【完結】R18 秘密 〜 恋に落ちた人が義父になりました

ユリーカ

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✠ 後日談 ✠

Ever after《トリシャ》①

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 その日はいつもの穏やかな日だと思っていた。

 クリフォードとトリシャが入籍した日からクリフォードの暴走がひどい。今までも忙しかったが最近は特に親の敵のように仕事を片付けている。そのくせ毎晩自宅には帰ってきていてトリシャとの甘い時間を過ごしている。
 いつぞやのように疲れ果ててひどいことにならないか心配したがクリフォードは元気そのものだ。その体力はどこから湧いて出ているのか。体力が全然ないトリシャは不思議で仕方がない。

 朝クリフォードを送り出しトリシャがロージア伯爵領の帳簿を見ながら税収を計算していたところで何故かクリフォードが帰ってきた。

「クリフ?忘れ物ですか?」
「全部終わった。さあ、出かけるよ」
「出かける?」
「急ぎの仕事はないだろう?」
「ないですが‥‥え?え?」

 そういったそばから帳簿を取り上げられる。そしてコートを着せられ抱き上げられて馬車に乗せられた。何故かトリシャの荷造りもされていた。荷を積み終えチェスターを抱いたコリンズが笑顔で送り出す中、クリフォードも馬車に乗り込んで早々にカーテンを閉じてしまった。馬車が緩やかに走り出す。

「向こう二週間の仕事が全部片付いた。これから休暇だ」
「え?休暇?出かけるのですか?どちらに?」
「それは秘密だ」
「チェスターを置いてきてしまいました!」
「君を独り占めしたい。今回はふたりきりだ。チェスターはコリンズに任せておけ」

 チェスターはコリンズともすっかり仲良くなった。クリフォードのせいで動けない日のトリシャの代わりにコリンズがチェスターの散歩を担っていた。チェスターの世話は問題ないだろう。

 急展開に驚くトリシャの肩をクリフォードが抱き寄せた。トリシャの肩口に顔を埋めうなじをつつと舐めあげる。

「きゃぁ!クリフ!」
「ダメか?トリシャのこの香りに癒やされるんだ。君がいたところは残り香ですぐわかる」
「の‥残り香ですか?」
「君が私の書斎にこっそり入った日も書斎の外でジムとの話を立ち聞きした日もすぐにわかった」
「‥‥‥‥え?」
「私に隠れて悪いことはできない。何も証拠を残さなかったつもりだったろう?猟犬ハウンドの私には残された香りですぐわかった。君の香り限定で鼻が利くんだ」

 知らなかった。痕跡は残していないと思っていたがまさかの残り香、そんなこと気にもしていなかった。唖然とする中でクリフォードの爆弾発言は続いている。

「到着まで時間がかかる。それまで君を可愛がろう」
「え?」
「最近夜の時間もあまり取れなかった。これから二週間存分に一緒にいられる。たくさん愛し合おう」
「え?!ぅぇえ?!毎晩あれだけ‥‥あれで短めですか?!」
「物足りなかったろう?私も満足していない」

 真顔で真面目に答える夫をトリシャはまじまじと見上げた。冗談を言っているわけではないらしい。結婚してからはそれまで以上にトリシャはクリフォードに毎晩さんざん愛でられていた。

「え?!そんなことありません!ダダダメですよ!馬車の中でなんて!!」
「流石に最後まではしない。君を可愛がるだけだ」
「もう!最近ただれ過ぎです!もっと慎みを持って」
「新婚ではこの程度当たり前だ」

 そうなのだろうか?初婚のダグラスとは祖父と孫の様な関係、そういった行為もなかった。クリフォードはどこでもトリシャを愛そうとする。恥ずかしくてついダメダメ言ってしまっていたが、ならば一般的にはこの行為も問題ない?

 はたとトリシャの思考が止まったところで笑顔のクリフォードに馬車の壁際へ追い込まれた。

「最後までしない、善くするだけだ。服は脱がなくていいから」
「あ!ああ当たり前です!!やっぱり外ではダメですって!」
「外じゃない、馬車だ。薄暗いし動く寝室みたいなものだろう?」
「全然違います!あッ ダメッ イヤァ!」

 馬車の中では狭くて逃げることもできない。閉じ込められ押し倒されればあっという間に快楽に流された。深く口づけられれば手は勝手にクリフォードの首に回っている。理性はダメだと思うも体は嫌がっていない。クリフォードもそうとわかってやっているからタチが悪い。

「着いたようだな。荷を下ろしてこよう」

 クリフォードが機嫌よく外に出ていった。どれくらい移動したのかわからないくらいドロドロにされて馬車が停まったことにも気がつかなかった。荒い息のトリシャは我に返り慌ててはだけた胸元とスカートを直した。
 服装を直しても顔が火がついたように真っ赤だ。馬車から出たくない。いかにもシてましたという、こんな顔を誰かに見られたくない。

「目を瞑って」
「え?」
「いいから。この可愛い顔を誰にも見られたくないだろう?私も見せたくない」

 そこまでわかっているならこんなことしないで欲しい。そう思うも言われるままに目を閉じれば、トリシャのコートのフードを深く被せクリフォードが横抱きのまま馬車を降りた。馬車の扉が閉まる音。馬車が走り出した。馬車は二台いたようだ。

「もう目を開けていいぞ」
「‥‥‥‥ここは」

 そろりと目を開ければ目の前にはあの山荘があった。思い出の夢の国。見えたものが信じられない。

「約束したろう?また来ようと」
「クリフ!」

 あの約束を憶えていてくれた。嬉しくて歓声と共にクリフォードの首に縋りついた。ここにはたくさんの思い出がある。愛おしい幸せな日々だ。

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