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第3話 証拠隠滅
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半円型の巨大パンを平らげ、次にロールケーキ、焼きそばパン、マーガリンロール、メロンパン、アンパン、ジャムパン、クリームパン、そしてトドメのうぐいすパンと召し上がった私は、第二ラウンドのお弁当ステージへとなだれ込んだ。
最初の餌食となる半額シールの付いたカレーに手をかけながら私は思い起こす。
今日の出来事を。
ひどい事件だった。
私が妖怪ではなく、普通の可憐な少女であったのなら間違いなく一生のトラウマになるほどの出来事だっただろう。
だが私は幼少の頃の両親との別れに始まり、たらい回し、いじめ、自殺未遂と辛いことは一通り経験してきた。
心もすっかりやさぐれてしまっている。
いまさら目の前で誰が死のうが生きようが、自分に害がない限り、些細なことと割り切れる。
十六歳の女の子にしてはやさぐれすぎですか?
いやいや、こんなものですよ最近の子って。
もちろん、自分から悪いことをしようなんて思いませんし、誰かが傷ついたら悲しいとも思います。
でも、それをショックにふさぎ込むとかそういうのは無いですね。
無いというか、そんな暇が無いと言った方がいいのかも。
とにかく事件はショックだったが、それよりも自分のことで一杯一杯だったということで。
「……一応、殺されかけたわけだしね」
マーボー丼に手を付けながらつぶやく。
しかし、わからないのは包丁男が死んだ原因だ。
目の前で急に蜂の巣? になって死んだ。
いくら私が人ならざる存在でも今まであんな現象起こした経験はない。
「……私じゃないよね?」
ドキドキ鳴る心臓を抑える。
いや、私じゃないはずだ。
……ないといいな。
段々と自信がなくなってくる。
もし……もし仮に、私にまだ自分自身気付いてない能力があって、それが今回の事件で防御本能的に発動してしまったのだとしたら……?
「――――い、いや、やめとこう!」
ブルブルと頭を振って、おかしな妄想を掻き消す。
「そ、そんな自分も知らない未知なる能力とか……なんだその中二病発言は? ははは……そんな非科学的なものあるわけないじゃないか、ほほほ……」
自分の存在を完全否定しながら心を落ち着かせる。
「あの包丁男は……その、あの……きっと警官的な人が撃って止めてくれたのよ。
うん……そう、そうに違いない!!」
そうであってくれないと困るとばかりに何度もうなずく。
でなければ正当防衛とはいえ、私は……人を殺したことになる。
その一線だけは越えたくない。
越えてしまえば、いよいよ私は『人類の敵』悪の妖怪へと身を落としてしまうかもしれないからだ。
「拳銃にしてはちょっと威力がありすぎた感じもするし、撃った本人はどこ行ったって疑問もあるけど、そこはそれ、私も混乱してたし、きっと見落としてたのね」
はい、一件落着。とばかりに私はテレビのスイッチを入れ気分を変えようとする。
ついでに冷蔵庫にある1,5リットルコーラをラッパ飲みしたところで、
『次のニュースです。本日、午後五時半頃、東京都大田区の商店街で刃物を持った男が暴れ、次々と通行人に斬りかかるという事件が起こりました』
同時にその時の映像が画面に映る。
ぶほっ!!
私はコーラを盛大に撒き散らし、むせこんだ。
『男は、駆けつけた警官らにすぐに取り押さえられましたが、多数の通行人に被害が出ている模様です』
通行人の一人が撮ったのだろうその映像には、確かにあの包丁男の暴れる姿がはっきりと映っていた。
まずいまずい!!
私はダラダラ冷や汗を流しながらその映像を見つめる。
何がまずいのかって?
決まっているでしょう!?
このままいけば私が刺されたシーンも放映されるってことなのよ?
ガッツリ心臓に包丁を突き立てられたあのシーンを。
それと同時に男が不可思議に死ぬあのシーンを!!
