元帥になりたい!!!

ユリーカ

文字の大きさ
上 下
28 / 44
第二章: ジーク、冒険者になる。

竜を飼いたい!!!

しおりを挟む



「ダメに決まっているだろうが!!」

 こめかみを揉んだレオンハルトが正面のグライドを睨んだ。


 ラウエン家ファミリーと別れ、飛竜二頭で森を後にした二人は冒険者ギルドに寄り正式に依頼の取り消しを受けた。
 手続きの行き違いがあった、と受付嬢から平謝りされた。ジークは残念そうだったが仕方がない。依頼はまた改めて受けることにした。

 依頼は未達だが冒険者登録まではできた。そうして二人は課題達成の報告のため登城したが、そこでファフニールがゴネた。猊下がおられる!一目ご尊顔を!!と譲らなかった。そこで皆で知恵を絞る。
 
 もっと小さくなれば白いアヒルに見えなくね?

 そこでジークの肩に乗るくらいまで小さくしてみた。そんな鳥がいるかもしれない、くらいまで擬態できた。
 そうして報告のため執務室に入ったのだが、入った早々にレオンハルトにバレた。

 そして現在のお説教に至る。



「なぜ連れてきた?!王宮に魔獣?しかも竜を飼う?お前の常識を疑うぞ!!ラウエン家に毒されすぎだ!!」

 あれー?なんでだー?これでいけると思ったのだが。

 グライドの隣にはジーク。その肩には白い鳥のような違うような生き物が乗っている。それがうるうると目を潤ませレオンハルトを見ていた。もう泣き出さんばかりだ。

『猊下!猊下!なんと眩い‥‥』

 うーん?デカい時は威厳たっぷりだったが小さくなったらチョロくなったな。性格変わった?
 一方その泣き虫な竜の様子にレオンハルトは腹立たしさを隠さない。

「飼うのはダメだ。拾ったところに戻してこい。」
「え?かわいそうだよ!ちゃんとオレが世話します!散歩もします!なんとか飼わせて下さい!お願いします!」

 ほらかわいいでしょ?とジークはファフニールをレオンハルトに差し出すも手で払われる。
 あれれ?陛下は竜が苦手ですか?

 もう捨て犬を拾って飼いたいとゴネている子供と親のやりとりのようだ。だが子供の押しが弱い。いやいや、ここは情よりペットの良さを訴えないとだろ。
 グライドは援護射撃を出してみた。

「餌もいらない。鳴かない。家も痛めません。」
「当たり前だ!!」
「躾ければ芸もしそうですし、城に竜がいるなんてよくないですか?有事で使えますよ。」
「どんな有事だ?!」

 レオンハルトの突っ込みが鋭い。
 それほどに嫌なのか。カッコよさに訴えてみるか。

「陛下専用の飛竜にしたら凄くないですか?」
「飛竜は間に合っている。そもそも俺は飛竜に乗る必要もない。」

 ですよね。とりつく島もない。
 テオドールは最初は驚いていたが、今は呆れている様子だった。眉間に手を当てて目を閉じている。

「だいたい何処で飼うつもりだ?王宮内は論外だ!」
「えー?飛竜小屋とかダメですか?」

 レオンハルトは呆れを通り越して可哀想な子を見る目をグライドに向ける。

「竜と呼ばれているからといって同じ竜と思うなよ。飛竜小屋にこれを突っ込めば、他の飛竜は皆ショック死だ。ウサギ小屋に狼を突っ込むに等しい。」
「え?そうなんですか?」

 あれ?感覚麻痺してた?だからさっき二頭で飛んだ時に飛竜が震えてたのか。腹が減ってると思ってた。
 やばい。これを飼う場所がなくなってしまった。王宮の噴水や池に入れるのはダメか?水鳥っぽくてよくね?

「噴水や池もダメだ!!」

 オウムっぽく部屋にポールハンガーを置いてそこに。

「それもダメだ!屋内は絶対許さんぞ!!」

 ゲージを置いて。

「どこにゲージを置くと?!人の目に晒される!!」

 レオンハルトがグライドの思考を読む。もう以心伝心がすごい。
 レオンハルトがさらに呆れたように竜を見やる。

「しかもあれは古竜エイシェントドラゴンだ。古竜とは聞いてなかったぞ。これを飼うなど聞いたことがない。」

 俺は飛竜じゃない竜を飼うのが初めてです。
 しかし古竜?聞いたことがない。

「古竜ですか?なんでしょう?」
「竜の上位種だ。始祖王の時でさえ数頭しかいなかった。伝説級だ。それが何故魔封の森に居た?」
『猊下!お忘れですか?!ファフニールでございます!!』

 ファフニールが必死の形相で訴える。怒られていると知って黙っていたようだが我慢できなかったようだ。
 レオンハルトがピクリとする。

「ファフニール?あの?」
「どの?ですか?」

 ふうと息を吐いたテオドールが話をする。

「絵物語に登場する始祖王の配下の竜です。名はファフニール。」
「そうそう!神竜ファフニール!カッコいいよね!!」

 そんな名前だったか。ジークの名付けは絵本から取ったのか。ダサい名前じゃなくて良かったと思ったが。なんだパクリか。

かしこくも猊下と共に魔素と戦い、我は力尽きてあの地で眠りにつきました。猊下がご無事で本当にようございました。』

 当時を思い出したのか、感じ入ったようにはらはらと泣き出す。器用に前足で涙を拭った。見た目は鳥っぽいがよく見ると翼以外に足が四本ある。どっちか消させないとすぐバレそうだ。
 レオンハルトはしばし思案しきっぱり言い切る。

