39 / 114
Ⅲ ハンター、俺。
036: ロケットサーブ?いやいや、火の玉サーブです。
しおりを挟む「るぅ、例の煙出せるか?」
「煙?出せるぞ?」
「じゃあ頼む。俺たちを隠すんだ」
バフンと大量の煙に辺りが包まれる。目眩しの煙だが山頂近いここだと低い雲海に呑まれたようだ。これで英雄軍に俺たちの姿は見えなくなったが俺の視界も消えた。ポメの結界で煙から守られる中、俺は目を閉じて気配を探ればゴーレムの魔石の魔力を感じられた。目を開ければ青い光があちこちに見えた。街の方角に動いている。ゴーレムの魔石が放つ魔力の光だろう。これを標的にすればいい。
ラケット型スコップを手に岩山から岩石をひょいと持ち上げた。まずはサッカーボール大だ。崖の淵に立ち眼下の比較的近めのゴーレムに狙いを定める。こちらの方が標高が高い。風もなく条件も悪くない。懸念は俺のコントロール。テニスボールより球はデカいがタイミングが合うかどうか。俺は意識を集中させる。
俺は左手で岩を空高くトスアップ、体をしならせ右手のラケットを振り抜いた。打ち返す相手もいないから威力優先のフラットサーブだ。
ガンッという音と共にラケットが岩にミート、懐かしい手応えだ。弾丸と化した岩が眼下のゴーレムの頭にヒットした。ゴーレムでも壊せなかった岩の弾丸がゴーレムの頭を突き抜けた。音速のロケットサーブだ!ゴーレムがぐらりと体を揺らしガラガラと小さな岩となって崩れた。魔石を失えばゴーレムは岩に戻るということだ。
ゴーレムの頭の魔石を偶然打ち抜けたようだ。試し撃ち、当たるだけでもいいと思ったがこれは運が良かった。
「やった!当たった!」
『本当に?すごいわね!』
女神様が嬉しそうに俺の特技を褒めてくれた。俺を褒めてくれたのは地味に初めてじゃないだろうか?
マジか!もう嬉しくてデレちゃうじゃないか!いやいやもっとデレたい!もっと褒めて褒めて!
『さすがは我が主!お見事でございます!』
「おぉすごいぞ!なんじゃあれは!」
「おう、ありがとな」
「もっと見たい!もっと撃つのじゃ!」
こっちにも褒められた。そして更にせがまれた。目を爛々とさせたポメとるぅが俺をキラキラと見ている。さすが兄妹、同じ目をする。そして俺はこの過剰に期待に満ちた目は苦手だ。こっちには苦笑いで応じる。
頭の魔石に当たればゴーレムを壊せるとわかったが、さっきの球だと小さすぎて狙いが際どい。魔石の光を目印に狙っているが標的も動いている。ちょっとずれたらおしまいだ。運頼みはリスクがある。
一発で確実に仕留める、それが俺の信条だ。
ならもっと球を大きくしてみるか?
俺の身長大の岩をひょいと持ち上げた。重さを感じられるが苦はない。女神様の怪力すげぇな。
この岩ならゴーレムの頭より少し小さいくらいか。これなら魔石を外さないだろう。だがこれが地面に落ちたらクレーターが出来て自然破壊必須だ。きれいな森に穴を開けたくない。この岩をゴーレムを破壊できるギリギリの強度にすればヒットと同時に弾丸も粉砕するんじゃないか?
衝撃で粉砕、ならば———
手に持った岩に魔力を込める。微かな火のイメージ、それだけで魔力錬成もせずワンテンポ遅れて岩が炎に包まれた。俺に火の耐性があるから熱さはない。岩の種類はわからないが熱で弱くなるんじゃないかという発想だ。
スコップの柄を長くして岩を放り撃ち抜くフラットサーブ、ガィンッとちょっと痛々しい音と共に岩が音速で飛んだ。岩は狙い通りゴーレムの後頭部に激突、同時に岩とゴーレムどちらもバラバラに粉砕した。さっきより破壊力デカくなったのは弾丸が大きくなったせいか。
「よっしゃ!狙い通り!名付けて必殺!火の玉サーブだ!」
まんまじゃないかって?ツっこむなよ!
あとはこれを連射すればいい。スコップが心配だったが女神様が丈夫さが取り柄と言っていた。柄を少し太くしたし?まあ大丈夫だろう。
麓の森から風に乗って微かに声が聞こえてきている。歓喜の声か驚愕の声か、勇者の軍だろう。ゴーレムめがけて雲海を突き抜けてメティオストライク級の火岩が降ってくるわけで、訳わからなかったらパニックものだろうに。早く逃げないと流れ弾に当たっても知らないからなー
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

月の魔女と呼ばれるまで
空流眞壱
ファンタジー
ある開拓村で生まれた女の子が辿る特殊な物語。
使い古されている異世界物です。
初投稿に付き、誤字が多いかも知れません。読みづらいかも知れませんが、追々是正します。
追記)作者の気分で、更新が早くなったり、若干遅かったりします。定時更新ではありません、たまに修正の文字を入れずに直していることもありますので、悪しからず。
追記2)タグいれてみました。変化があるのか分かりません
2020/8/31に完結しました。
2020/11/12に第二部投稿始めました。https://www.alphapolis.co.jp/novel/797490980/566417553
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる