【完結】R18 秘密 〜 恋に落ちた人が義父になりました

ユリーカ

文字の大きさ
上 下
38 / 61
✠ 本編 ✠

035 夢と現実① ※

しおりを挟む



 七日ぶりに別邸に戻ってきた。

 また日常が始まる。自室に戻れば何も変わっていない。たった七日だったが随分長く家を空けていたように感じられた。
 クローゼットには喪服がかけられていた。戻ってきたらまた着るつもりで置いていった。迷わず喪服に袖を通す。

 現実を見なくては、立場をわきまえなくてはならない。喪は明けたが自分は未亡人、ダグラスの妻だった。そしてクリフォードは自分の義父だ。その一線を超えてはいけない。夢は終わった。そう自分に戒める。
 午後は会社に出ると言ったクリフォードを見送りに出た。髪をきつく結い上げ喪服を纏うトリシャにクリフォードは驚いたように目を瞠ったが何も言わなかった。

 クリフォードと入れ違い、見計らったような来客に驚いた。アーサーだった。

「今日帰るって聞いてたから来ちゃった。うるさいのがいなくなるの待ってたんだ。どこに行ってたの?楽しかった?」
「ええ、山荘よ。雪が降ったわ」
「いいなぁ、今度僕も連れてってよ」

 無邪気にねだるアーサーにトリシャは曖昧に微笑む。あそこは家族しか連れて行かないとクリフォードが言っていた。

「トリシャ、感じ変わったよね」

 思いふけっていたところで突然そう言わてギクリとした。喪服も髪型も変えていないのに。

「そ‥そう?」
「うん、すごくキレイになった。雰囲気も柔らかくなったし。旅行楽しかったんだね!」

 褒め言葉だったがトリシャは更に内心焦る。もしそうだとするとあの七日間のせいだ。自覚がなかったが他人にはわかってしまうのだろうか。

「そういやあいつさ、トリシャにひどいことしてない?」
「ひ?ひどいこと?!何が?!」
「だっていっつもトリシャにダメダメいうじゃん。小姑。昔からああだったよね」

 クリフォードはレイノルズと馬が合わない。それはステイル伯爵を継いだダリルもだがアーサーも口うるさいクリフォードを煙たがっていた。

「そんなことないわ。もしそう見えるのならクリフォード様は私の父になったのだから仕方ないのよ」
「え?ちち?父親?あいつがトリシャの?」

 あまり公言していなかったからアーサーは知らなかったのだろう。相当びっくりしているようだ。更に食いついてきた。

「本当に?後見人って聞いてたけど?」
「よ、養子縁組したの」
「‥‥養子‥‥あぁ、なるほどね。がめついあいつの考えそうなことじゃん」
「アーサー?」
「あいつさ、トリシャにレイノルズに関わるなって言ってたでしょ?つまりそういうことだよ」
「え?」

 アーサーは何かわかった様子だがトリシャは意味がわからない。

「ふーん?あいつ、トリシャの父親なんだ。なぁんだ、じゃあまだ僕にもチャンスあるかな?」
「アーサー?何が?」
「ヘヘッ この話はまた今度ね」
「それよりも。そろそろ進級試験の勉強を始める頃でしょう?準備は大丈夫?わからないところはない?」
「大丈夫だって。心配しないでよ」

 アーサーはご機嫌で帰っていった。その日の晩はクリフォードと共に夕食を取った。

「アーサーがまた来たらしいな」
「ええ、顔見せに。元気にしてました」
「遊んでばかりだな。あいつももっとやることがあるだろうに」
「それは言っておきました」
「君はあいつに甘いぞ。もっと厳しくした方があいつのためだ。レイノルズにも必要以上に関わらない方がいい」

 クリフォードが不機嫌にアーサーの小言を言う。今までと何も変わらない団欒にトリシャはホッとした。この調子ならすぐに日常に戻れるだろう。




 その日は早々にベッドに入った。久しぶりのひとり寝、何も変わらないベッドなのにその冷たさに身震いが出た。たった七日でクリフォードの添い寝に慣れてしまった。大きくて温かい体、トリシャを守るように優しく包み込んで愛してくれた。それがないことが無性に寂しくて恋しい。それを無視して目を閉じたところで物音がした。

 小さく軋んで閉じる扉の音。小さすぎてどこから聞こえたのかわからない。遠くの部屋からかと再び目を閉じたところで寝室の扉が音もなく開いた。するりと入ってきた黒い人影にトリシャの喉が小さく鳴った。薄暗い中でもすぐにわかった。

「あ‥そんな‥‥」
「トリシャ、眠っていたか?」

 寝間着にガウンを纏ったクリフォード。昨日の晩も山荘で見た姿だが今は信じられなかった。ここはトリシャの部屋だ。夜、しかも寝室に入ってきた。初めてのことだ。そこで気がついた。先程聞こえた音はトリシャの部屋の扉の音だった。