「さっぱりわからん。」
『猊下!!』
「そこらへんの記憶が曖昧だ。だが竜は覚えている。だから捨ててこい。」
「えええ?そんなぁ。」

 ショックで目を潤ませたファフニールをジークが抱きしめる。ファフニールに釣られてか涙目だ。

 しかしここで飼えないと今後の扱いが面倒だ。毎週森通いなんてやってられない。なんとか城で飼いたいところなのだが。ダメの理由がわからないと説得もできない。

「なぜそれほどダメなのでしょうか?」

 レオンハルトはふぅと椅子の背もたれに寄りかかる。

「お前らは竜の恐ろしさがわかっていない。これは恐ろしい存在だ。」

 え?なにそれ?見たまんまじゃないの?
 そんなヤバい生き物だったか。グライドがごくりと喉を鳴らした。レオンハルトが真顔になり声を低くする。

「いいか?竜は寂しがりだ。それはもう酷いものだ!始終巨体でひっつき虫のように主人に付きまとう。そして猊下猊下と涙する。うざったくてしょうがない!」

 え?そっち?

「それが十、二十になってみろ。うざすぎて発狂する。だから始祖王は竜を各地に分散して竜の村に封じた。うざったいからだ!」

 うわぁ実は酷い話だった。これは始祖王の心的障害トラウマ
 だから竜に会うのを嫌がったのか。でもアレクかジークが契約して同じ目に合うのはいいと思ったんだよな。それもひどくね?

「え?じゃあ一匹なら楽勝?」

 ジークが目をキラキラさせてみせる。おいおい、どんだけポジティブシンキングだ?
 グライドは切り替えて打開策を出す。

「えーと、それでは付き纏いはジークのみということでいかがでしょうか?主はジークですし。ジークの肩の上に常に乗せておけば悪さもしないでしょうし。」

 うんうん!とジークが全力でぶんぶん頷く。竜はひしとジークの首にひっついている。四つのうるうる目がレオンハルトを見た。
 レオンハルトはじぃっとジークと竜を見て諦めの息を吐いた。

「わかった。ただし魔道具で姿を封じる。ジークはしっかり世話をするように。怠った場合は俺がお前を八つ裂きにするぞ。」
「はい!ありがとうございます!!」

 八つ裂きってどんだけ心的障害なんだ。だが何とか許可がおりた。

「よかったな、ジーク」
「うん!ありがと!兄ちゃん!オレ世話頑張る!」

 気合が入っているところ申し訳ないが、多分言うほど世話は必要ない。

 魔素でできた魔獣は飯も排泄も風呂もない。ただ魔素を喰らうだけ。それに羽毛がちょっと抜けるとか。
 あとはたまに外飛ばしておけばいいくらいだ。それさえも勝手にやれと言えばするくらいの知能が十分にある。寂しがりだから必ず主人の許に戻るだろう。だから綱もいらない。抜けた羽毛の掃除さえ自分でしそうだ。

 ジークが毎日する世話といえば、話し相手になって泣いたら慰めるくらいだろう。

 ファフニールはご機嫌でジークに頬擦りしている。懐きっぷりがすごい。古竜は愛玩動物か?
 これで森通いはなくなったな。アレクに報告しておかなくては。



 ファフニールは気をつけて擬態するようになったので、見た目は白い鷹の姿となった。魔素の薄い王宮ではいっそ小さい体の方がいいくらいだと言っていた。
 レオンハルトが作った魔道具の足環をつけているので、そう簡単に竜に戻れない。それでも本人は主人の側にいられて幸せのようだ。

 たまに王宮の庭で鷹を飛ばすと辺りから一斉に鳥や獣がいなくなる。魔道具で姿を封じられてもそれくらい恐れられているようだ。

 こうしてジークは白い鷹を肩に乗せた従者見習いとして王宮内に知られるようになった。
 実は伝説級の古竜を従えテイムしたとは露ほども思われていない。

 そうしてここに幼い竜使いドラゴンテイマーが誕生した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

【完結】少年王の帰還

ユリーカ
ファンタジー
 ——— 愛されるより恐れられよ。  王の崩御後、レオンハルトは六歳で王に祭り上げられる。傀儡の王になどなるものか!自分を侮った貴族達の権力を奪い、レオンハルトは王権を掌握する。  安定した政のための手駒が欲しい。黄金の少年王が目をつけた相手は若き「獣」だった。 「魔狼を愛する〜」「ハンターを愛する〜」「公爵閣下付き〜」の続編です。  本編でやっとメインキャラが全員参加となりました。  シリーズ4部完結の完結部です。今回は少年王レオンハルトです。  魔封の森に封じられた魔神とは?始祖王とは?魔狼とは?  最後の伏線回収です。ここまで何とかたどり着けて感無量です。  こちらも最後までお付き合いいただけると嬉しいです。  細かい設定はさらっと流してます。 ※ 四部構成。  一部序章、二部本編はファンタジー、三部は恋愛、四部は外伝・無自覚チートです。 ※ 全編完結済みです。 ※ 第二部の戦闘で流血があります。苦手な方はご注意ください。 ※ 本編で完結ですが、後日談「元帥になりたい!!!」ができてしまいました。なぜ?  こちらはまだ未完ですが、楽しいので随時更新でゆるゆるやりたいと思います。

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

処理中です...