絶対だめでしょ!??
そんなことされたら、私は当然、この事件の重要参考人として呼ばれ、胸の傷のことに触れられ、最後には妖怪ということがバレてしまう。
そしてなし崩しに事件そのものが私の仕業ということにされ、捕らえられた私は謎の組織に研究・改造され気が付けばバッタ怪人に……。
妄想が暴走を始めるが、それとは関係なしに映像は流れる。
普通に歩いていたはずの犯人の男が、突然奇声を上げ、近くを歩いていた買い物帰りの主婦に斬りかかる。ついで後ろのサラリーマンを刺し、三人目の被害者である若い女性の背中を刺したところで皆が異変に気付きパニックに。
逃げ惑う人々、揺れる画面!!
男は目をぐちゃぐちゃに回転させながら刃物を振り回し走る。
――――私が襲われるのはその直後のはず。
ダメ、止めて、流さないでっ!!
祈るような気持ちで画面を見やる。
と、そこで映像がプツリと途切れた。
「え!?」
拍子抜けした私はシュワシュワと音を立てて床にこぼれるコーラに気付きもせず唖然とテレビを見ていた。
『取り押さえられた男は現在、大森警察署のほうで取り調べを受けており、容疑は認めておりますが、動機については不明となっております』
え? どういうこと?
映像はこれで終わり?
いや、ウソでしょ。
ここまで撮っていたならば絶対最後まで撮ってあるでしょ?
――――ていうか、
「犯人が捕まった~~~~~~っ!???」
思わず声に出してテレビにかじりつく。
そんなはずはない!!
だって犯人は私の目の前で肉屑となって死んだのだ。
見間違えのはずがない。
見間違えるわけがない!!
脱ぎ捨てたジャージを見る。
そこには私の血のほかに、犯人の男の血もべっとりと付いている。
『犯人は同じ大田区に住む42歳無職の男で、被害者の女性は――――』
淡々と読み上げられるニュースを聞きながら私は床にへたり込む。
こぼれたコーラが直肌に冷たいがそんなことよりも、
「……事件が書き換えられてる??」
そのおかしな現実を言葉にし、唖然とたたずんだ。
最初の餌食となる半額シールの付いたカレーに手をかけながら私は思い起こす。
今日の出来事を。
ひどい事件だった。
私が妖怪ではなく、普通の可憐な少女であったのなら間違いなく一生のトラウマになるほどの出来事だっただろう。
だが私は幼少の頃の両親との別れに始まり、たらい回し、いじめ、自殺未遂と辛いことは一通り経験してきた。
心もすっかりやさぐれてしまっている。
いまさら目の前で誰が死のうが生きようが、自分に害がない限り、些細なことと割り切れる。
十六歳の女の子にしてはやさぐれすぎですか?
いやいや、こんなものですよ最近の子って。
もちろん、自分から悪いことをしようなんて思いませんし、誰かが傷ついたら悲しいとも思います。
でも、それをショックにふさぎ込むとかそういうのは無いですね。
無いというか、そんな暇が無いと言った方がいいのかも。
とにかく事件はショックだったが、それよりも自分のことで一杯一杯だったということで。
「……一応、殺されかけたわけだしね」
マーボー丼に手を付けながらつぶやく。
しかし、わからないのは包丁男が死んだ原因だ。
目の前で急に蜂の巣? になって死んだ。
いくら私が人ならざる存在でも今まであんな現象起こした経験はない。
「……私じゃないよね?」
ドキドキ鳴る心臓を抑える。
いや、私じゃないはずだ。
……ないといいな。
段々と自信がなくなってくる。
もし……もし仮に、私にまだ自分自身気付いてない能力があって、それが今回の事件で防御本能的に発動してしまったのだとしたら……?
