元帥になりたい!!!

ユリーカ

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第一章: ジーク、弟子入り(仮)する。

グライドの試練①

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 二十七日目。レオンハルトとグライドは向かい合って立っていた。
 今日はレオンハルトの指示で一対一の手合わせとなった。

 一昨日、腕輪×50でグライドは魔力暴走した。レオンハルトが暴走を止めたのだが、グライドはその後半日ほど動くことができなかった。それほどに体に反動が来た。
 体が回復し魔力の注入を受けて動けるようになったグライドに、王は翌日の手合わせを指示した。

「いい感じに出来上がった。そろそろ仕上げるとしよう。」

 仕上げるって何を?というツッコミを許さない雰囲気だった。しのごの言わずにやれ、てか。ほんと横暴だな。今更だけどね。心中で独りごちて嘆息する。

 ジークはグライドの枕元から離れなかった。ずっと心配してくれてたらしい。暴走してあんなにボロボロにしちまったのに、ほんと、いいやつだな。怪我も治ってるみたいで安心した。

「ごめんな。ずいぶん殴っちまったな。痛かったか?」

 罪悪感からそう言えば、ジークはきょとんとした顔をする。

「そうだったっけ?師匠のに比べたら全然だったよ?」
「え?」
「だって兄ちゃんのはちょっとだけ痛かったけど怪我しなかったし!ほら!アザないでしょ?師匠のはちゃんと受けないとほんと痛いんだよね~」
「は?!」

 マジか。陛下、獣相手でももうちょっと手加減してやってください。
 


 そうして今。グライドは中庭で王と相対している。

 グライドは装備解除で使用できるには『鉄壁』のみ。レオンハルトは魔術三回と剣術一回のみ。
 『鉄壁』のみでグライドがレオンハルトの攻撃を抑え切れたら合格となる。そうはいっても一打でも浴びれば生死不明レベル!なので完全防御が条件となるだろう。

 合格ってなんだ?俺も指導しごきを受けているのが未だに納得できない。だがあの王様がやれという時には反抗も許されないしなぁ。宮仕えの辛いとこだ。

 テオドールが遠巻きにこちらを見ている。不測の事態に備えての救護班だ。ジークは遠くの木の下で目を閉じている。グライドの次はジークの番だから。

「いくぞ。覚悟はいいか?」
「覚悟なんぞできてませんが、よろしくお願いします。」

 レオンハルトは腕を組んで、ふん、と右の口角を上げる。なんだか楽しそうですね。
 レオンハルトは何時ぞや身につけていた動きやすそうな格好に、腰には指導時と違い刃が潰されてない曲刀を二振り下げている。王の本気の姿にグライドはごくりと喉を鳴らした。

 レオンハルトは人差し指を空に掲げる。雲が立ち込め稲妻が走る。
 最初からそれ出すんですかい!!気合入ってますね!!グライドは内心げっそりした。

 それはレオンハルトがよく使う古代魔術『雷神トニテューラ・ディ』。始祖王も使っていたが、当たればもれなく黒焦げで絶命だ。危険度はぼちぼちヤバいやつ。
 現在の魔術で相当する術はない。だから現代魔術の『鉄壁』では防げない。六角形の強化『鉄壁』が必須となる。

 グライドは六角形の『鉄壁』を展開する。レオンハルトの術に手加減が見られない。強化『鉄壁』を失敗すれば命がない。
 戦慄が体を駆け抜ける。失敗は許されない。集中しろ!俺!!
 パキパキと音を立てながら丁寧な正六角形を幾重にも形成する。

 落ちてくる黒い雷とその轟音に合わせグライドが正六角形を並べ繋げ、強化『鉄壁』で防壁を展開する。眩い光にグライドは思わず腕で顔を庇う。黒雷を受けた『鉄壁』の六角形の縁を電撃が走る。ビリビリと『鉄壁』が鳴った。

 庇った腕の隙間からそれを見て冷や汗がふき出る。堪えろ!

 強化『鉄壁』は轟く黒雷を相殺してパリンと割れた。
 グライドはふうと息をついた。
 よし耐えた。まずは一つ目。

 レオンハルトの周りに炎が吹き出す。間髪入れず畳み掛けるのか。危険度は結構ヤバいやつ。
 古代魔術『炎龍イグニス・ドラコ』。広範囲に炎の渦を出す。巻き込まれればこれも即死レベル。そして手加減なし。本気の王様怖ぇな!
 平たい壁では防げない。全方位型が必要だ。
 グライドは相手の術を判別し、適切な強化『鉄壁』の形を選択する。戦場ではこの判断を誤れば終わりだ。

 再び正六角形の『鉄壁』を展開する。全方位型の防壁にはとにかく数が必要だ。精度を損なわず量産しなければならない。
 魔力がゴリゴリなくなっていく。裏で『魔素変換』×5をかけているが、『鉄壁』の魔力消費は結構厳しい。無駄遣いせず必要最低限数を見極める。
 やることが多い。同時展開マルチタスクにグライドは集中する。

 『火龍』が完成し、長い胴を持つ火龍が体をしならせてグライドを囲む。その全方位に火柱が立つ。
 それに合わせて強化『鉄壁』をグライドを覆うように展開する。それは円柱状の強化『鉄壁』。炎の衝撃に『鉄壁』が生き物のように甲高くいなないた。唸る高温の炎に堪えきれず溶ける『鉄壁』を補強すべく、内側から新しい六角形を押し込む。堪えろ!堪えろ!

 炎が消えた後にグライドは荒い息で立っていた。残ったわずかな『鉄壁』が砕けた。
 二つ目、なんとか耐えた。

 レオンハルトがすっと手を地面につける。グライドはぞくりとした。最後はあれか?!

 グライドの周りの地面から五本の土柱が立ち上がる。それは人型の泥人形ゴーレム。その力は尋常じゃなく強力だった。物理に似たその攻撃は指導時何度となく強化『鉄壁』を貫き壊してきた。とにかく強度を上げなくてはならない。

 グライドは六角形を作り出すが、大きさはいつもの1/3程度。小さな六角形を量産しつなげていく。小さいが故に時間がかかる。それを五枚、泥人形の前に展開していく。泥人形と細かい強化『鉄壁』、どちらの完成が早いか。グライドは『魔素変換』をやめて『鉄壁』に集中する。間に合え!集中しろ!!

 わずかに泥人形の完成が早い。そこに時間稼ぎに通常の『鉄壁』を幾重にも張る。剣を持った泥人形が脆く『鉄壁』を破壊する。剣がグライドを襲うが、そこで強化『鉄壁』が完成した。
 亀の甲羅のような僅かに丸みを帯びた強化『鉄壁』。小型であるが泥人形の剣を受け止め堪えている。キィィと甲高い音を立てて力が拮抗する。ピシリと甲羅にひびが入った。

 堪えろ!耐えてくれ!!『鉄壁』に圧を加え泥人形の剣を弾き返す。弾かれた剣と同時に泥人形が砕け散った。
 三つ目、初めて耐えられた。

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