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046: 最後の恩返し発動!《アリス》①

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 リオンとアリスの婚約ツガイが許された日から三月後。

 その日、猫族の国では二組の王族の結婚式が執り行われた。

 王太子ルカのツガイは真っ白な毛並みと青い瞳が美しい長毛種のラグドールだった。ルカに寄り添う白猫のその美しさにアリスもうっとりとため息をこぼした程だ。
 一方アリスはまだ完全に猫の姿に変化へんげ出来ていなかった。よって人の姿に黒い耳としっぽを生やし白いウェディングドレスを纏った姿で式に臨んだ。リオンも人形の魔法を使い白いスーツを纏っている。アリスとお揃いになる様に耳としっぽ付きだ。そのカッコよくも可愛らしい姿に猫好きアリスが真っ赤になって身悶える。脳内では黄色い声が止まらない。

 白いモーニングスーツに猫耳しっぽなんて!
 カッコかわいい!あざとステキ!ズルすぎる!

 リオンツガイのアリスが人族で妖精殺し持ちである。アリスの事情は同時に広く国民に知らされた。最強猫王の妃も人族出身であったためむしろ縁起がいいと猫たちにすんなりと受け入れられた。リオンとツガイになり魔力で繋がっているためアリスの妖精化も進行中である。いずれ完全な黒猫に化けられるという。

 リオンが猫であると知ったカラバ男爵は最初は相当に驚きアリスの行く末を心配した。だがリオンが猫神さまの孫だという事情がわかれば手放しで喜んでいた。式の間ずっと寄り添い幸せそうな二人のその様子にカラバ男爵は男泣きが止まらなかった。隣に座った人形キングが苦笑しながら男爵の相手をしていた。

 男爵には妖精の正体はバラさないでほしい。
 リック、メリア、キングが口を揃えた。

「わしらと男爵とは長い付き合いでな。事情を話すのも今更だ。できればこのまま使用人として置いてもらえるとありがてぇ。式?もちろん出席しますよ、猫の姿で」
「私ももう少し番犬ライフを楽しみたい。パパさんにわざわざ正体を知らせる必要もない。式には人の姿で出席するからバレないだろう?」

 というわけで。キングは人の姿で男爵の右隣に、リック、メリア夫妻は黒猫の姿で男爵の左隣にしれっと座っていた。カラバ男爵もまさか番犬ドーベルマンと使用人夫婦が自分の左右に座っていようとはつゆほども気がついていない。
 アリスにとっては父親が驚く瞬間が見られず残念だったが、リオンが猫だという時点でカラバ男爵はぶったまげていたから十分満足だった。これ以上驚いては倒れてしまそうだ。

 式の途中で猫王から祝詞が送られた。内容は猫族の国を造ったとされる神への讃歌。元となっているのは猫国に言い伝えられている神話だ。

 太古の昔、妖精の大王がいくつかの国を創った。その王に猫族の国には猫を、犬族の国には犬を置いたという。その直系の王族は神の力、魔法を使い、神の声とされる天の声を聞いてそれぞれの国を行き来できるという。アリスはリオンからそのような建国神話を聞いていた。それは人族の国の建国神話によく似ていた。神が造った国に人の王を置いた、と。


 そこでアリスははたと思う。

 では猫の国に来れる自分と父は?
 カラバ家は妖精の力が強いというがその意味は?
 妖精殺しとは?時々聞こえてくる降って湧いた様な声は?




 結婚式は披露宴に突入。無礼講とばかりに客猫がアリスになでなでを求めて殺到した。一匹ひとなで!というしぶしぶリオンの許可で猫たちはアリスに撫でられていたが、ひとなでで猫たちは皆昇天したように伸びてしまった。

「魔力が低いと"神の手"は効きすぎるでな、酔っ払った様になるんだよ」

 またたびに酩酊した様に転がる猫たちにアリスは慌てたが猫王にそう教えられほっと安堵した。

 なるほどね、これはみんな働かなくなってしまう訳だ。

 ルカ夫妻の見事なダンスに皆が盛り上がっているところで、アリスはリオンに手を引かれバルコニーに出てきた。陽はすっかり落ちて夜になっていた。

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