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第24話 訓練学校③
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「ぬひょいっ!!」
いきなり背後を取られ、三センチほど飛び上がる私。
振り返るとそこには、目に大きなクマを作った痩せ型の女性が傾きながら立っていた。
腰ほどに伸びたストレートの黒髪を下の方で結び、なぜかナース服を着ているその人は一見すると美人なんだろうが、いかんせん雰囲気が完全に幽霊である。
「ぁ~~ぃ……適当に座ってぇ……」
そう言うとその人は、ゆらぁ~~りと倒れ込むように椅子に崩れ落ちた。
「ええぇ~~……」
まさかこの人が先生とか??
いや、状況的にそうなんだろうな。
嫌な顔を隠そうともせず、私はおそるおそる対面に座る。
するとその先生らしき人はおもむろにスマホを取り出し、私に向けてシャッターを切った。
パチっと刺激が走った。
そしてその画像を確認するとクマだらけの不気味な目をぎょろりと向け、
「……気に入ったわぁ」
と、これまた不気味な笑顔で言った。
「ど、どうも……?」
意味がわからないでいると、その人はさらにいやらしい笑みを浮かべ、
「あなたぁ~……あれねぇ~~? ぴゅあな子ねぇ~~?」
「はい?」
「彼氏とかぁ……出来たこと無いでしょぉう~~?」
「いや……んまぁ、いかにもですが……えっと?」
「最近の子ってねぇ~~もうねぇ~~……。どこに行ってもちょぱちゅぱちゅぱちゅぱ、もうねぇ~~殺したくなるのよぉ~~~~ねぇ?
私なんてねぇ~~もう三十路も近いのにぃさぁ~~このままじゃ魔法使いになちゃうよぉ~~うふふふふふふふふふ?」
いかん、話についていけない誰か助けてくれ。
「なぁによぉその目はぁ~~? ははぁ~~ん、私のこと変な人だと思っているわねぇ~~?」
それ以外に何を思うというのか?
「うふふふふふ。まぁ……そうだわなぁ~~、変な人だわなぁ~~でもさぁ、あんただってじゅうぶん変な人じゃぁなぁい~~……?」
そう言ってまた写真を取る。
そして今度はその画像を見せつけてきた。
「げっ!!」
そこには、中古ホビー店で鼻の下を伸ばしながらBL漫画を立ち読みしている私の姿が写っていた。
「ば、馬鹿者ぉーーーーーーっ!!!!」
な、な、なんで!! 一体いつこんな破廉恥な写真をっ!???
とっさにスマホを奪おうと手を伸ばすが、以外に素早い動きでかわされてしまう。
「くくくくく……。純粋な乙女だと思ったのにぃ~~……なになに? 影じゃぁ隠れてこぉんな変態さんな漫画に夢中になっているんだぁ~~??
うふふふふふふふふふふ……いわゆる喪女ってやつねぇ~~うふふふふふ」
「う、うるさいうるさいだまれっ!! ちょ、ちょ、ちょっと気になってめくってみただけよ!! 買ってないし買ってないし!! だからセーフだし!!!!
つかなによ!? こんな写真いつどこで撮ったのよっ!???」
するとその人は得意満面な顔で、
「今よぉ」
と言った。
「はあっ!??」
「だからぁ~~い・ま・撮ったって言ってるのぉ~~」
またまた意味がわからないでいると、
「わかんないかなぁ……先生のぉ、能力でぇすよぉ……」
ぐへへへへと、不気味を極めた笑いで種を明かす魔女。
「私のぉ能力は……『念写』よぉ。 ……聞いたことくらいはあるでしょう?」
まぁ……そのくらいなら、ある。
「えっと……たしか、念力の一種で被写体が無くても景色を映し出す……未来の出来事とか誘拐された子供の居場所とか……?」
「そうそうそれぇ。先生のはぁそれの~~過去限定版ねぇ。
未来とかは無理だしぃ、遠くの場所もぉ無理だけどぉ……撮った人の過去の姿を写す事が出来るのよねぇ……。
そのおかげで私のメンタルと人生はボロボロだけどねぇ~~……」
「そ、その能力で写したのがさっきの私の姿ですか?」
「そうそう、うふふふふふふふふふ。ごめぇんなさいねぇ~~!!」
な、なんといういやらしい能力!!
