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第一章 : 恋に落ちた錬金術士

第十一話 ※※

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 やっと一日が終わった。

 シャルロッテは疲れたようにベッドに腰を下ろし息を吐いた。アイザックに触れていないのに近くにいるだけで肌がチリチリした。無意識に触れようと手を伸ばしかけたこともあった。そして触れられれば焼けるようにそこが熱くなった。

 一度だけ。昨日だけの出来事。

 もう忘れないといけないのに体がそれを許さない。愛してほしいとアイザックに焦がれてしまう。あの快楽が体に染み付いて、浅ましくもアイザックにそれを強請ってしまう。

「‥そんなのもうダメなのに‥‥」

 昨晩は慰めてもらうという言い訳があった。
 だがあの快楽を知った今、シャルロッテは体もアイザックに恋してしまった。

 愛された思い出があればこれからも生きていけると思ったのに、その愛なしでは生きていけない体になってしまった。

 一生この苦しみから逃れられないの?
 いっそ何も知らなければ諦められたの?
 こんなの辛すぎる‥‥

「‥‥せんせぃ‥」

 この追い詰められた状況にシャルロッテは声を殺して泣いていた。



 そこでふと、あの香りがした。
 大好きなアイザックの香り。それとわかった。

 扉に近づき恐る恐る開けると少し離れた廊下の暗がりにアイザックが立っていた。その姿を見ただけでシャルロッテの胸に温もりが集まった。

「何で‥‥?」
「‥‥ロッテが泣いてるような気がして‥‥、本当に泣いていたのか?」

 震える手がシャルロッテの頬を撫でる。シャルロッテは目を閉じてその手に己の手をあてがい頬を擦り寄せた。涙がアイザックの手を伝う。

 優しい先生。鈍感なくせに人の悲しみには敏感なんだから。そういうところ大好き。

「先生‥‥本当に優しい」
「‥‥僕は優しくなんかないよ」

 抱き寄せられ囲い込むように抱擁される。

「どうすれば君から悲しみをなくせる?」

 夜の闇を集めた様なダークブルーの瞳が翳る。

 なんて綺麗なの。

 シャルロッテはその瞳を覗き込んで微笑む。溢れる涙に構わずアイザックの前で目を閉じた。しばし後に触れるだけの優しいキスが降る。背中に手を這わせれば同じように背に手が這わされる。

「ロッテ‥‥」
「‥‥先生‥私を愛して‥‥」

 憐憫はいやだ。先生の愛を私にちょうだい。

 昨晩は憐れみでも構わないと思ったのに、今シャルロッテはアイザックの心を欲していた。
 縋りつけば何か堪えるような顔でアイザックがシャルロッテに口づける。

 キスをしたそのままにシャルロッテは廊下の壁に押しつけられアイザックの両腕で壁に閉じ込められる。キスが深くなりお互いの舌を擦り付けあった。シャルロッテはアイザックの首に手を回し必死にキスを返していた。

 アイザックの手がシャルロッテのスカートを捲り太腿に淫らに這う。触れられたその快感にシャルロッテが喉を鳴らした。深く口づけられ体に触れられてシャルロッテの心は一気に喜びで塗り潰される。

 あぁ、先生大好き‥‥

 アイザックが口づけながらシャルロッテの中心に指を這わせれば、くちゅりと水音がする。まだ愛撫もされていなかったのにすでにそこはぐずぐずだった。
 その音にシャルロッテが羞恥で真っ赤になる。キスをやめて視線を外して俯いた。

「‥‥何もしてないのにこんなの‥‥」
「そんなことないさ、可愛いロッテ。すごく愛おしい」

 愛おしい。その言葉に胸が締め付けられる。震えるシャルロッテが涙目でアイザックの首に抱きついた。アイザックが欲しくてさらに愛蜜が溢れでる。

「せんせぃ‥‥はやく‥‥」

 シャルロッテの切羽詰まる声にアイザックはシャルロッテの下穿きを床に落とし性急に右足を持ち上げる。そしてたぎる自身を一気に、躊躇いなくシャルロッテの中にうずめた。
 シャルロッテの愛路は熱杭を嬉々として受け入れてぎゅうぎゅうにそれを締め上げる。持ち上げられた右足がピンと伸びた。

