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異世界生活:王都レグナム編
料理長ゴルジアス
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暫く訓練を観覧し、厨房へと移動する。
桜と観覧途中で目覚めた向日葵が、訓練に興味を示したため、長居した。
そのため、中庭は後日にして、厨房に寄ってから客室に戻る事となった。
「凄かったね!」
「ふぁいやーぼーる!」
向日葵は影響を受けて魔法名を口にしている。
その様子を見てソフィリアもアクアも、ユグドラシル同様に微笑んでいる。
向日葵の愛嬌無双は健在のようだ。
しかし、ぜひとも詠唱はしないでほしい。
蓮は切に願った。
「ここが大食堂です」
中に入ると特大の食堂と、その奥に厨房がある。
料理好きの桜にとっては訓練場同様に興味を引く場だ。
カウンターの向こう側に厨房が見えているがかなり広く、人数も多い。
「今は丁度夕食の準備をしている最中ですね」
大規模の食堂だが、先程の訓練場の者が一度に入ることは出来なさそうだ。
フェリクスに聞くと、混雑と揉め事を防止するために、王宮魔法師が食事をする時間と、人族と亜人が食事をする時間、獣人が食事をする時間を分けているそうだ。
身分が上の者はここではない別の場所や自室で食事を取るらしい。
厨房には特別大柄な種族が居ないため、作りが標準よりも少し大きい程度。
そのため、リルは入れず食堂から見ている。
「ゴルジアスさん。準備は順調ですか?」
「おう小僧!誰にものを言ってんだ!あったりめぇだろ!」
「こらあんた!フェリちゃんはもう騎士団長なんだよ!言葉に気を付けなさい!」
言葉遣いは悪いが、素早い包丁さばきで肉を切り分けている大柄の人族の男性は、料理長のゴルジアス。
その横で指摘をするのはゴルジアスの妻で、副料理長をしているカロリーネだそうだ。
聞けば、フェリクスが拾われてここに来た時から知っているため、距離が近いそうだ。
「ふふふ。今日も仲が良いですね」
ドラコの影からひょっこりと姿を見せ、ソフィリアが言うと、一気に雰囲気が慌ただしくなる。
「お、お、おお王女様だ!」
「な、なんでこんなところに!?アクア様もご一緒よ!」
料理人やメイドなど調理や準備をしている者たちが口々に言うが、皆、跪きたくても跪けずに困っている。
調理をしている事と、厨房で床がきれいではないため、跪くことで服を汚すわけにはいかないからだ。
もし今服を汚し、王が居る場に配膳で入室すれば、それこと無礼極まりないからだ。
「み、皆さん落ち着いてください」
ソフィリアも慌てて作業に集中するように伝える。
「嬢ちゃんも珍しいじゃねぇか」
フェリクス同様にソフィリアも生まれた時からゴルジアスの料理を食べて育っている。
そのため、我が子にも近い感情を抱いているようだ。
しかし、流石に人前で『嬢ちゃん』と呼ぶのはカロリーネが許さず、頬を抓られている。
「こちらが説明していたお方たちです」
「すみません。急に来てしまって」
フェリクスの紹介を受け、代表して謝罪。
桜が料理好きであることや見学をしたいことを伝えるとゴルジアスとカロリーネは快く受け入れてくれた。
見学をして料理について話す中でゴルジアスは桜に興味を抱き、尋ねた。
「嬢ちゃん本当に料理が好きなんだな。スキルはあるのか?レベルはいくつだ?」
「えっと……。はい。一応……」
桜は、料理神フローラの加護を有している事や、料理のスキルレベルが最高値である事を言い難そうにして蓮を見た。
蓮は頷き『スキルのレベルくらいなら言っても良いんじゃないかな』と助け船を出した。
「料理Lv10です……」
妬まれることを恐れて言い難そうだが、ゴルジアスたちの反応に救われた。
時が止まったかのように静まり返った後に、口々に驚きと尊敬を口にした。
どんなスキルでもそうだが、スキルレベルが最高値の者に出会う事はそうはない。
「そいつが本当なら、是非ここで働いて欲しいぜ!」
ゴルジアスも見た目からは想像できないが、料理長を務めているだけあって、料理に対して情熱がある。
しかし、妬むでもなく、ひがむでもなく、とても前向きな言葉だ。
聞けば、料理部門の責任者を任される今も努力を惜しまず、先日料理がLv8、包丁捌きと解体のスキルがLv7になったそうだ。
その言葉を聞いて桜は借り物の才能である事に少し申し訳なくなるが、蓮は桜の肩に手を置き、気にしないように伝えた。
「サクラ様。もしよろしければ、異世の料理を振舞っては頂けませんか?」
「おお!そいつは良い!俺も勉強させてもらうぜ!」
フェリクスが口にするとゴルジアスもカロリーネも乗り気だ。
桜は驚き蓮を見るが、蓮はゆっくりと頷いた。
「王様ってどんな料理が好きですか?」
桜が聞くとゴルジアスが肉料理が好きなことや、少し濃い味が好きである事などを説明。
少し聞き、桜の脳内でレシピ選択が完了。
「じゃ、じゃあ少しだけお借りしても良いですか?」
桜はそう断りを入れて食材を取り出し、解体を始めた。
アイテムボックスからウマドリとホーンブルの肉塊を取り出し調理開始。
アイテムボックスを持っている事。
高難易度の魔物の肉が出て来た事。
異界の両知識があること。
驚きの連続でゴルジアスがは終始羨ましがっている。
