元帥になりたい!!!

ユリーカ

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第四章: ジーク、ダンジョンに入る。

探索

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 問題の古代遺跡は氷の神殿と呼ばれていた。他の遺跡よりも浅く冷気や罠が多い。祭壇らしき間もあることからの呼び名だ。
 階層としては浅いがエリアが広大で全ては踏破され尽くしていないという。

 古代遺跡の前で応援の冒険者を待っていたら、現れたのはライマーだった。ジークは隊長!隊長!と歓喜の声をあげる。

「あれれ?隊長?応援って隊長?」
「ここでは隊長ではなくライマーと呼べ。」

 驚いたグライドにため息をついたライマーが応じ、頭を掻いた。

「第八部隊で罠解除ができるものが俺しかいなかった、というのが理由か。まあこの古代遺跡はしょっちゅう入っていたから第一層なら道案内くらいはできる。」

 おお!本物の経験者だ!助かった!

「先に送ってくださった持ち物リストも助かりました。」
「装備は欠けると命取りになるからな。守りの魔道具はあるな?あまり時間もない。行くか。」

 元冒険者だということは噂では聞いたことがあったが本当だったのか。ライマーならジークのことも知っているし色々と安心だ。

 ジークとグライドはリュックを背負っている。
 本当はレオンハルトの時空の袋に入れることもできるが、流石に手ぶらで入るのはおかしい。だからそれっぽい程度の装備は背負っている。
 予備の食料や、これあったらいいな、というものは次元の袋に入っている。

 入り口の受付で記名をし許可証を提示して中に入る。これは魔封の森と手続きが同じだ。
 子供連れ、そして鷹と黒猫連れということで、警備の兵士に奇妙な顔をされた。
 ジークは楽しみなのか辺りを走り回っている。中に入ったら一人で突っ走りそうだ。

「ジーク、一人で勝手に行くなよ?」
「わかってるよ!早く早く!!」

 少し歩けば地下に続く穴がぽっかり空いていた。
 中は石造の白い階段が下に続いていた。

 グライドは事前に頭に入れた地図を思い浮かべる。この古代遺跡は地下タイプ。地下二階と浅い。
 地上タイプなら最悪窓から外に古竜で逃げるということもあるが、地下タイプは逃げ道がない。まあ浅いからそれほど問題ないか。

 ライマーがランタンを灯し先導する。ひんやりとした空気が肌を刺す。氷の神殿というだけある。これに備えて既に重装済だ。

 ファフニールが心地良さそうに翼を広げる。少し濃いめの魔素が漂っていた。
 ライマーの足に迷いがないということはそれ程に通い詰めていたということか。その意図を汲み取ってかライマーが口を開いた。

「第一層ならほぼ暗記している。だが第二層は俺が軍に入ってから発見された。そこは当てにするなよ。」
「第一層は探索済みということでよいですかね。」
「いいが、何かまだ罠はあるかもしれない。みだりに触れるなよ。」

 なるほど、とジークにもその指示を伝える。
 一階はただひたすら小部屋が続いていた。盗掘され尽くしてか何もない。ジークはつまらなそうにため息をついた。

 だがただ一人、いや一匹だけ様子がおかしかったのはローゲだった。
 探索開始時はキョロキョロと楽しそうにしていたが、すぐにとぼとぼと下を向いた。そしてドボンとグライドの影に飛び込んでしまった。

「どうしたローゲ?」
『ここつまんない。オイラ寝てる。主殿あるじどの気をつけろよ。』
「気をつける?」
『ここはまだ生きてる。警告は出すがあんま触んない方がいい。』
「生きてるってなんだよ?おい?!」

 そしてローゲは沈黙した。



 一階の探索はあっけなく終わった。もう盗掘され地図まで出回っている。罠もなく魔獣も出ない。各部屋に異常がないか確認するだけだ。

「何もありませんね。」
「本命は下だろう。ここは低レベルの冒険者でも来られる。」

 一行は階段を降りた。二階。冷気と魔素が濃くなったように感じられた。

『ここも魔獣の気配はありませんな。』

 ファフニールはふむと首を傾げる。なんの危険もなさそうな古代遺跡だ。

「ここはまだ探索され尽くしていない。罠もあるかもしれないから不用意に触るな‥‥、ジーク!!」

 ライマーの叫び声にグライドは振り返る。ちょうどジークが壁の出っ張りを押し込んだところだった。
 ジークの足元の床がぱっかり割れて落とし穴になる。ジークと鷹はそのまま落とし穴の中に落ちていった。

「ジーク!!」
「ふえぇぇ!!」
「おい!大丈夫か?!」

 二人は穴に駆け寄り声をかける。ジークの鼻声の悲鳴が聞こえる。
 なんてぇベタな罠にかかってるんだ!!一応獣なんだろ?!

 しばらくすると、よっと掛け声が聞こえジークと鷹が落とし穴からよじ登ってくる。壁は指をかけるところがないのにヤモリのように登ってきた。

「ふー、ひどい目にあったよー」
「何があったんだ?」

 ライマーがやれやれと問いかける。

「もう臭くってさー!鼻曲がるかと思った!なんか白いものがいっぱい落ちてた!あれなんだろうね?」

 元気よく言っているが間違いなく人骨だろう。そして腐臭。そうとわからんお前も鈍いな。

 罠って面白い!と楽しそうに言うジークにグライドは脱力と同時にこの少年の行動を予想して戦慄した。


 まずいぞ、この展開。これはきっと嬉々としてやり始めるんじゃないか?




 そこからジークは大活躍だった。ちょろちょろと先行し自ら罠にはまる。そしてそれらを華麗にかわす。
 なぜそれに触る?という罠まで発動させてみせた。

 落とし穴。槍。針山。火炎放射。鉄球。檻。毒噴射。

 落とし穴程度ならいいが火炎放射や飛び道具系はグライドやライマーにも飛んでくる。罠発動後も結局三人で敗走することもしばしあった。

 獣の本能で罠自体を躱すことはできないのか?こっちの心臓に悪すぎる!!
 そしてこっちも巻き込まれるからは発動させるのはやめろ!!

「これなら俺は要らなかったな。」

 罠の場所を地図に書き込みながらライマーも呆れて息をついた。解除する前に罠に手を出すジークもジークであるが。
 一階の探索で既に飽きていたジークは楽しそうに罠に嵌っていた。

「見て見て!兄ちゃん!これ壁が開いた!」

 がこんと何か押し込んだのかジークの嬉々とした声がした。開いたと同時に何かが飛び出してくる。大蛇だ。

「まずい!そいつは猛毒だ!噛まれる‥‥」
「ん?なにー?」

 ライマーが途中で口籠もる。蛇は威嚇音を発しながらジークに飛びかかってきたが、ジークの曲刀で同時に首を刎ねられていた。その鮮やかさに二人は絶句していた。

 うん、俺さえ要らなさそう。


 途中の部屋を確認しながら二階の探索を進めれば、すぐに未探索エリアとなった。ここまでも一階同様何もなかった。

「罠解除には時間がかかる。ジークの戦法もあながち間違ってはいないな。」
「最短コースかもしれませんが、普通は無事で済まないでしょうね。俺たちもよく無事でした。」

 グライドは遠い目で応じる。罠発動に巻き込まれてとんでもなく疲れていた。

「まあそうだな。この階はしばらく好きにさせてみるか。」
「はぁ。まあそうですね。楽しそうですし。」

 二人は縁側で孫を見る老人のように前方で飛び回る少年を見やった。
 目の前で針山地獄の罠を作動させ、おぉ!とジークは歓喜していた。



 











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