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二人の王編
スキル
しおりを挟む「人見知りなのですが、全然泣きませんね。さすが陛下です。」
「もういいでしょう陛下。‥‥陛下?」
アレックスが問いかけるがレオンハルトは即答できない。息をついてやっと言葉が出た。
「ディートに『魅了』が出てる。」
スキルが発現するのは通常十代後半。メリッサの『魅了』が六歳、アレックスの『魔狼』が生後半年に発現したのもかなり珍しいことだったのだが。
「そんな?!まだ生まれて半年ですよ?」
「俺の『解析』ではそう見える。ちゃんと信用できるものに『鑑定』させろ。他にもう二つ見えるぞ。ジークに半年で『魔狼』がでているんだからあり得なくはない。」
おずおずとアレックスが問いかける。
「なぜ『解析』を使われたのですか?」
「今『魅了』をかけられた。弱かったが多分そうだ。抵抗はできた。」
やはりか、とアレックスは言葉を失った。許可なく王に精神系スキルをかけるなどあってはならない。レオンハルトは疲れたように目元を手で押さえた。
「抵抗したと言った。安心しろ。赤子のしたことだ、不問にする。ただ対策を講じろ。あるとわかっていればこちらも気をつける。」
軽い目眩を感じつつもレオンハルトはアレックスに命じる。
抵抗できた‥んだよな。なんだこの疲労感は。
何も考えない赤子がこのスキルを使っては大変なことになる。両親のスキルを受け継ぎ、しかも発現が早い。ディードリントのスキルが三つならメリッサより強くなっている。末恐ろしい双子だ。
ジークヴァルドを『解析』して『魔狼』含めスキルが四つあることもわかった。アレックスより一つ多い。やはり強くなっている。
アレックスが真っ青になった。
「四つ?!そんなにあり得ません!」
「お前だって三つだ。増えることはあり得る。ちなみに俺は六だ。」
「はあ?!六?!それこそあり得ません!!というか俺三つなんですか?聞いてませんよ?!」
アレックスが心底驚いたように言った。
「言ってなかったか?俺の場合王専用スキルがあるから厳密には五だが。スキル持ち同士の子供は強くなるのかもしれない。」
スキルは通常発現したら一つか二つ。それ以上は確認できないが、王家とラウエン家は特例らしい。しかも後から増えていっている。赤子の頃の『鑑定』など当てにならないかもしれない。
『解析』は『鑑定』の上位スキルで去年レオンハルトに発現したスキルだ。『鑑定』より詳しい情報が得られ、内容が不明でもスキル枠や職業クラス、レベルも見える。レオンハルトに発現しているスキルは現時点で『大いなる祝福』、『聖戦』、『解析』の三つ。残り三つは不明だ。
「アレックス、お前のスキルは『魔狼』、『威圧』、『怪力』だ。『威圧』はお前専用だとして『怪力』はジークに継承されている可能性がある。注意しておけ。」
「『怪力』ってスキルだったのか。『魔狼』の一部かと思ってました。」
「まだ『魔狼』しか発現していないが、『怪力』も発現して暴れ出したら厄介だ。バースにすぐ魔道具を作らせろ。」
一気に邸内が物々しくなった。仕方がない。異例中の異例だ。
後日レオンハルトは『魅了』封じのペンダントを作ってディートリントに贈った。バースが作ったものはディートリントが拒絶したのだ。そこまで強力なスキルは無視できない。今後どうしたものか。
ただ二人のスキルに耐えられる侍女がいるとのことで、専属でその侍女が双子の面倒を見ることになったと聞いて安堵した。そんな破格の能力を持った侍女がいるのかと驚いた。
これでしばらく様子を見ることになりそうだ。
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