「――――い、いや、やめとこう!」
ブルブルと頭を振って、おかしな妄想を掻き消す。
「そ、そんな自分も知らない未知なる能力とか……なんだその中二病発言は? ははは……そんな非科学的なものあるわけないじゃないか、ほほほ……」
自分の存在を完全否定しながら心を落ち着かせる。
「あの包丁男は……その、あの……きっと警官的な人が撃って止めてくれたのよ。
うん……そう、そうに違いない!!」
そうであってくれないと困るとばかりに何度もうなずく。
でなければ正当防衛とはいえ、私は……人を殺したことになる。
その一線だけは越えたくない。
越えてしまえば、いよいよ私は『人類の敵』悪の妖怪へと身を落としてしまうかもしれないからだ。
「拳銃にしてはちょっと威力がありすぎた感じもするし、撃った本人はどこ行ったって疑問もあるけど、そこはそれ、私も混乱してたし、きっと見落としてたのね」
はい、一件落着。とばかりに私はテレビのスイッチを入れ気分を変えようとする。
ついでに冷蔵庫にある1,5リットルコーラをラッパ飲みしたところで、
『次のニュースです。本日、午後五時半頃、東京都大田区の商店街で刃物を持った男が暴れ、次々と通行人に斬りかかるという事件が起こりました』
同時にその時の映像が画面に映る。
ぶほっ!!
私はコーラを盛大に撒き散らし、むせこんだ。
『男は、駆けつけた警官らにすぐに取り押さえられましたが、多数の通行人に被害が出ている模様です』
通行人の一人が撮ったのだろうその映像には、確かにあの包丁男の暴れる姿がはっきりと映っていた。
まずいまずい!!
私はダラダラ冷や汗を流しながらその映像を見つめる。
何がまずいのかって?
決まっているでしょう!?
このままいけば私が刺されたシーンも放映されるってことなのよ?
ガッツリ心臓に包丁を突き立てられたあのシーンを。
それと同時に男が不可思議に死ぬあのシーンを!!
絶対だめでしょ!??
そんなことされたら、私は当然、この事件の重要参考人として呼ばれ、胸の傷のことに触れられ、最後には妖怪ということがバレてしまう。
そしてなし崩しに事件そのものが私の仕業ということにされ、捕らえられた私は謎の組織に研究・改造され気が付けばバッタ怪人に……。
妄想が暴走を始めるが、それとは関係なしに映像は流れる。
普通に歩いていたはずの犯人の男が、突然奇声を上げ、近くを歩いていた買い物帰りの主婦に斬りかかる。ついで後ろのサラリーマンを刺し、三人目の被害者である若い女性の背中を刺したところで皆が異変に気付きパニックに。
逃げ惑う人々、揺れる画面!!
男は目をぐちゃぐちゃに回転させながら刃物を振り回し走る。
――――私が襲われるのはその直後のはず。
ダメ、止めて、流さないでっ!!
祈るような気持ちで画面を見やる。
と、そこで映像がプツリと途切れた。
「え!?」
拍子抜けした私はシュワシュワと音を立てて床にこぼれるコーラに気付きもせず唖然とテレビを見ていた。
『取り押さえられた男は現在、大森警察署のほうで取り調べを受けており、容疑は認めておりますが、動機については不明となっております』
え? どういうこと?
映像はこれで終わり?
いや、ウソでしょ。
ここまで撮っていたならば絶対最後まで撮ってあるでしょ?
――――ていうか、
「犯人が捕まった~~~~~~っ!???」
思わず声に出してテレビにかじりつく。
そんなはずはない!!
だって犯人は私の目の前で肉屑となって死んだのだ。
見間違えのはずがない。
見間違えるわけがない!!
脱ぎ捨てたジャージを見る。
そこには私の血のほかに、犯人の男の血もべっとりと付いている。
『犯人は同じ大田区に住む42歳無職の男で、被害者の女性は――――』
淡々と読み上げられるニュースを聞きながら私は床にへたり込む。
こぼれたコーラが直肌に冷たいがそんなことよりも、
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