……もしかしたら最年少記録かも……うぎゃぁっ!!」
そう言った菜々ちんの背中にべったり張り付く死ぬ子先生。
「なに言ってんのよぉ~~……候補生までだったらぁ……十五歳で選ばれたぁ……私が一番でしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
そしてどさくさにまぎれ、もにゅもにゅと胸を揉みしだく妖怪死ぬ子。
おいやめろ、うらやましいことをするでない。
「ご……ごめんなさい、ごめんなさい!! でもそのあと十二年間も合格できなかったみたいですからつい存在を忘れてしまっていて!!」
「うるさいわなぁ~~……あなた私と心中したいのぉぉぉぉぉっ?
そうなんでしょぉぉぉぉぉ? だったらぁぁぁぁっ……いくらでも付き合ってあげるわよぉ~~……!! 火の中でも海の底でもねぇぇぇぇぇっ!!」
ブルンブルン乳を揉まれまくり絶叫する菜々ちんと、ひとり床に四つん這いになり悔しがる百恵ちゃん。そんな彼女の口からは、
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
と何かの念仏のように同じ言葉が繰り返されていた。
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