【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

文字の大きさ
上 下
24 / 114
Ⅱ メガミ、俺。

022: 今度は宝探しです。

しおりを挟む



 しおしおとため息をついた俺は女神様にちょっとだけ恨み言を吐いた。

「こんなヤバいやつだって知りませんでした。もうちょっと詳しく教えてくれてもよかったのに」
『過負荷は個人差もあるし一度体験しないとわからないものよ。知っていても過負荷を回避できなかっただろうし。嫌ならレベルを上げなさい。ある程度あげればその肉体も耐えられるでしょう』
「でもこの間みたいに事故で魔王様がお出ましになることもあるわけで」
『あり得るわね。嫌なら強化を急ぎなさい』

 当然嫌だって!大体その強化=レベリングの過程で魔王がお出ましになるかもしれないじゃないか!俺が怪我したら魔王の逆鱗な訳で?だいたいあの魔王も封じられたとはいえかつての俺なんだよな?あんな根暗が俺?俺何があった?俺である魔王が暴れた結果俺が死にそうな拷問に遭うって酷くね?

「まあ急ぐには急ぎますが‥‥女神様で魔王を阻止できませんか?」
『無理ね。この間は私も出てブン殴るところをグッと堪えたのよ?私も出ていたらこの体は本当に壊れていたわ。死なないけどね』
「‥‥‥そういう怖い話はやめてください」

 レベル4852の魔王にさらにレベル5128の女神様降臨とか!
 俺、生きながら壊れる?死ぬ!切実にやめて!体が大丈夫でも俺のメンタルが死んじゃうから!!

 俺の嫁、ホントケンカっ早いなぁ。手が早い強気なレディスヤンキー?女王様?でもそこがまたグッとくるというかキュンキュン?ドキドキ止まんないよ~

 もうムチとか持ってくれないかな?仮面に黒いボンテージにピンヒール履いて?女王様イイネ!女神様は黒も似合う!そんでもって俺を縛って愚かな家畜にお仕置きよ!と称して色々と———

『えーと!今後のことだけど!』

 にへらとする俺の思考を遮るように女神様が鏡越しにテーブルをバンバン叩いている。なぜにお怒り?そういや俺の思考は女神様に筒抜けだった。

『少し強くなったことで私の初期スキルが発動できるようになったわ』
「おお!女神様の初期スキル?!なんですそれ?」

 食いつきのいい俺に女神様はことさら冷ややかだ。

『それはすぐにわかるわ。そのスキルが解放されたから私のものを装備できるし』
「女神様の?装備?武器?」
『昔使っていたものがここらに残っていたはずだから。取りに行きましょう』

 女神様の専用武器!絶対欲しい!
 それ、すっげぇ武器なんじゃね?

 女神様の武器‥‥剣かな?それとも弓?杖とか?ソレイイネ!魔法少女みたいなステッキだったら俺悶え死ねるぞ!鏡越しに二人で魔法少女のポーズ作って合体技出したり?変身シーンは嬉し恥ずかしもじもじ生着替えで衣装チェンジ?うわぁエロ可愛い!絶対萌える!はなぢ吹きそうだ!金はある!こうなればオーダーメイドで完璧な魔法少女の衣装を———

『そういうのやらないからね!!』
「ぐふッ」

 女神様の強烈なエアデコピンが俺の眉間に炸裂した。




 ゲフンゲフン、というわけで。

 女神様専用武器を取りに俺たちは旅立つことになった。女神様にあんまり怒られないようにしないと俺の眉間がそろそろ危ないな。まあ俺死なないけど。

 温泉あり宿よし本屋あり。居心地が良くて思いの外長く滞在してしまった。でも英雄避けにはそろそろ潮時だろう。

 出発の日の朝、あのSランクパーティのお姉さんたちが見送りに来てくれた。もう会えないかと思っていたから俺にとってはサプライズだ。

「昨日の夜にやっと帰って来れたのに。ルキアスちゃんもういっちゃうの?一緒に遊びたかったよぉ」
「せっかくもっと仲良くなれそうだったのに」
「すみません」
「まあ仕方ないわね」
「私たちはここら辺で仕事を受けてる、また会えるだろう」
「ありがとうございます」
「遊びに来てよ!絶対だぞ?今度温泉プール行こうね!」
「ルキアスちゃんならパーティ参加いつでも大歓迎だからね。ポメちゃんも!元気でね!」

 正体は魔狼とバレてはいてもアイドル小型犬は相変わらずお姉さん方に人気だ。代わるがわるでなでなでぎゅーされている。あーポメいいなぁ。

 そこで可愛らしい盗賊のお姉さんが俺に詰め寄ってきた。目がキラキラらんらんとしているのはなぜ?

「私、ルキアスちゃんもなでなでぎゅーしたかったんだよね?なでなでぎゅーしてもいい?」
「え?」
「あ、私も!ルキアスちゃんこんな可愛いんですもの!」
「え?いやでもッ うわぁッ」

 盗賊と僧侶のお姉さんが歓声を上げて俺に抱きついてきた。キレイなお姉さん方のご立派な胸押し付けハグからのなでなでの嵐に俺ははなぢ昇天ものだ。いい匂いだし柔らかいしだし。女の子ってハグ好きだよねー
 ホッペチューやデコチューも貰ってしまった。 俺を女と思っているからお姉さんたちも遠慮がないなぁ

 俺の嫁はただ一人だがまあ?これは別腹というか?決して浮気ではなく?健全な青少年としてデレるのは仕方がないわけで?さらにお色気魔導士お姉さんやクールなリーダー剣士のお姉さんにもハグにハナチューされてしまった。
 
 おおぅ!マジ天国だ!
 え?これってばモテイチャハーレム展開?いや、見た目女同士だから女子会的な?でもめちゃシアワセだぁ
 せっかく仲良くなれたのにここでお別れとか勿体なさすぎる!もうちょっとだけここに残ろうかな?

 と、ここでぎゅぅぅッと謎の胃痛に襲われた。幸福絶頂と激痛で俺は涙目だ。

 いてててッ 前もこんなことがあったような?胃袋つねられてるみたいだ。慢性の胃痛持ちになった?胃痛薬を何処かで探さないと。

 名残惜しいがキレイなお姉さんたちに手を振って俺たちは街を出発した。


 数時間後、この胃痛の原因からカミナリが落ちるとは俺はこの時これっぽっちも予想していなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。

蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。 ※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 ※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...