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盛大に謀られた!!
しおりを挟む一拍ののちふわりと体が宙に浮いた。
驚いて目を開けると、公爵に子供のように高く抱き上げられていた。公爵が破顔した。
「メリッサ‥‥やっと‥‥やっと手に入れた!!」
「アレックス卿、メリッサ様、ご婚約おめでとうございます。」
「おっしゃーっ!!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
ロザリーの声に続き、遠くの草むらではグライド始め騎士達が雄叫びを上げてガッツポーズで立ち上がった。
見られていた?!と雄叫びに驚く間も無くメリッサはぎゅぅっと公爵に抱きしめられる。同時に色々なことが起こりメリッサは唖然とする。
「ロザリー?!」
「ここまで一人で来たとは申しておりません。」
ロザリーがしれっと言った。
ロザリーなら一人でだって大丈夫じゃない!今回に限ってみんないるなんて!
「メリッサ、俺を選んでくれてありがとう!俺も大好きだ!生涯かけて幸せにする!絶対だ!」
抱きしめながら公爵がメリッサに怒涛の告白をする。色々聞き捨てならない。
なぜ今言うの?さっきまで死ぬほど怖かったのに!
ぎゅうぎゅう抱きしめてくる公爵を制止する。
「待ってっ公爵様‥‥!!」
「やっと婚約できたんだ。もう少し甘えさせてくれ。」
「やっと?婚約?」
「メリッサから妻になると言わない限り婚約はしないってダリウスの爺さんから言われてたから。邸に戻ったらすぐここに指輪をはめよう。」
左手の薬指をべろりと舐められて悲鳴をあげる。
なんか色々話違う!ロザリーを睨みつけた。
「ロザリー?!」
「輿入れは嘘です。そう言わないとお嬢様は家に帰られたでしょう?」
「確かにそうだけど‥‥、じゃあ今までのは一体‥‥」
「そうですね、婚約はしていなかったので、縁談‥前の顔合わせ、でしょうか?」
「でもさっき婚約破棄だって!」
「あぁ、あれは縁談の破棄って意味だ。婚約はまだしてなかったし?」
公爵が不思議そうに答える。
ええ?破棄なんて言われたら婚約破棄だと思うじゃない!!ロザリーも「この話は無かったことにする」と言っていたけど、この話って縁談のこと?!
輿入れでない。婚約もない。ただのお見合いだった?!
謀られた!それも盛大に!ひどい!
「何だかよくわからないが、ダリウスの爺さんとロザリーに感謝だな!」
「公爵様!私は怒っているんです!」
「アレックス。名前で呼んでくれ。君の声で呼ばれたい。」
うっとりと囁く公爵、アレックスの色気にメリッサは怒りをすっ飛ばして赤面した。名前呼びなんていきなり無理だと思うも、じいと見つめられて観念した。
「えっ あ‥アレッ‥クス‥様?」
「可愛い!照れるメリッサ可愛いな!」
頭にぐりぐりと頬ずりされる。あれ?公爵様のキャラが変わった?そして耳が?公爵様の耳が狼になってる??え?!
「こ、公爵様、耳が‥」
「アレックスだって。ああ、魔素が濃いとつい狼の耳が出るんだよ。『魔狼』は俺のスキルなんだがメリッサに秘密だったから、こいつのせいでずっと兜かぶってたんだ。」
魔狼がスキル?!
あの兜は残念顔とか顔に傷とか色々想像してたのに。狼耳のせい?!こんな理由とは‥。
公爵様のイメージがどんどん変わっていく‥。
ひょいと片手で肩に担がれメリッサは慌ててアレックスの頭に縋り付く。
「きゃあ!おろしてください!」
「ダメだよ、裸足だろ?俺が担いで行くから。絶対落とさない。」
アレックスの笑顔が近くてメリッサは顔を赤らめた。
片手でこんなに軽々と、すごい怪力だ。狼耳がピクピク動く。耳をつつくとさらに動いてちょっと可愛い。
騎士達を見回しアレックスが号令をかける。
「よーし!みんな帰るぞ!今夜は婚約祝いで無礼講だ!グライド!!」
「おう!任せろ!邸に使い出しといた!今夜は飲むぞー!!」
おぉと野太い雄叫びをあげて皆一団となって動き出す。
魔封の森にいるとは思えないノリで一行は森を後にするのだった。
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