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✠ 本編 ✠

015 温室② ※

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 だって私は嫌がっていないんだから‥‥

 だが使用人達に見られてはまずい。温室の入り口の鍵はかけていない。コリンズが様子を見に来てもおかしくない。義父義娘という立場もある。やめさせなければ。

 でもどうすればいいかわからない。押さえ込まれたトリシャはされるがままだ。きつく抱き寄せられクチュクチュと口内を荒々しく蹂躙されトリシャから愉悦の涙が溢れだす。夢にまで見たクリフォードとのキス。初めての深いキスなのに、口内を愛撫され擦り付けられた舌が気持ちいい。こんなにも求められているとわかる。酒のほろ苦い味がトリシャの口内に広がった。

 クリフォードはトリシャにこのような欲求を向けたことはなかった。トリシャはそういう対象じゃない。すでにクリフォードには断られている。何かおかしい。

 誰かと勘違いしている?でもこんなふうにクリフォード様に愛さてたらどんなに素敵だろう‥‥

 違う。それは私じゃない。
 愛されているのは別の誰か、おそらく‥


 ジェシカ クリフォードの恋人


 クリフォードの手がトリシャの体を這う。喪服の上から両胸を荒々しく揉まれ更に息が上がる。ただ性急に求められる。

 首元のリボンが解かれ喪服が強引に開かれボタンが飛ぶ。その隙間から大きな手が直に肌に触れてきた。シュミーズの中に侵入し柔肌をまさぐる手にトリシャはギュッと目を閉じ声を必死で堪える。声を聞きつけて誰か来てしまうかもしれない。この状況を誰にも見られてはいけない。

 もう片方の手はスカートをたくし上げ白い太ももに這わされている。官能を誘うように膝から撫で上げられ体がビクビクと反応した。

 優しさはない、少し怖い。だが焦がれる相手に初めて体に触れられその愛撫に蕩けそうになる。だがこれ以上はだめだ。理性をかき集め、せめてと身をよじりその愛撫から逃げようとうつ伏せになった。

「あ‥クリフ‥さま‥ダメ」
「———拒まないでくれ」

 掠れた声に目を瞠る。トリシャの動きが止まった。

 クリフォード様?起きている?それとも?

 その一瞬の隙で背後から抱きしめられた。のしかかられて逃げられない。大きな手が背後から胸を揉みしだきトリシャのむき出しのうなじにしゃぶりつく。太ももを這っていた手が下穿の中に入り尻丘を直にするりと撫でる。背筋に快楽が走りトリシャが身を反らした。

「ハァ‥あぁ‥‥」

 力で再び仰向けにされ、はだけた胸元を強引に更に開かれた。喪服を破く勢いだ。シュミーズが乱暴に押し下げられ胸が晒される。そこでトリシャは我に返った。体を見られたくない。手で覆い隠そうとするもクリフォードに払い除けられる。

「ダメ‥見ちゃッ イヤッ」

 暴れる両手は力で頭上に抑え込まれクリフォードの頭がトリシャの胸元に躊躇いなく落ちる。そして乳房に唇が吸い付いた。チリリと痛みを残しながら何かを探すように弧を描き、最後に尖る頂を口に含む。

 舌で硬くなった先端を転がされキュッと吸われ、トリシャの体がビクビクと反応した。反対の頂も指で擦られる。その愛撫で体に電気が走った。腰に響く甘美さに新しい涙が流れ出す。体の奥から熱いものが更にあふれ出した。

「ハァあぁ‥ヤッ」

 どうしよう‥ダメなのに‥気持ちがいい‥‥

 手荒く貪られ舐められ求められ愛撫される。トリシャの手は開放されたがもう体に力が入らない。抵抗できない。人違いでもいい、もっともっと愛されたい。意識が快楽に流されそうになる。でもこのままだと最後まで抱かれてしまう。

 クリフォードの手が太ももの間に滑り込み、すでにひどく濡れた付け根をするりと撫でる。敏感になったそこに触れられる快感でまたビリビリと体に電気が走った。そこに直に触れられたらお終いだ。間違いなく陥落してしまう。自分は構わない、でもクリフォードに後悔して欲しくない。

 トリシャは震える手で自分の胸を貪るクリフォードの頭を抱きしめた。

 起こしてはいけない、ならば———

「クリ‥フォード様‥お疲れなのですね‥どうかもう‥お休み下さい」

 頭を抱きしめその耳にそっと優しく囁く。その額に唇を寄せた。トリシャからの初めてのキス、その口づけにクリフォードの手が止まった。

「そばに‥おります‥どうかお休み下さい」

 髪に手を入れなだめる様に手櫛でかし撫でればクリフォードの手がトリシャの背中に縋りついてきた。

「———そばに」
「大丈夫です。そばを離れません、ずっと。ですから」
「———そばにいてくれ」

 掠れた声でねだられ甘える子供のように縋りつかれた。そしてのしかかる大きな体から力が抜ける。トリシャの肩口に埋められた顔から規則的な呼吸、安らかな寝息が聞こえた。クリフォードの体の下でトリシャは安堵の息をついた。

 同時にトリシャから大粒の涙が溢れだした。

 クリフォードに愛された。愛される快楽を知ってしまった。これが自分の人生で最初で最後だろう。仕方なかったとはいえそれを自分の手で止めてしまった。

「ふ‥く‥クリフォード‥さま」

 涙が止まらない。切ない思いのままにせめてとクリフォードの寝顔に口づける。これが最後のキスだ。
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