それでは私のいやらしい正体を取り放題ではないか!??
「金輪際やめてくれぇ!!」
真っ赤になって講義する私。
「なぁによぉぅ、いいじゃないこれくらい~~。さっきは笑ったけどぉBL漫画なんてみんな読んでるわよぉ、大したこと無いわぁ」
「うぬむぐぐぐぐ……」
「まぁそんなわけでぇ、私があなたの担任教官を努めます。
名前はぁ……そうねぇ……『明日 死ぬ子』でいいわぁ。よろしくぅぅぅぅ……」
そう言って死ぬ子先生は握手を求めてきた。
「出来るかぁ!!」
返す刀でその手を払う。
「なぁによう? 失礼ねぇ……うるうる……」
「完全なる偽名ですよねそれ!? しかも全力後ろ向きなっ!!」
「……いいじゃない、どうせ生きていたっていいことないんだしぃ……私にも人にも世界にも価値なんて無いのよぉ……死にたいわぁ」
なんだこのどうしようもない生物は!??
「いやその、いきなり目の前で命投げられても困りますよ」
「先生ねぇ……もうヤなの。人と関わるのが……」
そして涙で机を濡らし始める。
「友達とかさぁ……恋人とかさぁ、出来るじゃない?
でもすぐにぃ……この能力でぇ、その人の過去とか覗いちゃうわけぇ……。
するとさぁ……もうほとんど見てらんない写真ばっか写っちゃってねぇ……親友だと思ってた子がぁ実は影で私の靴にいたずらしてたとかぁ……ステキだと思ってた人がぁブスのう○こ食べてたりとかぁ……。実の両親がぁ……う、げろげろげろげろ」
「うわぁ!!」
突然立ち上がり、部屋の隅に置いてあったゴミ箱にゲロをぶちまける我が担任。
そしてそのゲロまみれの口を拭いもせず彼女は顔を上げ、
「まぁ……そんなわけでねぇ、先生もう人間不信になっちゃってぇ、恋人もぉ出来なくってぇ……死にたくてしょうがないのよぉ。よろしくねぇ」
「いや、よろしくの意味がわからん」
私はかろうじてそれだけつぶやいた。
いきなり背後を取られ、三センチほど飛び上がる私。
振り返るとそこには、目に大きなクマを作った痩せ型の女性が傾きながら立っていた。
腰ほどに伸びたストレートの黒髪を下の方で結び、なぜかナース服を着ているその人は一見すると美人なんだろうが、いかんせん雰囲気が完全に幽霊である。
「ぁ~~ぃ……適当に座ってぇ……」
そう言うとその人は、ゆらぁ~~りと倒れ込むように椅子に崩れ落ちた。
「ええぇ~~……」
まさかこの人が先生とか??
いや、状況的にそうなんだろうな。
嫌な顔を隠そうともせず、私はおそるおそる対面に座る。
するとその先生らしき人はおもむろにスマホを取り出し、私に向けてシャッターを切った。
パチっと刺激が走った。
そしてその画像を確認するとクマだらけの不気味な目をぎょろりと向け、
「……気に入ったわぁ」
と、これまた不気味な笑顔で言った。
「ど、どうも……?」
意味がわからないでいると、その人はさらにいやらしい笑みを浮かべ、
「あなたぁ~……あれねぇ~~? ぴゅあな子ねぇ~~?」
「はい?」
「彼氏とかぁ……出来たこと無いでしょぉう~~?」
「いや……んまぁ、いかにもですが……えっと?」
「最近の子ってねぇ~~もうねぇ~~……。どこに行ってもちょぱちゅぱちゅぱちゅぱ、もうねぇ~~殺したくなるのよぉ~~~~ねぇ?
私なんてねぇ~~もう三十路も近いのにぃさぁ~~このままじゃ魔法使いになちゃうよぉ~~うふふふふふふふふふ?」
いかん、話についていけない誰か助けてくれ。
「なぁによぉその目はぁ~~? ははぁ~~ん、私のこと変な人だと思っているわねぇ~~?」
それ以外に何を思うというのか?
「うふふふふふ。まぁ……そうだわなぁ~~、変な人だわなぁ~~でもさぁ、あんただってじゅうぶん変な人じゃぁなぁい~~……?」
そう言ってまた写真を取る。
そして今度はその画像を見せつけてきた。
「げっ!!」
そこには、中古ホビー店で鼻の下を伸ばしながらBL漫画を立ち読みしている私の姿が写っていた。
「ば、馬鹿者ぉーーーーーーっ!!!!」
な、な、なんで!! 一体いつこんな破廉恥な写真をっ!???
とっさにスマホを奪おうと手を伸ばすが、以外に素早い動きでかわされてしまう。
「くくくくく……。純粋な乙女だと思ったのにぃ~~……なになに? 影じゃぁ隠れてこぉんな変態さんな漫画に夢中になっているんだぁ~~??
うふふふふふふふふふふ……いわゆる喪女ってやつねぇ~~うふふふふふ」
「う、うるさいうるさいだまれっ!! ちょ、ちょ、ちょっと気になってめくってみただけよ!! 買ってないし買ってないし!! だからセーフだし!!!!
つかなによ!? こんな写真いつどこで撮ったのよっ!???」
するとその人は得意満面な顔で、
「今よぉ」
と言った。
「はあっ!??」
「だからぁ~~い・ま・撮ったって言ってるのぉ~~」
またまた意味がわからないでいると、
「わかんないかなぁ……先生のぉ、能力でぇすよぉ……」
ぐへへへへと、不気味を極めた笑いで種を明かす魔女。
「私のぉ能力は……『念写』よぉ。 ……聞いたことくらいはあるでしょう?」
まぁ……そのくらいなら、ある。
「えっと……たしか、念力の一種で被写体が無くても景色を映し出す……未来の出来事とか誘拐された子供の居場所とか……?」
「そうそうそれぇ。先生のはぁそれの~~過去限定版ねぇ。
未来とかは無理だしぃ、遠くの場所もぉ無理だけどぉ……撮った人の過去の姿を写す事が出来るのよねぇ……。
そのおかげで私のメンタルと人生はボロボロだけどねぇ~~……」
「そ、その能力で写したのがさっきの私の姿ですか?」
「そうそう、うふふふふふふふふふ。ごめぇんなさいねぇ~~!!」
な、なんといういやらしい能力!!
それでは私のいやらしい正体を取り放題ではないか!??
「金輪際やめてくれぇ!!」
真っ赤になって講義する私。
「なぁによぉぅ、いいじゃないこれくらい~~。さっきは笑ったけどぉBL漫画なんてみんな読んでるわよぉ、大したこと無いわぁ」
「うぬむぐぐぐぐ……」
「まぁそんなわけでぇ、私があなたの担任教官を努めます。
名前はぁ……そうねぇ……『明日 死ぬ子』でいいわぁ。よろしくぅぅぅぅ……」
そう言って死ぬ子先生は握手を求めてきた。
「出来るかぁ!!」
返す刀でその手を払う。
「なぁによう? 失礼ねぇ……うるうる……」
「完全なる偽名ですよねそれ!? しかも全力後ろ向きなっ!!」
「……いいじゃない、どうせ生きていたっていいことないんだしぃ……私にも人にも世界にも価値なんて無いのよぉ……死にたいわぁ」
なんだこのどうしようもない生物は!??
「いやその、いきなり目の前で命投げられても困りますよ」
「先生ねぇ……もうヤなの。人と関わるのが……」
そして涙で机を濡らし始める。
「友達とかさぁ……恋人とかさぁ、出来るじゃない?
でもすぐにぃ……この能力でぇ、その人の過去とか覗いちゃうわけぇ……。
するとさぁ……もうほとんど見てらんない写真ばっか写っちゃってねぇ……親友だと思ってた子がぁ実は影で私の靴にいたずらしてたとかぁ……ステキだと思ってた人がぁブスのう○こ食べてたりとかぁ……。実の両親がぁ……う、げろげろげろげろ」
「うわぁ!!」
突然立ち上がり、部屋の隅に置いてあったゴミ箱にゲロをぶちまける我が担任。
そしてそのゲロまみれの口を拭いもせず彼女は顔を上げ、
「まぁ……そんなわけでねぇ、先生もう人間不信になっちゃってぇ、恋人もぉ出来なくってぇ……死にたくてしょうがないのよぉ。よろしくねぇ」
「いや、よろしくの意味がわからん」
私はかろうじてそれだけつぶやいた。
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