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第33話 害虫駆除①
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「奴らの部屋は最上階の13階にあります。今のところ人の気配は無いので一気に突入しましょう」
淡々とした口調で説明しながら菜々ちんがマンションへと入っていく。
どうやら能力は使いっぱなしでいるらしく、マンション内部の情報はすべて映像として認識出来ているらしい。
私はその後をおっかなびっくり付いていく。
覚悟を決めたとはいえ、それとは別に腰は引けるものなのである。
エントランスに入るとすぐ、オートロック式の扉に行く手を阻まれた。
暗証番号式のそれは、当然、番号を知っていないと開かない仕組みだが、菜々ちんはなんの躊躇いもなく番号を入力していく。
当たり前のように開く扉。
中に侵入し、すぐにあったエレベーターへと乗り込む。
「ど、どうして番号がわかったの!?」
「ん? 漂っていた胞子の記憶を見ただけですよ?」
それが何か、とばかりに平然と答える菜々ちん。
いやいや、だけって……。
私はあらためて菜々ちんの能力の有能さに気付く。
植物限定とはいえ、胞子のような小さな物にも能力が及ぶとなれば、この世のほとんどの場所は彼女の眼下にあるようなもの。無菌室や生産工場のクリーンルームでもないかぎり彼女から情報を隠すのは無理ということではないか?
説明会のときはインターネットのせいで自分の能力の価値が薄れたみたいなことをいっていたがとんでもない。むしろ情報社会になればなるほど彼女の能力の価値は上がるといっていい。
なるほど、全超能力者の1%に選ばれるわけだと納得した。
「す……すごいわね。それってもう情報収集じゃ無敵じゃないの!??」
私が真面目にそう言うと彼女は少しはにかんで、
「いえ、私なんてほんと大したことないんですよ? 情報といっても景色として見えるってだけですし、音とかは聞こえませんし、有効範囲もそんなに広くないし、それに私自身、能力についていけない時もありますしね」
なんでもあまり広い範囲を見たところで菜々ちん自身の認識が追いつかない場合があるらしい。ようするに肉眼で観察するのと同じく見落としもあるってことだと説明してくれた。
いや、にしてもスパイとしてはチート級能力でしょう。
エレベーターはぐんぐん上がり、もうすぐ最上階に達するぞというところで菜々ちんは反応した。
「少し後ろに下がっていて下さい」
言って、拳銃のハンマーを引く。
「ど、ど、ど、ど、ど、どうしたの!??」
「連中の一人がこちらへやって来ます……取り巻きの片割れの方ですね」
「え? え? え? なんでなんで?? 私たち気付かれた!??」
そんな私のうろたえに、菜々ちんはくすっと笑って答えてくれる。
「そんなわけありませんよ。向こうはこちらの顔も存在も知らないんですから。
おそらく何か買ってこいとでも言われたんじゃないですか? 財布を持ってふて腐れながら歩いて来ますし。あ、ちょうど今このエレベーターの扉前に立ちました」
「げっ!??」
同時に私たちも最上階に到達する。
「ど、ど、ど、どうするの!?? 逃げる??
……い、いや、向こうも知らないんだったら、このまま知らんぷりしてやり過ごせば――――、」
「やり過ごしてどうするんですか? けっきょく戻ってくるんですよ?」
「じゃあどうするの――――っ!??」
言うのと同時に扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは、いかにも軽薄そうな出で立ちの金髪男で、高級そうだが趣味の悪いアクセサリーをこれまた頭が悪そうなくらい大量に身に付けていた。
その男は菜々ちんを目に止めると一瞬固まり、そしてにちゃりと嫌らしい笑みを浮かべ全身を下から上へと舐めるように見回す。
どうやら菜々ちんの容姿がど真ん中だった様子だ。
そうだろうそうだろう、女の私だってど真ん中なのだ、そこらの男がハマらないわけがない。
「な、なあアンタ――――」
男が無節操にも菜々ちんに話しかけようと口を開いたその中に、
――――ガッ!!
歯を削りながら菜々ちんの拳銃が押し込まれた。
「害虫が気安く話しかけないで」
そう言うと躊躇いなく引き金を引く彼女。
――――ガンッ!!
