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Ⅳ マドウシ、俺。
041: 確率は?
しおりを挟むドンッという爆音と眩い光を放ちながらそれは俺のステッキから空高く打ち上がった。音速衝撃波で俺とるぅの前髪がオールバックで吹き飛んだ。花火と呼ぶにはそれは大き過ぎた、そしてスピードも早かった。波動砲発射の直線軌道を残しながらそれは雲をギュンとぶち抜いて空の彼方に消えた。圧力波で雲が晴れて青く澄んだ空が見える。
わー、空がキレイダナー
そこでようやく俺は理解した。
あー、そういや俺の魔導の発動はワンテンポ遅いんだったな。この間もそうだった。そもそも呪い発動は魔力のデバフだ、不発じゃないし?俺ってば不発で喜んじゃって、何勘違いしてんだよー
俺の二回目の初期魔導ファイアもやはり大量破壊兵器だった。もうビギナーズラックでも言い訳できない。まあ運よく空に打ち上がってくれてよかった。空気がなくなればあれも自然消滅するだろう。マオウトンネルはもういらないし。気のせいかこの間より火の球がデカかったような?き、気のせいだよな?
まぁ譲って発動は良しとしても?あんなにスケジと魔導制御訓練したのに?ちっとも変わってないのは俺どういうことだ?
初めて俺の初級魔導ファイアを目の当たりにしたるぅが目を見開いて絶句している。ポメとスケさんズの静かなため息が聞こえた。わぁぁッと俺が頭を抱えて絶叫した。
「なんで!あんなに確率低いのに!なんで発動すんだよ!!」
『確率論だけで言うならありえるわ』
「でも!」
『確かに確率は1/6、でも貴方の場合は当たるか当たらないか、確率は1/2じゃない?貴方の運は特にいいから』
「俺!運全然よくない!」
そう!俺の運は散々だ!記憶を失って最初に目覚めた場所は人族の、魔王を敵視する英雄たちのそば、一歩間違えばレベル1で殲滅されてた。その後あいつらに執着されて逃亡の日々、そして今に至っている。女神様に出会えた件は超ラッキーだったが封印された魔王の件は超アンラッキーだろう。
『確かにひどいことになっているけど最悪の事態にはなってないわ。これは貴方の強運のおかげよ。それに今までのことは運が悪いんじゃないし』
「じゃあなんですか?」
『神様の嫌がらせかしら?』
神様?女神様じゃなくて?
鏡の中の女神様はそういって皮肉まじりに微笑んでいる。一方で今まで沈黙していた魔女っ子がフルフルと震え出した。ちょっと涙声だ。慌てた風のポメとスケさんたちがわらわらとるぅをなだめている。お前らちょっと過保護じゃね?
「なんということじゃ‥わらわの渾身の呪いが‥アーティファクトが破られるとは‥」
『姫サマ、ソンナコトナイヨ、姫サマスゴイヨ。ヒドイノハ陛下』
おいおいスケジよ、俺のせいかー?
スケジがなぐさめるもいつも強気なるぅがポメに抱きついてぐすぐす言っている。泣きそうだ。スケイチ、スケゾウに至っては俺が悪いと言わんばかりに俺をジト見している。幼女が泣くのは困る!俺の方も慌ててしまった。
「い、いやいや、破られたかどうかはわからんだろ!確率論だって!もう一回試してみたらきっと呪い発動するって!」
『試してみる?確率は1/2よ?』
そこで俺も青ざめてしまった。
ヤバい、確率50%なら‥多分‥いやきっと!大量破壊兵器が発動しそうな気がする。
泣きそうだと思った魔女っ子が涙を拭いぐんと顔を上げた。
「わらわがヌルかった!もっと!もっと呪いを込めてデバフ発動率を上げるのじゃ!わらわはアークリッチで大いなる魔女の娘!決して負けん!ルキに勝ってみせるぞ!」
「お前一体何と戦ってるんだよ?!」
魔女っ子は復活も早かった。
そこで魔女っ子がまた別のため息をついた。
「じゃがそうなると材料が足らんな。どうしたものか」
「材料?」
「呪いの秘薬が必要なんじゃが材料の薬草がない」
「薬草なら群生地を知ってるぞ?どんな薬草だ?」
「レアな薬草じゃ。マンドラゴラはそう簡単に手に入らんのじゃ」
‥‥‥‥マン?どっかで聞いたことあるな。ピンとこない俺にポメがヒントをくれた。
『陛下、アレです』
「アレ?」
『活きの良い』
「活きが良い?薬草?‥‥ってムンクか!」
やたら活きのいい人面根っこの薬草、ねずみ算式に増えていた。色々あってすっかり忘れていたがあれから何日経っただろうか。単純計算するととんでもないことになっていそうだが。あの温泉街がどうなったか今更気になってきた。
「マンドラゴラならアテがある。取りに行くか」
「本当か?!絶対欲しい!アレがあればこのステッキをもっとパワーアップできるぞよ!」
マジか。これだけ禍々しいのにまだやる気か?!
このドス黒いステッキの更なるパワーアップ。ステッキからケケケッと甲高い笑い声が聞こえてきそうだ。俺としては普通のステッキが欲しいんだが。
「そうなれば呪術の再構築とアーティファクトの強化改造じゃ!待ってろよルキ!わらわは負けておらぬ!この屈辱を乗り越えてお前を必ず倒す!」
「だからお前は何と戦ってるんだよ?!」
スケさんたちと共にタンカを切る涙目魔女っ子アークリッチ。まあ落ち込まれるよりはマシなんだが。
「じゃあ久しぶりにあの街に戻ってみるか」
こうして俺達はここを離れることになった。
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