57 / 61
✠ 後日談 ✠
Ever after《トリシャ》②
しおりを挟む「本当は結婚式を挙げたかったろう?」
「式はいりません。再婚ですし」
「実質君の初婚だ。仕事が忙しくてとりあえずここに来たが、改めてきちんと休暇を取ってどこかに出かけよう。君を手に入れたくて先に籍を入れたが君のドレス姿も見たい。式もちゃんと」
「式も旅行もいりません。クリフと結婚できただけで十分幸せなのに‥‥、ここにつれてきてくださってありがとうございます!すごく嬉しい!」
「‥‥また可愛いことを言ってくれる」
クリフォードがトリシャを横抱きに抱き上げたまま山荘に入った。まるで新婚の新居に入るよう。迷わず二階のクリフォードの部屋に入った。カーテンが引かれ薄暗かったがそこは何も変わっていなかった。
クリフォードはトリシャをベッドに腰掛けさせトリシャの前に跪いて靴を脱がせてしまった。部屋は暖かく整えられていたがなぜか人の気配がない。その疑問にクリフォードが答えた。
「グレースは先程帰した」
「え?でも」
「今晩から雪だ。グレースが帰れなくなるからな」
「雪?!本当ですか?!」
「ああ、楽しみだろう?私もだ。君の面倒は私が見る。あの時と同じ、ふたりきりだ」
あの時と比べればチェスターもいない。この夢の国で本当のふたりきりだ。どくんとトリシャの脈が上がった。膝をつくクリフォードに下からのぞき込まれてドキドキが止まらない。クリフォードがトリシャの頬にそっと触れた。
「懐かしいな。たった三月前なのに随分昔のようだ。吹雪の夜、あの時私は君に堕ちたんだ、完膚なきまでに」
「クリフ‥」
「君が私を心配して滅茶苦茶に怒ったろう?あの顔が愛おしかった」
「‥‥‥え?」
なんですと?固まるトリシャにクリフォードはいい笑顔だ。
「君が欲しくてずっと堪えていたんだが。あの時君の怒った顔を見て、理性が粉砕された。あぁもうこれはダメだと思ったよ。無駄なあがきだと、いっそ諦めがついたな」
「は?ええぇ?!そこですか?!」
衝撃の暴露発言。よりによって怒った顔が良かったと言われた。普通ではありえない。自分はどんな顔をしていただろうか?それともクリフォードがおかしい?きっとそうに違いない。トリシャの顔がムッと不機嫌になる。
「もうクリフ!ひどいです!」
「そう、その顔だ。ダメか?あの時君に心配されて嬉しかった。君に愛されているとわかったから」
「え?!なぜ?どうして?!あんなに怒ってたのに?!」
「トリシャは怒った顔でさえ可愛い」
羞恥心のないクリフォードにしれっと恥ずかしいこと言われた。トリシャの頬が勝手に熱くなる。
あの時はひどく怒っていた記憶しかない。しかもクリフォードにキレて殴りかかった。その前は銃を手にしていた。しかも扱いがとてつもなくへなちょこだった。
羞恥で真っ赤になった頬に両手に当てるも一向に冷める様子がない。
「トリシャのあの顔を見れば鈍感な私でも流石にわかった。だが君の想いの強さはわからなかった。あの関係は良くないとわかってはいたが、せめてあの時だけでも親子ではなく君と愛し合いたいと思った。だがその後も手放せず結局無理矢理引きずってしまったな。ずっと前から君に愛されているとわかっていればあそこまで拗れなかったろう。まあそもそも私が悪かったんだが」
「クリフ?」
その時を思い出したようにクリフォードが深いため息を落とした。
「遺言状公開の日に、じいさんの言う通りにしていればよかった。つくづく悔やまれる。年の差を理由に無理だと言い訳をして勝手に臆した。私が正直に話して求婚していれば君は私の手を取ってくれたのだろう?」
頬を染めたトリシャは目を伏せてこくんと頷いた。
確かにそうかもしれない。だがあの時婚約できてもどこかで何かが破綻していただろう。時に苦しくて悲しくて、でも幸せな時間、やはりあの五ヶ月は必要な時間だったとトリシャは思っていた。ダグラスもきっとそこまで計算していただろう。
「本当に‥‥私の姫は愛らしいな」
クリフォードが嬉しそうにトリシャを抱きしめた。きつく結い上げた髪のピンを抜いてそっとベッドに押し倒す。トリシャの艷やかな栗色の髪がシーツに広がった。クリフォードはそれを愛おしげに手ぐしで梳いた。
「別邸ではダメだ。メイドがいては君は自制する。だから早くふたりきりになりたかった」
「え?クリフ?」
「この間は薬が切れたが今回はたくさん準備させた。乱れるトリシャがまた見たい。我慢せず存分に善がってくれ」
「くく薬?!たくさんって‥」
サイトテーブルの引き出しを開けたクリフォードがバラバラと小瓶を取り出した、大量に。トリシャは目を疑った。ヤる気満々なクリフォードにちょっと引いてしまったが嫌ではない。クリフォードに求められればなんだって、際どい事だって応じるだろう。それ位にはクリフォードに堕ちている。何よりも今はふたりきりなのだから。
クリフォードの手が早い。テキパキとトリシャの服を脱がせていく。トリシャもクリフォードの首元のタイを解きながらせめてと大事なことを懇願した。
「雪が積もったら今度こそ雪遊びがしたいです」
「わかっている、気をつけよう。積もるのは明後日だな。それまでは君を好きにしていいだろう?」
0
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる