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Ⅲ ハンター、俺。
034: スケさんズ!参上!
しおりを挟む大剣を持ったスケルトン、名をスケイチ。190センチを超える体躯を利用し大剣を振り回す様子は地獄の騎士のようだ。
スケイチが勇者である王子にその剣を振りおろした。ガキンと剣がぶつかり合う音がする。お互い強力な技を繰り出しているのだが、あのゴリラのような王子が押されている。この様子だとスケイチに分がありそうだ。予想外の展開に俺も驚いていたが。
「スケイチは元勇者じゃ。勇者歴代最強と呼ばれた男、今の勇者など敵ではないぞ!武器もわらわ特製ダークエンチャントの大剣じゃ!」
わあ!勇者の白骨でスケルトン作って味方にしたんかい!しかも歴代最強?それってズルくね?勇者の骨って‥本当にスケルトンヒーローじゃんか。
細身の剣を持ったスケルトン、名をスケジ。魔法を駆使する魔法剣士だ。聖女のホーリーブレスに耐えているあたり聖魔力値も強い。るぅの魔力もアシストしているのだろう。スケジの剣を聖女が結界で止めている。力が拮抗している、魔力は互角なのだろう。不死者でありながら聖女と互角なスケジの魔力はどんだけだ?
聖女の放ったホーリーボールにスケジはファイアボールを出して相殺している。魔法剣士ならではの戦い方だ。そしてスケジには物理攻撃がある。隙をついて聖女に斬りかかっていた。不死者に強いはずの聖女がやりにくそうにしている。スケジは聖女に相性がいい。
「スケジもかつて勇者と共に戦った聖剣士の骨じゃ。元勇者パーティはいい骨を持っておる。骨太最高じゃ!」
それ、スケルトン的な褒め言葉?
今度は勇者パーティの剣士の骨、スケルトンヒーローの名に恥じていないな。なるほど、勇者にはスケイチ、聖女にはスケジ、役割分担されている。ならば残りのスケルトンは?
両手に短剣二本を持ったスケルトン、名を———
「スケゾウは伝説の暗殺者じゃ。こいつも」
「いい骨だったんだな。三番目はサンかゾウ、名前の予想はついた」
スケゾウは勇者聖女の背後にいた兵士たちを翻弄している。トリッキーな動きで相手の剣をかわし兵士の剣を飛ばしまくっている。とにかく素早く双剣のキレもいい。勇者聖女に比べたら一般兵士など雑魚だろう。何やら飛び道具を飛ばして爆発音までしている。おかげで兵士たちは大混乱だ。
いやね、みんなすごいんだよ?元勇者に勇者の仲間の聖剣士、伝説の暗殺者。スケルトンとは思えないほどの活躍ぶり。なのにさぁ。
「残念だろ。なんで名前がスケなんだよ?もうちょっといい名前をつけてやればよかったんじゃね?」
「そうか?わかりやすいじゃろ?本人たちも気に入っておるぞ?」
「どうだかなぁ」
スケルトン三人でスケさんズ。オヤジのダジャレか。
まあこれでスケルトンたちの強さは大体わかったしちょうどよかった。
「もういいだろう、そろそろ撤収するか」
「なぬ?英雄たちをもっとボコボコにせんでいいいのか?!ここからわらわの魔力をスケさんズに注入してじゃな」
魔女っ子、血の気が多い。手も早いし女神様の血は争えないということか?俺はため息をついた。
「今はまだな。人族が魔族を圧倒しているというわけでもない。無意味な殺戮は俺の本意じゃない」
この世界のバランスはまだそこまで追い込まれてはいない。今、人族も魔族も成長期だ。今の魔王の役目は軌道修正、それぞれが正しく成長するよう支柱を添えて育成、軌道を外れた枝を剪定する。正しく成長したところで進化の目を摘んで熟成期へと導く。一強を育てるのは簡単、調和の世界は難しいのだ。それでも———
「俺は女神様が整地して緑豊かにした大地を守らなきゃならないからな」
俺は腰のスコップを手に取りふぅと息をついた。
薬草クエストで俺が汗をかいてこなした農作業を思い出した。同じようにあの女神様が汗を流し泥まみれでこのスコップで大地を綺麗にしたのかと思えば笑みがこぼれてしまった。
その時———
地面を貫く振動が響いた。それも複数。その数が増えていく。強弱の地響きに森にいた鳥たちが一斉に逃げ惑い飛び立っていく。獣たちの咆哮も聞こえた。
「なんだ?!」
『魔力の波動を感じます』
「なんだと?」
ズンッズンッと歩くような振動、森の狭間から何か巨大なものが動く様子が見えた。あれは?
「何だあれ?!」
『ゴーレムが再起動したわ』
「ゴーレム?ゴーレムって?あの石像?」
女神様のセリフに俺は息を呑んだ。そこらに散っている石像がいきなり動き出していた。スケさんズと戦っていた英雄軍も愕然としている。
「えええ?なんで?」
『貴方今、スコップを持って何か考えたでしょ?ひょっとしてここの緑のことを考えた?』
「あー、考えましたね」
『その魔力でゴーレムたちが目覚めたのよ』
たったそれだけ?そういや女神様はゴーレムたちの魔力を絶ったと言っていたけど?
『その‥スコップ?はゴーレムの 魔力伝達器でもあったから。まあ仕方ないわね』
「ス?スコップにそんな機能が?」
『言ってなかったかしら?』
「聞いてませんって!!」
俺ってばまたいらん地雷踏んだ?墓穴再び?
なんで!最重要事項なところの意思疎通ができてないんだ!
俺は今女神様と繋がっている。つまり俺がこのスコップ経由でゴーレムたちに魔力を送ったということか?こんなスコップにそんな機能があるなんて俺が思いつくわけもない。電源回復したゴーレムたちは当然起動したわけで?
スコップ無くした→ゴーレム破壊できずに放置。
そういうことか。こんだけの数のゴーレム、個別撃破面倒くさいですもんね。
山間に散っていたゴーレムたちが動き出している。移動に邪魔だったのか木が薙ぎ倒されている。地響きがここら一体に響き渡っていた。
「女神様!止め方!緊急停止!」
『無理よ。緊急停止からの再起動、おそらく私のプログラムはクリアされたからBIOSのセーフティモードで動いているのよ』
「魔力切断は?!」
『結構な魔力を流したわね。ここで切断しても内蔵バッテリーで動き続けるわ』
「ぐぅぅッ俺ってばなんて無駄なことを!セーフティモードって?」
『暴走防止用ね。プログラムエラーや異常の場合は格納庫に戻れ』
「格納庫?」
格納庫って?
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