「はぁ‥、あぁあ‥‥」
「くぅ‥‥ロッテ‥‥」

 アイザックは快楽から出る艶声を歯を食いしばって噛み潰す。
 ゾクゾクする悦楽と圧迫感でシャルロッテは体を壁に預けてビクビクと体を震わせる。蜜道が硬いものを締め付けるたびに奥がキュンと切なく疼く。

 部屋のベッドまで遠い。もどかしくて今すぐ繋がりたいと思った。だからその場でアイザックと繋がれてシャルロッテは歓喜の涙を流す。アイザックに余裕なく貫かれ、酷く求められているような錯覚に陥り嬉しくて眩暈がした。
 今日一日、散々フラッシュバックで身悶えていた為に膣内は十分潤っていた。それでも硬く大きなそれに一気に押し入られその衝撃でシャルロッテは体を慄かせた。

「‥‥すまない、待てなかった‥‥痛かったか?」
「‥‥だいじょぅ‥ぶ‥‥うれしぃ‥‥」

 気遣って前屈みになるアイザックにシャルロッテからキスをする。昨晩生まれて初めてキスをしたばかりなのに、アイザックに散々貪られた為か躊躇いなくキス出来た。

「ロッテ、飲み込みが早いね」

 獣のように目を細めたアイザックがそう呟き、壁に押しつけられたシャルロッテに腰を打ち付ける。その膣奥深くまで楔を打ち込もうとする交わりにシャルロッテは息を呑む。
 服を脱がない、ベッドにさえ入らない立ったままの交わりに動揺しつつもアイザックを欲して体は受け入れていた。

「足を僕の腰に絡ませて」
「‥‥こう?」
「‥‥そう、上手。いい子だ」

 言われるままにシャルロッテは両足をアイザックの腰に回ししがみつく。シャルロッテは足を抱えられ体が浮いた格好だが、壁に背中を押し付けられているから不安定ではない。だが少し動けば体に貫かれた杭が重力でさらに深くシャルロッテに埋め込まれる。その心地よさにシャルロッテは苦しげに瞑目し言葉を呑み込んだ。
 アイザックはシャルロッテの臀部を抱き寄せさらに下から突き上げる。その甘い痺れにシャルロッテは首を晒して仰け反った。下腹部から体全体に甘露な快感が伝わっていく。

 シャルロッテが快楽に堕ちた瞬間だった。

「‥せんせ‥きもちぃ‥‥」

 シャルロッテの法悦な笑みにアイザックが切なく苦しげな笑みで返す。

 アイザックがシャルロッテの中から杭をギリギリまで引き摺り出しさらに奥へ打ち込む。その度に甘い声が漏れ卑猥な水音が響く。廊下で交わっているという背徳感にも感じ入って蜜をこぼしてしまう。

 シャルロッテを抱き支えていて両手は使えない。代わりにシャルロッテの白い首に舌を這わせ胸に谷間にむしゃぶりついてアイザックは無心に腰を振る。

 やがて二人はほぼ同時に震えて達した。

「‥‥ロッテ‥‥」

 貪るようなキスを受け入れ、アイザックの腕の中でシャルロッテは満たされていた。

 そして新しい涙をこぼす。

 あぁ、ずっとこの腕の中にいたい。




 そこから毎晩二人は体を繋げ愛し合った。日中は息のあった仲がいい師弟。だが陽が落ちれば淫らな愛人となる。
 シャルロッテがアイザックの部屋に通ったこともあったが、ベッドが小さく結局シャルロッテの寝室に移動した。四日目にはシャルロッテの部屋で二人は朝を迎えた。

 相変わらずアイザックは肌を見せないが、アイザックに大事に愛され蕩けさせられ無垢なシャルロッテはその淫楽にさらに堕ちていた。
 その行為で、その態度でアイザックから大事にされていると感じることができた。愛されているんじゃないかと思いそうになることもあった。

 だがシャルロッテはあることが引っかかっていた。それは日毎にシャルロッテの心の中で暗く重くのしかかっていく。

 シャルロッテはアイザックから聞いたことがなかった。

 ロッテを愛している、と。

 シャルロッテは涙をこぼす。

 愛し合いつながっている間は幸せだった。
 でも幸せな時が終われば悲しいほどに一人だ。

 そして泣きながら理解する。
 いくら体を繋いでもアイザックの心は手に入らない。
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