男の頭の後ろから赤い飛沫が舞った。
ガクンと力を抜く男の体を、足で向こうの壁に押しのけ菜々ちんは、
「さ、残りは四人ですよ、テンポよく行きましょう。帰って宿題をやらなければけませんし」
と、まるで本当に虫けらを殺した程度の感覚で平然と歩きだす。
「ど、ど、ど、あ、あ、あのあの……」
いまさら人殺しをどうとか言うつもりはない。
その辺りについては私ももう慣れた、というか麻痺した。
「い、い、いいのコレ? このままにしといて。他の住人にバレるんじゃ!??」
くの字になって通路に横たわる死体。そのまわりはすでに血の海になりつつある。
「問題ありませんよ。見つかったところで私たちを邪魔するものなどいないでしょうし、警察を呼ばれてもどうとでも対処できます」
さっさと歩いていく菜々ちん。
やばいこれ、完全に殺し屋の背中だ。
「対処って……」
しかたなく死体をそのままに、後を追いかける。
やがて一つの部屋の前に着いた。
どうやらここが目的の部屋のようである。
表札には望月との名前が入っていた。
望月……望月……たしか県警本部長の息子の名字だったな。
てことはこれから警察関係のお家に強襲して暴れるわけだな。
うん。
私、この数週間ですっかりヤクザだ。
天国のお父さんお母さんごめんなさい、あなた達の娘は今日から修羅の道を歩みます。
淡々とした口調で説明しながら菜々ちんがマンションへと入っていく。
どうやら能力は使いっぱなしでいるらしく、マンション内部の情報はすべて映像として認識出来ているらしい。
私はその後をおっかなびっくり付いていく。
覚悟を決めたとはいえ、それとは別に腰は引けるものなのである。
エントランスに入るとすぐ、オートロック式の扉に行く手を阻まれた。
暗証番号式のそれは、当然、番号を知っていないと開かない仕組みだが、菜々ちんはなんの躊躇いもなく番号を入力していく。
当たり前のように開く扉。
中に侵入し、すぐにあったエレベーターへと乗り込む。
「ど、どうして番号がわかったの!?」
「ん? 漂っていた胞子の記憶を見ただけですよ?」
それが何か、とばかりに平然と答える菜々ちん。
いやいや、だけって……。
私はあらためて菜々ちんの能力の有能さに気付く。
植物限定とはいえ、胞子のような小さな物にも能力が及ぶとなれば、この世のほとんどの場所は彼女の眼下にあるようなもの。無菌室や生産工場のクリーンルームでもないかぎり彼女から情報を隠すのは無理ということではないか?
説明会のときはインターネットのせいで自分の能力の価値が薄れたみたいなことをいっていたがとんでもない。むしろ情報社会になればなるほど彼女の能力の価値は上がるといっていい。
なるほど、全超能力者の1%に選ばれるわけだと納得した。
「す……すごいわね。それってもう情報収集じゃ無敵じゃないの!??」
私が真面目にそう言うと彼女は少しはにかんで、
「いえ、私なんてほんと大したことないんですよ? 情報といっても景色として見えるってだけですし、音とかは聞こえませんし、有効範囲もそんなに広くないし、それに私自身、能力についていけない時もありますしね」
なんでもあまり広い範囲を見たところで菜々ちん自身の認識が追いつかない場合があるらしい。ようするに肉眼で観察するのと同じく見落としもあるってことだと説明してくれた。
いや、にしてもスパイとしてはチート級能力でしょう。
エレベーターはぐんぐん上がり、もうすぐ最上階に達するぞというところで菜々ちんは反応した。
「少し後ろに下がっていて下さい」
言って、拳銃のハンマーを引く。
「ど、ど、ど、ど、ど、どうしたの!??」
「連中の一人がこちらへやって来ます……取り巻きの片割れの方ですね」
「え? え? え? なんでなんで?? 私たち気付かれた!??」
そんな私のうろたえに、菜々ちんはくすっと笑って答えてくれる。
「そんなわけありませんよ。向こうはこちらの顔も存在も知らないんですから。
おそらく何か買ってこいとでも言われたんじゃないですか? 財布を持ってふて腐れながら歩いて来ますし。あ、ちょうど今このエレベーターの扉前に立ちました」
「げっ!??」
同時に私たちも最上階に到達する。
「ど、ど、ど、どうするの!?? 逃げる??
……い、いや、向こうも知らないんだったら、このまま知らんぷりしてやり過ごせば――――、」
「やり過ごしてどうするんですか? けっきょく戻ってくるんですよ?」
「じゃあどうするの――――っ!??」
言うのと同時に扉が開いた。
扉の向こうに立っていたのは、いかにも軽薄そうな出で立ちの金髪男で、高級そうだが趣味の悪いアクセサリーをこれまた頭が悪そうなくらい大量に身に付けていた。
その男は菜々ちんを目に止めると一瞬固まり、そしてにちゃりと嫌らしい笑みを浮かべ全身を下から上へと舐めるように見回す。
どうやら菜々ちんの容姿がど真ん中だった様子だ。
そうだろうそうだろう、女の私だってど真ん中なのだ、そこらの男がハマらないわけがない。
「な、なあアンタ――――」
男が無節操にも菜々ちんに話しかけようと口を開いたその中に、
――――ガッ!!
歯を削りながら菜々ちんの拳銃が押し込まれた。
「害虫が気安く話しかけないで」
そう言うと躊躇いなく引き金を引く彼女。
――――ガンッ!!
男の頭の後ろから赤い飛沫が舞った。
ガクンと力を抜く男の体を、足で向こうの壁に押しのけ菜々ちんは、
「さ、残りは四人ですよ、テンポよく行きましょう。帰って宿題をやらなければけませんし」
と、まるで本当に虫けらを殺した程度の感覚で平然と歩きだす。
「ど、ど、ど、あ、あ、あのあの……」
いまさら人殺しをどうとか言うつもりはない。
その辺りについては私ももう慣れた、というか麻痺した。
「い、い、いいのコレ? このままにしといて。他の住人にバレるんじゃ!??」
くの字になって通路に横たわる死体。そのまわりはすでに血の海になりつつある。
「問題ありませんよ。見つかったところで私たちを邪魔するものなどいないでしょうし、警察を呼ばれてもどうとでも対処できます」
さっさと歩いていく菜々ちん。
やばいこれ、完全に殺し屋の背中だ。
「対処って……」
しかたなく死体をそのままに、後を追いかける。
やがて一つの部屋の前に着いた。
どうやらここが目的の部屋のようである。
表札には望月との名前が入っていた。
望月……望月……たしか県警本部長の息子の名字だったな。
てことはこれから警察関係のお家に強襲して暴れるわけだな。
うん。
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