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異世界生活:王都レグナム編

王都レグナム

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レグナムが見えて空の旅は終了。
街のそばまで行くと大混乱を招くため、グリーデンの時と同様に手前で降りて、歩いて移動。

「ここが王都レグナムだ」

高さ20メートルはあろうかという巨大な黒々とした鉄格子。
それを囲うのはさらに高い石の壁。
軽自動車ほどの大きさの石のブロックが見上げるほど高く積み上げられている。

「おおきいねー!」

蓮の不安をよそに向日葵は目が覚めてご機嫌だ。
メイとのしばしの別れを後で聞かされて泣くかと思ったが、新しい街に楽しさが勝っているようだ。

一枚の壁ではなくブロックを積み重ねて作り、ブロックとブロックの間を何かで塗り固めた様な城壁にしている。
ひょっとしたら、攻め込まれたときに崩れにくくするために、あえてブロックを積み重ねているのかもしれない。
そして蓮は、魔物対策なのであれば良いが、人間間での戦争を想定して作られているのではないかと推測した。

「こっちだ」

シュバルツに誘導され進む。
鉄格子の手前の小屋から警備兵と思わしき兵士が二人出てきた。
グリーデン同様に元いた世界の外国人のように、はっきりとした顔立ちだ。

「シュ、シュバルツ様!なぜこのような所に!?」

シュバルツは話通りの有権者のようで、敬意を説明し、すぐさま入国の許可を出させ、乗り物の手配をさせた。
5分も待たずしてジャイアントホースの引くタウンコーチ型の乗り物が来た。
様々な種族の者が乗れるようにかなり大型だ。

「手綱は俺が握る。さぁ乗ってくれ」

そう言うとシュバルツはジャイアントホースに乗り手綱を握った。
中はかなり広く、屋根も高いため、ドラコでも乗り込めるようになっている。
万が一、外から襲撃されたときに備えて、蓮は乗らずに桜と向日葵、ユグドラシルとドラコを乗せた。

「街中での魔法は原則として禁止だぞ」

シュバルツによれば、怪我やトラブルを防ぐために、現王になってから街での移動魔法、攻撃魔法は基本的に禁止。
支援魔法や物を軽くする地魔法など一部の魔法は使用可能だが、許可証が必要だそうだ。

「ふむ。では我に乗るが良い」

歩けば時間がかかり、リルやジャイアントホースに並走すれば、注目を集めすぎる。
蓮はリルの言葉に甘え、背を借りることにした。

鉄格子をくぐった先に広がるのは、中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並み。
グリーデンよりもかなり発展してんしているようだ。
剣に鎧にローブといった見慣れぬ服装や、街を行きかう様々な種族は同じだが、人口が圧倒的に多い。

そしてグリーデン同様に、蓮達の様に幼い顔立ちの者は居ない。

様々な種族と様々な店が立ち並ぶ道を走り、城に向かう。

上空から見えたレグナムはグリーデンと同じ円形。
広さはグリーデンの5倍はありそうな城郭都市だ。
城壁、街、城壁よりも小さい石壁、街、石壁、城という風に中心へ向かうように壁で仕切られていた。

攻め込まれたときに、城へとたどり着かせにくくするためだろう。

蓮が興味深そうに街並みを見ていると、シュバルツが解説をしてくれた。

「ここは平民地区だ」

城壁に近いところは平民地区。
城に近いところは貴族地区。
城には王族や上級貴族が住んでいるそうだ。

移動用や貨物用を含めた運搬車は通りの真ん中を走り、歩行者は端を歩く。
信号などはなく、交差点では譲り合いで成立している。

移動すること十数分。
一つ目の壁に着くと、城壁で見たものと同じような鉄格子があり、門番が居る。

「何か居るね」

鉄格子の向こう側には、白いジャイアントホースに乗る男性騎士が1人。
その周りには長い槍を持つ兵士が10名。

殺気や敵意は感じない。
しかし、わずかな可能性を排除するために、蓮はあえて闘気を漲らせた。
威圧のスキルは発動していないが、圧倒的な戦力差を目の当たりにし、兵士たちは後ずさりをした。

「お、おい!ただの迎えだ!」

慌ててシュバルツが声をかけた。
その声に反応して窓から桜が顔を出す。
蓮は安心させるように笑顔を向けた。

「その通りです。敵意はありません。どうか闘気を落ち着かせてください」

そう言葉を発したのは、白いジャイアントホース乗る騎士風の恰好の人族の男性。
綺麗な金髪に翡翠色の瞳。
整った顔立ちに、穏やかな口調。
白銀の鎧を着こなし、腰には長剣を携える。

「私の名はフェリクス・エアハルト。騎士団の団長をしている者です」

城壁の門番からシュバルツが特別指定討伐対象エイリアスモンスターを倒した者と帰還した言う連絡があり、王の指示で出迎えたそうだ。

「他の騎士団長や四魔帝テトラゴーノンの方たちはもう集まっております」

そう言うとフェリクスは向きを変え、貴族地区へと招き入れた。

そしてさらに走ること十数分。
再び鉄格子があり、そこを通り抜けると城へと繋がる一本道。
石橋となっており、周囲は深い堀になっている。

城の入り口は大きく重い鉄扉。
その中に入ると、シュバルツとフェリクスはジャイアントホースから降りた。

「ここからは歩いて向かいます」

フェリクスの言葉に蓮は扉を開けて、桜たちを降ろし。移動を促した。

「おしろだー!」

乗物から降りてすぐに走り出そうとする向日葵を桜が『知らない人のおうちみたいなものだかねぇ』と言って手を繋いで制止した。
怖がらせないように配慮していると同時に、その配慮からは桜自身の不安が伺えた。

シュバルツへの信頼が厚いのか、グランからの報告書に既に記載があったからなのか、ユグドラシルやリル、ドラコの事には触れずに、フェリクスは城内へと案内した。

「何があっても守るから大丈夫だよ」

蓮は不安そうな桜へ、この世界に来る時と同じ言葉を送った。
そして、いつ何が起きても対処できるように心を構えて、整備された石畳の上を慎重に歩を進めた。
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