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第二部

第13話 ※

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「エデル!」

 囁くようなその声に振り返りエデルは目を疑った。

 ずっとエルーシアに会いたいと思っていた。焦がれすぎて白昼夢を見ているとさえ思ってしまった。だが物陰から実体あるエルーシアがこちらを窺っている。そして別の意味で目を疑った。厩の裏は森が茂る。誰がいるわけもないがエデルは辺りを窺い慌ててエルーシアの手を取って茂みに飛び込んだ。

 エルーシアは思いの外大胆だった。無邪気が故に向こう見ずとも言える。隠し扉から外に出られるようになり、日中も外に出てはエデルが詰める厩舎にもこっそり現れるようになった。エデルにとっては寿命が縮まる思いだ。

「エルシャ様!出てきてはダメだとあれ程‥」
「ごめんなさい‥どうしてもエデルに会いたくて‥」

 口籠るエルーシアにエデルは目元を手で覆う。昼間は外に出てはいけないとたしなめるももじもじと甘えるエルーシアにエデルは深いため息を落とした。

「昼間に出てきてはいけません。誰かに見られます。旦那様だって‥」
「誰にも見られてないわ。お仕事の邪魔はしないから。休憩時間だけ。ね?お願い!」

 夜と違い家人たちも歩き回っている。エルーシアが外にいる姿を見られれば隠し扉がバレてしまう。エルーシアの纏う紺色のシンプルなデイドレスは侍女のお仕着せにも似ている。一応変装のつもりなのだろうか。それを手助けしているあの侍女の神経が知れない。

「もうすぐ休憩でしょう?ちょっとだけでいいから。隠れ家で待ってるから来て」

 すぐに戻れと叱ろうと思ったのに。隠れ家での逢瀬、そんな甘い誘惑をされては何も言えない。エデルはしかめっ面でぐっと言葉を詰まらせる。

 結局エルシャには敵わない。どんなわがままさえ叶えてやりたいと思える。散々経験済みのこの僕をこれほどに翻弄する。どれほどに小悪魔なんだ?このあと僕がどれほど苦しむかも知らないだろうに。

 休憩に入りエデルはいそいそと隠れ家に向かう。いつもの隠れ家にちょこんと腰掛けて待つ小悪魔は笑顔でエデルを迎えた。

「エデル‥待ってたのよ。会いたかったわ」

 エデルに飛びついて笑顔で甘えるエルーシアにエデルは咄嗟に口元を隠した。自分の恋人は無垢で可憐でこれほどに愛らしい。にやつく口元を手で押さえ歳上の余裕を見せようとする。リードするのは自分なのだから。

「もう昼に会うにはこれきりですよ、いいですね?」
「でも‥夜会えるのがお義兄さまが夜会に行く時だけなんて‥寂しかったのよ?エデルは寂しくなかったの?」
「‥‥‥‥それはまあ‥」

 前回の夜の逢瀬は三日前、寂しかったのはエデルも同じだ。夜の逢瀬を経験してしまえば鉄格子越しではもどかしい。抱き合い口づけて触れ合う気持ちよさは何物も替え難い。
 口籠るエデルにエルーシアは笑顔を弾けさせる。

「ちょっとだけだから、ね?」
「‥‥仕方ないですね。少しだけですよ?」
「ドロシーが上手くやってくれてるから大丈夫よ」

 ドロシーはエルーシアの乳姉妹だ。本当の姉妹のように仲がいい。昼間抜け出すには協力者がいなければ無理だろう。

「エデル‥お願い‥‥」
「エルシャ様‥‥」

 甘いおねだりに堪らずエルーシアの唇に親指を走らせる。ピンク色でぷっくりと柔らかいそれはとても美味しそうだ。きつく抱き寄せて舌を絡ませながらエルーシアの口内を、柔らかい体を愛撫した。エルーシアが目を細めて舌を使う。何度か夜の逢瀬も重ねた。深い口づけにエルーシアはすっかり慣れていた。

「エデル‥大好きよ‥」

 エルーシアの殺し文句。素直に好意を口にするエルーシアにエデルは心中悶絶する。この無垢な素直さはエデルのど真ん中だ。

 もう勘弁してくれ!悶え死にそうだ!

 エデルは優しくエルーシアを押し倒し口づけを深くする。すぐ身を隠せるように夜の逢瀬でも服は脱がない。それでもエルーシアの夜着は薄く触り心地もいい。脱がなくても夜着ならたっぷりの唾液で透けて色も形もくっきりと見える。エデルはエルーシアの赤く色づく胸の頂もツンと尖る形も脳裏に焼き付けていた。だが今は昼間、部屋着と夜着は違う。服越しに触れるだけではエルーシアの肌を感じられない。

 直に触れたい‥

「エデル?!」
「少しだけです」

 お仕着せに似たワンピースドレスの襟元のリボンを解いてはだけた胸元から手を突っ込んだ。指に触れる柔らかい感触に欲求が少し満たされ息を吐いた。

「エデ‥見ないで‥」
「目を閉じています」

 もう胸なら夜に散々見ているがエルーシアは気がついていない様だ。恥じらうエルーシアを宥め開いたドレスの胸元からシュミーズを押し下げた。明るい中でまろび出る白い胸をしっかり見て脳裏に焼き付ける。
 エルーシアは着痩せするのか見た目以上に胸は大きい。柔らかく美味しそうなそこを舌で愛撫し味わうように舐めあげた。エデルに反応しすぐに勃ち上がるそこはなぶり甲斐がある。さいなむように口に含み飴を舐めるように舌で攻め転がした。もう一つは親指でくすぐる様に擦ってやる。その快楽からエルーシアが甘い声を上げエデルの髪に手を差し込み頭を抱き寄せる。それはエルーシアの強請るサインだ。

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