 ベッドに腰掛けたクリフォードがトリシャをのぞき込んでくる。その目を逸らせない。

「クリフォード‥さま」
「クリフと呼んでくれ」

 その呼び名はあの山荘だけのことだと思っていた。

 そんな‥なぜ‥

 トリシャの体が震え出した。

 ダメだ、あの関係が続いたらきっともう抑えられなくなる。触れられれば想いが溢れ出す。親子ではいられない。自分の想いがそこまで育ってしまった。これ以上進めば親子なのに、この人にすがって愛を乞いねだってしまうだろう。そうなればクリフォードに迷惑がかかってしまう。

 震えながらトリシャはゆっくりと首を左右に振った。

「クリフォード様‥ダメ‥」

 私に触らないで‥‥触られたらきっと‥‥

「約束を覚えているか?」

 クリフォードの囁く声にトリシャが目を見開いた。

 クリフォードのそばを離れずクリフォードひとりのものになる。
 忘れるはずがない。クリフォードとたくさん約束した。だがあれは雪と共に消えたと思っていた。

 まだ約束は残ってるの?

「拒まないでくれ」
「クリフ‥」
「トリシャ‥ずっと一緒だ。そばにいる」

 のしかかるクリフォードを押し除けられない。トリシャから大粒の涙が溢れ出した。こんなに愛おしくて切ない。嫌がっていないのに拒めるわけがない。

 拒めない、でも受け入れてはいけない。

 トリシャはどうすることもできずただ震えてクリフォードを見上げていた。トリシャの涙を拭い痛みを堪えるようなクリフィードがそっと顔を近づける。そこに甘く優しいキスが降りてきた。それが深く荒々しくなる。心を裏切って体が勝手に流された。スイッチが入る。トリシャの体の奥から一気に熱が溢れだす。あの七日間でトリシャの体はクリフォードに快楽を刻み込まれてしまった。

「ン‥‥ふ‥」
「君は私だけのものだろう?そう約束した」
「でも‥‥あぁん‥」

 それはずっと好きでいていいということ?
 ずっと私だけを愛してくれるの?

 上掛けの中に潜り込んできた体に抱きしめられ夜着を脱がされる。大きな手に直に肌に触れられ体中口づけられ貫かれひどく穿うがたれる。新しい赤い刻印がトリシャの体に刻まれた。その痕をクリフォードがうっとりと撫でた。

「あぁ‥この赤い印のついた白い肌も‥愛らしい声もすべて‥」

 飢えたような目で見下ろすクリフォードが取り憑かれたように腰を振る。うつ伏せにされ背後から貫かれ激しい抽挿でトリシャが震え悶絶する。
 媚薬のないクリフォードの勢いは果てることはない。腰だけを持ち上げられシーツに力なく伏せたトリシャの意識が極限に追い込まれた。抱き合うこともなく獣のようにただ背後から貫かれる。そのどこか狂気じみた行為に、揺さぶられるトリシャの瞳から涙があふれ出した。

「私だけのものだ。誰にも渡さない」

 夢なのか現実なのか。顔が見えないクリフォードに背後から囁かれトリシャの意識が混濁する。底が見えない深い奈落にズルズルと引きずりこまれる。抜け出そうと必死に伸ばした手もクリフォードに捉まれシーツに縫い止められた。秘芯を指で転がされ荒々しくズンと最奥を抉られればトリシャはあっさりと達してしまった。

「ああぁッ イヤぁッ」
「あぁ、中が締まった。イったな?体は嫌がっていない。善がってる」
「もぅ指‥ダメ‥また‥イッちゃッ アアァッ」
「ッ またイったな‥‥あぁ‥締められると腰が蕩けそうだ」
「あああッ‥イッ ヤめッ ァあッ」
「ハァ‥‥やめるものか‥何度でもイけばいい‥何度でもイかせてやる‥‥」

 溢れ出た蜜を纏った指に淫芯ごと秘裂を愛撫され狂った様に膣奥を穿たれ攻められる。黒い欲望を纏うクリフォードに底なしの快楽へと落とされた。いたわりも優しさもない。快楽の中でただ貪られる、それは愛し合うという行為とは程遠い。
 もう喘ぎ声が止まらない。僅かに残った理性で枕をかき寄せ、せめて声を殺そうと顔を埋める。

 なぜこんなことに?
 なぜクリフォード様はこんなことをするの?

 触れられて抱かれてこんなに嬉しくて震えるのに‥‥

 なぜこんなに心が悲しいの?

 何もわからない。愛される歓喜と悲痛と悦楽、肉欲の奈落でトリシャは思考を手放した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

カタブツ上司の溺愛本能

加地アヤメ
恋愛
社内一の美人と噂されながらも、性格は至って地味な二十八歳のOL・珠海。これまで、外国人の父に似た目立つ容姿のせいで、散々な目に遭ってきた彼女にとって、トラブルに直結しやすい恋愛は一番の面倒事。極力関わらず避けまくってきた結果、お付き合いはおろか結婚のけの字も見えないおひとり様生活を送っていた。ところがある日、難攻不落な上司・斎賀に恋をしてしまう。一筋縄ではいかない恋に頭を抱える珠海だけれど、破壊力たっぷりな無自覚アプローチが、クールな堅物イケメンの溺愛本能を刺激して……!? 愛さずにはいられない――甘きゅんオフィス・ラブ!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...