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仔猫が現れた!
しおりを挟むこのいい雰囲気のままもっと色々話をしよう。
時間はたっぷりある。ずいぶん遠回りをしたが、もう何の問題も無くなったのだから。
ワクワクしてメリッサの顔を仰ぎ見て、アレックスは初めて異常に気がついた。
メリッサの顔は赤く目もうるみ、呼吸が浅く不規則だ。気分が悪いのかと「状態異常」の魔術をかける。対象の異常を確認できるのだが、「混乱」と「泥酔」が出た。
酔っていたのか?! なぜ?!甘い香りに紛れて酒の匂いに気がつかなかった!
メリッサが膝から崩れ、咄嗟に抱き止める。
“仕込み”ってこれかっ なんて雑なことを!絶対許んぞグライド!!
復讐を誓いながら腕の中でぐったりするメリッサの頬にかかった髪を払った。
「にゃんっ」
くすぐったそうにメリッサが体を捩る。んん?にゃん?
もう一度、メリッサの頬をするりと撫でると、今度はむずがるように体を捩りアレックスに擦り寄ってくる。
「にゃぁんっ」
アレックスは衝撃で思考が止まった。
なんだこの可愛らしさは?!酔うと仔猫属性になるのか?なんて愛らしい‥。よくやったぞグライド!!
さらに喉を指先でくすぐってみると、頭をのけぞらせ白い喉を晒す。誘われるままに首元に顔を埋めてつつと舐め上げると、にゃんにゃん鳴き声をあげて縋り付いてくる。
ヤバい、これはたまらなくいい。
もっと鳴き声を聞きたくて夢中で首筋にしゃぶりつく。濃くなる甘い香りに、艶のある鳴き声に理性が飛ぶ寸前——
「失礼いたします。」
アレックスの脳が一気に覚醒した。
夜も更けているのに仕着せを着たロザリーが扉の側に控えていた。
いつの間に‥‥いやいつからそこに?全く気配を感じさせなかった。背筋がぞわりとした。ロザリーは音もなく近寄りメリッサの頭を撫でる。
「お嬢様は‥ダメそうですね。またお嬢様をお部屋に運んでいただけますか?」
最初の晩のことを思い出す。どこから?今回も全部見ていたのか?冷や汗と共に顔が沸騰する。
「ご安心を。今回も違反になりません。」
やはり見ていたのか。赤い顔に手を当てて思わず俯いた。この侍女に一生頭が上がらない気がする。
いつの間にか寝息を立てているメリッサを抱き上げ部屋に運んだ。こうやって部屋に運ぶのもこれで二回目かと苦笑する。
床に転がった空っぽの酒瓶に驚いた。かなり強い酒だ。グライドめ‥‥。
そうそう仔猫になられても困るので、酒はしばらく禁止だとロザリーに伝える。メリッサの艶姿を誰にも晒したくない。それにこういうお楽しみは先に取っておくものだ。アレックスはにんまりと笑った。
今晩のことを忘れて欲しくない。アレックスは自分が贈ったカードにメッセージを書きメリッサの枕元に置く。ダメ押しにサイドテーブルに空き瓶を置いた。
すやすやと眠る温もりを手放すのが惜しくて額にキスを落とした。
「メリッサ、いい夢を。」
さて、次はあそこに行かなくてはな。アレックスはメリッサの部屋を出て歩き出した。
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