【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

文字の大きさ
上 下
37 / 114
Ⅲ ハンター、俺。

034: スケさんズ!参上!

しおりを挟む



 大剣を持ったスケルトン、名をスケイチ。190センチを超える体躯を利用し大剣を振り回す様子は地獄の騎士のようだ。
 スケイチが勇者である王子にその剣を振りおろした。ガキンと剣がぶつかり合う音がする。お互い強力な技を繰り出しているのだが、あのゴリラのような王子が押されている。この様子だとスケイチに分がありそうだ。予想外の展開に俺も驚いていたが。

「スケイチは元勇者じゃ。勇者歴代最強と呼ばれた男、今の勇者など敵ではないぞ!武器もわらわ特製ダークエンチャントの大剣じゃ!」

 わあ!勇者の白骨でスケルトン作って味方にしたんかい!しかも歴代最強?それってズルくね?勇者の骨って‥本当にスケルトンヒーローじゃんか。


 細身の剣を持ったスケルトン、名をスケジ。魔法を駆使する魔法剣士だ。聖女のホーリーブレスに耐えているあたり聖魔力値も強い。るぅの魔力もアシストしているのだろう。スケジの剣を聖女が結界で止めている。力が拮抗している、魔力は互角なのだろう。不死者でありながら聖女と互角なスケジの魔力はどんだけだ?
 聖女の放ったホーリーボールにスケジはファイアボールを出して相殺している。魔法剣士ならではの戦い方だ。そしてスケジには物理攻撃がある。隙をついて聖女に斬りかかっていた。不死者に強いはずの聖女がやりにくそうにしている。スケジは聖女に相性がいい。

「スケジもかつて勇者と共に戦った聖剣士の骨じゃ。元勇者パーティはいい骨を持っておる。骨太最高じゃ!」

 それ、スケルトン的な褒め言葉?

 今度は勇者パーティの剣士の骨、スケルトンヒーローの名に恥じていないな。なるほど、勇者にはスケイチ、聖女にはスケジ、役割分担されている。ならば残りのスケルトンは?

 両手に短剣二本を持ったスケルトン、名を———

「スケゾウは伝説の暗殺者アサシンじゃ。こいつも」
「いい骨だったんだな。三番目はサンかゾウ、名前の予想はついた」

 スケゾウは勇者聖女の背後にいた兵士たちを翻弄している。トリッキーな動きで相手の剣をかわし兵士の剣を飛ばしまくっている。とにかく素早く双剣のキレもいい。勇者聖女に比べたら一般兵士など雑魚だろう。何やら飛び道具を飛ばして爆発音までしている。おかげで兵士たちは大混乱だ。

 いやね、みんなすごいんだよ?元勇者に勇者の仲間の聖剣士、伝説の暗殺者。スケルトンとは思えないほどの活躍ぶり。なのにさぁ。

「残念だろ。なんで名前がスケなんだよ?もうちょっといい名前をつけてやればよかったんじゃね?」
「そうか?わかりやすいじゃろ?本人たちも気に入っておるぞ?」
「どうだかなぁ」

 スケルトン三人でスケさんズ。オヤジのダジャレか。
 まあこれでスケルトンたちの強さは大体わかったしちょうどよかった。

「もういいだろう、そろそろ撤収するか」
「なぬ?英雄たちをもっとボコボコにせんでいいいのか?!ここからわらわの魔力をスケさんズに注入してじゃな」

 魔女っ子、血の気が多い。手も早いし女神様の血は争えないということか?俺はため息をついた。

「今はまだな。人族が魔族を圧倒しているというわけでもない。無意味な殺戮は俺の本意じゃない」

 この世界のバランスはまだそこまで追い込まれてはいない。今、人族も魔族も成長期だ。今の魔王の役目は軌道修正、それぞれが正しく成長するよう支柱を添えて育成、軌道を外れた枝を剪定する。正しく成長したところで進化の目を摘んで熟成期へと導く。一強を育てるのは簡単、調和の世界は難しいのだ。それでも———

「俺は女神様が整地して緑豊かにした大地を守らなきゃならないからな」

 俺は腰のスコップを手に取りふぅと息をついた。

 薬草クエストで俺が汗をかいてこなした農作業を思い出した。同じようにあの女神様が汗を流し泥まみれでこのスコップで大地を綺麗にしたのかと思えば笑みがこぼれてしまった。

 その時———

 地面を貫く振動が響いた。それも複数。その数が増えていく。強弱の地響きに森にいた鳥たちが一斉に逃げ惑い飛び立っていく。獣たちの咆哮も聞こえた。

「なんだ?!」
『魔力の波動を感じます』
「なんだと?」

 ズンッズンッと歩くような振動、森の狭間から何か巨大なものが動く様子が見えた。あれは?

「何だあれ?!」
『ゴーレムが再起動したわ』
「ゴーレム?ゴーレムって?あの石像?」

 女神様のセリフに俺は息を呑んだ。そこらに散っている石像がいきなり動き出していた。スケさんズと戦っていた英雄軍も愕然としている。

「えええ?なんで?」
『貴方今、スコップを持って何か考えたでしょ?ひょっとしてここの緑のことを考えた?』
「あー、考えましたね」
『その魔力でゴーレムたちが目覚めたのよ』

 たったそれだけ?そういや女神様はゴーレムたちの魔力を絶ったと言っていたけど?

『その‥スコップ?はゴーレムの 魔力伝達器コントローラーでもあったから。まあ仕方ないわね』
「ス?スコップにそんな機能が?」
『言ってなかったかしら?』
「聞いてませんって!!」

 俺ってばまたいらん地雷踏んだ?墓穴再び?
 なんで!最重要事項なところの意思疎通ができてないんだ!

 俺は今女神様と繋がっている。つまり俺がこのスコップ経由でゴーレムたちに魔力を送ったということか?こんなスコップにそんな機能があるなんて俺が思いつくわけもない。電源回復したゴーレムたちは当然起動したわけで?

 スコップリモコン無くした→ゴーレム破壊できずに放置。
 そういうことか。こんだけの数のゴーレム、個別撃破面倒くさいですもんね。

 山間に散っていたゴーレムたちが動き出している。移動に邪魔だったのか木が薙ぎ倒されている。地響きがここら一体に響き渡っていた。

「女神様!止め方!緊急停止!」
『無理よ。緊急停止からの再起動、おそらく私のプログラムはクリアされたからBIOSのセーフティモードで動いているのよ』
「魔力切断は?!」
『結構な魔力を流したわね。ここで切断しても内蔵バッテリーで動き続けるわ』
「ぐぅぅッ俺ってばなんて無駄なことを!セーフティモードって?」
『暴走防止用ね。プログラムエラーや異常の場合は格納庫に戻れ』
「格納庫?」

 格納庫って?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天
ファンタジー
山年咲見《やまとしさきみ》は魔王ディンプルディの復活と共にアパートごと異世界へと飛ばされた。 契約によって三つの願いを叶えてもらうため、ディンプルディと共に不労所得の夢を掲げ冒険の日々を過ごす。

月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱
ファンタジー
ある開拓村で生まれた女の子が辿る特殊な物語。 使い古されている異世界物です。 初投稿に付き、誤字が多いかも知れません。読みづらいかも知れませんが、追々是正します。 追記)作者の気分で、更新が早くなったり、若干遅かったりします。定時更新ではありません、たまに修正の文字を入れずに直していることもありますので、悪しからず。 追記2)タグいれてみました。変化があるのか分かりません 2020/8/31に完結しました。 2020/11/12に第二部投稿始めました。https://www.alphapolis.co.jp/novel/797490980/566417553

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...