料理を完成させるのを見届け、配膳などは任せて、蓮たちは客室に戻らずに大広間へと向かった。
間もなく晩餐会が始まる。
桜と観覧途中で目覚めた向日葵が、訓練に興味を示したため、長居した。
そのため、中庭は後日にして、厨房に寄ってから客室に戻る事となった。
「凄かったね!」
「ふぁいやーぼーる!」
向日葵は影響を受けて魔法名を口にしている。
その様子を見てソフィリアもアクアも、ユグドラシル同様に微笑んでいる。
向日葵の愛嬌無双は健在のようだ。
しかし、ぜひとも詠唱はしないでほしい。
蓮は切に願った。
「ここが大食堂です」
中に入ると特大の食堂と、その奥に厨房がある。
料理好きの桜にとっては訓練場同様に興味を引く場だ。
カウンターの向こう側に厨房が見えているがかなり広く、人数も多い。
「今は丁度夕食の準備をしている最中ですね」
大規模の食堂だが、先程の訓練場の者が一度に入ることは出来なさそうだ。
フェリクスに聞くと、混雑と揉め事を防止するために、王宮魔法師が食事をする時間と、人族と亜人が食事をする時間、獣人が食事をする時間を分けているそうだ。
身分が上の者はここではない別の場所や自室で食事を取るらしい。
厨房には特別大柄な種族が居ないため、作りが標準よりも少し大きい程度。
そのため、リルは入れず食堂から見ている。
「ゴルジアスさん。準備は順調ですか?」
「おう小僧!誰にものを言ってんだ!あったりめぇだろ!」
「こらあんた!フェリちゃんはもう騎士団長なんだよ!言葉に気を付けなさい!」
言葉遣いは悪いが、素早い包丁さばきで肉を切り分けている大柄の人族の男性は、料理長のゴルジアス。
その横で指摘をするのはゴルジアスの妻で、副料理長をしているカロリーネだそうだ。
聞けば、フェリクスが拾われてここに来た時から知っているため、距離が近いそうだ。
「ふふふ。今日も仲が良いですね」
ドラコの影からひょっこりと姿を見せ、ソフィリアが言うと、一気に雰囲気が慌ただしくなる。
「お、お、おお王女様だ!」
「な、なんでこんなところに!?アクア様もご一緒よ!」
料理人やメイドなど調理や準備をしている者たちが口々に言うが、皆、跪きたくても跪けずに困っている。
調理をしている事と、厨房で床がきれいではないため、跪くことで服を汚すわけにはいかないからだ。
もし今服を汚し、王が居る場に配膳で入室すれば、それこと無礼極まりないからだ。
「み、皆さん落ち着いてください」
ソフィリアも慌てて作業に集中するように伝える。
「嬢ちゃんも珍しいじゃねぇか」
フェリクス同様にソフィリアも生まれた時からゴルジアスの料理を食べて育っている。
そのため、我が子にも近い感情を抱いているようだ。
しかし、流石に人前で『嬢ちゃん』と呼ぶのはカロリーネが許さず、頬を抓られている。
「こちらが説明していたお方たちです」
「すみません。急に来てしまって」
フェリクスの紹介を受け、代表して謝罪。
桜が料理好きであることや見学をしたいことを伝えるとゴルジアスとカロリーネは快く受け入れてくれた。
見学をして料理について話す中でゴルジアスは桜に興味を抱き、尋ねた。
「嬢ちゃん本当に料理が好きなんだな。スキルはあるのか?レベルはいくつだ?」
「えっと……。はい。一応……」
桜は、料理神フローラの加護を有している事や、料理のスキルレベルが最高値である事を言い難そうにして蓮を見た。
蓮は頷き『スキルのレベルくらいなら言っても良いんじゃないかな』と助け船を出した。
「料理Lv10です……」
妬まれることを恐れて言い難そうだが、ゴルジアスたちの反応に救われた。
時が止まったかのように静まり返った後に、口々に驚きと尊敬を口にした。
どんなスキルでもそうだが、スキルレベルが最高値の者に出会う事はそうはない。
「そいつが本当なら、是非ここで働いて欲しいぜ!」
ゴルジアスも見た目からは想像できないが、料理長を務めているだけあって、料理に対して情熱がある。
しかし、妬むでもなく、ひがむでもなく、とても前向きな言葉だ。
聞けば、料理部門の責任者を任される今も努力を惜しまず、先日料理がLv8、包丁捌きと解体のスキルがLv7になったそうだ。
その言葉を聞いて桜は借り物の才能である事に少し申し訳なくなるが、蓮は桜の肩に手を置き、気にしないように伝えた。
「サクラ様。もしよろしければ、異世の料理を振舞っては頂けませんか?」
「おお!そいつは良い!俺も勉強させてもらうぜ!」
フェリクスが口にするとゴルジアスもカロリーネも乗り気だ。
桜は驚き蓮を見るが、蓮はゆっくりと頷いた。
「王様ってどんな料理が好きですか?」
桜が聞くとゴルジアスが肉料理が好きなことや、少し濃い味が好きである事などを説明。
少し聞き、桜の脳内でレシピ選択が完了。
「じゃ、じゃあ少しだけお借りしても良いですか?」
桜はそう断りを入れて食材を取り出し、解体を始めた。
アイテムボックスからウマドリとホーンブルの肉塊を取り出し調理開始。
アイテムボックスを持っている事。
高難易度の魔物の肉が出て来た事。
異界の両知識があること。
驚きの連続でゴルジアスがは終始羨ましがっている。
料理を完成させるのを見届け、配膳などは任せて、蓮たちは客室に戻らずに大広間へと向かった。
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