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010: リオンの恩返し発動!③
しおりを挟む人形の魔法は一度かけると半日は消えない。さっき人形になったから今日リオンは夜更けまで人の姿だ。よってそれまでは恩返しミッションクリアは不可能。そもそも自分で自分を見つけるというのは無理筋である。
「え?ねねねこ?もう家に帰ってるとか?」
「だったらいいんだけど。どこかでお腹空かせてないか心配だわ。昨日もご飯もらえてなかったみたいだし。元気にしているところを見れば安心できるの」
ぐッエサねだれないのバレてる。昨日はそんなにがっついてたか。
「えっとね、あっちをまだ見てないの。一緒に探してくれる?」
アリスに笑顔で手を取られた。“神の手”に抗えない。一緒に手を繋いで路地に入る。リオンは心中ガクブルである。脳内ではすでに現実逃避が始まっていた。
くくく黒猫と一言で言っても結構いるし?
アリスのお気に入りの猫は結構いるみたいだし?
ひょっとして?ひょーっとしたら?
全身全霊でそうだったらいいんだけど!探しているのは別の黒猫かもしれ‥‥
「リオン~リオン~出ておいで~」
「リリリリリリオン?!」
リオンは絶叫してアリスに問い返すもアリスはキョトンとしている。
「うん、猫ちゃんの名前」
「うぇぇぇ?!なんで?!」
「え?なんで?何が?」
「なんで名‥‥いや!なんでもないですッ」
空いてる手を振って全否定するリオン。さらに背中に脂汗が出てくる。
なんでお嬢がボクの本当の名前を知っている?!
そこでふと記憶が戻る。昨日たくさんお世話をされている時に守りのペンダントを探られていた。そういえば名前を呼ばれた気もしてきた。なでなで天国中で意識がとんでたところだ。
守りのペンダントは父王に子供の頃に与えられたもので名前入りだ。自分は王の子であるという証明。あれを見られたんじゃないか?だが普通の人族にはあれはわからない。それこそツガイとなる相手にしかわからないはずだ。
これは一体どういうこと?
リオンは慌てて襟元を正す。そのペンダントは今も自分の首からかかっている。自分が猫であるということも絶対秘密だ。猫がしていたものと同じペンダントも絶対に見られてはいけない。
妖精の、特に王族では名前呼びは重要な意味がある。異性の名前呼びはツガイとなる者にしか許されない。そのリオンの大事な名をアリスが今ぞんざいに連呼している。これはアリスがリオンの婚約者(半分)ということだ。
「リオン~リオン~どこいったの~?出ておいで?リオン~あれ?そう言えばりお君と似た名前だね?」
「ぎくぎくぅ!ぐ?ぐうぜん?」
「ホントそうだね。そういえばりお君はリオンに似てるかも?」
「えええ?!どこ?どこが?!」
とっさに頭を抑えたが耳は出ていない。変化の魔法は完璧だ。
「髪が真っ黒で?りお君は瞳も黒いね。リオンは綺麗な金色なの。あとはなんか雰囲気が似てるの。見つけたらりお君にもリオンを見せてあげたいな。あ、これは褒め言葉よ。黒、すごく綺麗ね」
「あ‥‥ありがとう」
いやいや?ボクがその黒猫だからね。
にこにこと嬉しそうなアリスにつられリオンもひくひくと笑う。
やばい。父さんにバレたらものすごく怒られる。相手は人族のお嬢だ。この場合は婚約成立?不成立?アウト?セーフ?いやまだ呼びかけはお嬢からだけ。片側通行だ。まだ大丈夫。まだ婚約未遂だ。セーフセーフ!
と再びセルフジャッジでねじ伏せる。
こうなるとボクは絶対お嬢の名前を呼べないな。
お互い名を呼び合えば妖精の婚約が成立するのだ。
オイどうすんだよコレ!どうすんだ?!再び!
てか!やっぱり探してる黒猫ってボクのことかぁ!!
リオンが壁に両手をついて落ち込んでいる。一方アリスは道端のゴミ箱の蓋を開けて覗き込んでいる。探しているのは本当に猫なんだろうか?
えーと、流石にそこにはボクいないよ?
「んーリオンいないなぁ。ちょっと休憩しようか?りおん君お茶しない?」
「え?オチャ?」
「あっちに美味しいケーキ屋さんがあるの。一人じゃ入りづらくって。でもりおん君と一緒なら大丈夫だから。一緒にお店に入ってくれない?」
「う、うん?」
「猫探しを手伝ってくれたお礼ね」
「そういうことなら‥」
さくっと「りおん君」と呼ばれてしまった。猫の名前とごっちゃになってる模様。猫探しで散々リオンと連呼されて訂正するのも今更だ。オチャの意味もわからないのにアリスの笑顔についうんと言ってしまった。
あー 恩返しできてないし。名前まで呼ばれたボクはこれからどうなるんだ?
アリスに手を引かれリオンはひっそりとため息をついた。
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