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第一章: ベヒーモス
第三話: 君の名はベヒーモス
しおりを挟む「ええ?いただけるんですか??」
「うちは里親制度ですので。」
「え?ここペットショップですよね?お金はいいんですか?」
あれそうだったっけ?と青年がぼそりと言った。なんだかちょっとおかしい。
これはひょっとしてペット差し上げます詐欺?後からお金請求されるとか?
あ!ここでキャットフードとか年間契約するのかな?でも消耗品ならどこで買ってもいいし。それなら全然お得!!
環は勝手に自己解決した。そうなれば俄然やる気だ。
「わかりました!年間契約でいいですか?キャットフードとおしっこシートでお願いします!」
青年がうん?と引きつった笑顔になる。釣られて環も首を傾げた。おや、そういうことじゃない?複数年契約とか?
「あれ?ひょっとして無自覚でここに入ったのかな?これ程の能力でまだ気が付かない?」
「はい?」
「これは初めてだな。まあ仕方ないか。」
猫ごと環の手を取って青年がつぶやいた。手に触れられて環の顔がボッと赤くなった。
「うーん、じゃあこれの正体にも気がついていないのかな?」
「しょ、正体?この猫ちゃんの?」
さらに手を握られて環は狼狽える。そうして青年は環の手を持ちあげて、目の前に愛らしい仔猫を捧げてみせた。
「こいつはね、ベヒーモスっていいます。」
環は商店街の喫茶店に駆け込んでいた。ちょっとさびれた‥もといレトロな感じの店だ。客も少ない。環は窓際の席についてホットコーヒーを頼み息をついた。
環はゲーマーだ。見た目は腐ではない。特にファンタジーものを好む。狩るやつとか召喚するやつとか。だからモンスターに詳しい。故にベヒーモスも知っている。普通の人間であれば知らないであろうそのモンスター名を。
環はスマホで検索する。出てきた画像は巨大な竜だったり牛やら象の姿だったりした。
ベヒーモス。別名をバハムード。こちらの名前の方がメジャーかもしれない。大好きなあの最後のファンタジーシリーズの常連でメチャ強な竜王だ。そういえば零式というのもいる。狩るやつだと牛みたいだったか。うん、あれもよかった。
ほうとため息をつく。環の思考が逸れたところでレトロなコーヒーが運ばれてきた。
いかん、トリップしてた。で?あの仔猫たんがベヒーモス?あのお兄さん、からかっているのか?
仔猫がベヒーモスだと言われて、少し考えさせてください!と言ってペットショップを飛び出してしまった。
あれはお断りだったのだろうか。こんな新入社員上がりの環では金にならんと言われた?ならもっと言いようがあるだろうに、言うに事欠いてベヒーモスって。
環はふうと息を吐いた。
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