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異世界生活:王都レグナム編

ミスリルゴーレム②

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堅牢強固な数値とスキルのミスリルゴーレム。
超防御特化の魔物。
数多の魔物を屠りレベルを上げ、奢ることなく鍛錬し、最上級の武器を持つ蓮の一撃ですら小傷を付ける程度。

その小傷すらも自動修復のスキルで、数秒で完治してしまう。
しかし、妹達の見ている手前、打つ手なしと諦めるわけにはいかない。

「核を探せ!」

リルの言葉に反応して気配探知をするが核の位置は全く分からない。
蓮が攻めあぐねているとミスリルゴーレムは形状をもとの人型に戻し、そして指を蓮に向けた。

刹那。
戦慄が走る。
蓮は一瞬で死を察知し、横に回避。

蓮の居た所を何かが高速で通り抜け、はるか後方にある大岩に突き刺さった。

そこには青白く光る杭が刺さっている。

「嘘だろ……」

指先から弾丸のようにミスリルで出来た杭を飛ばしたのだ。
この場にある大岩にはミスリルなどの高硬度の功績が含まれている。

そのため大岩に突き刺さったが、通常の平原にある岩であれば容易く貫通しただろう。

再びミスリルゴーレムは蓮に照準を合わせようと指先を向ける。
そうはさせまいと蓮は高速で移動。
待ちに入ったり、守りに入れば負ける。

蓮は戦闘の経験を積んだことで、相手の攻撃から、更なる攻撃手段を想像できるようになっていた。
ミスリルゴーレムが蓮の想像した攻撃手段を取る前に決着を付けなければ危険だ。


超高速で打ち出されるミスリル製の杭を躱しながら、斬りつけていく。
蓮の移動速度について行けないと判断したミスリルゴーレムは更に形状変化。

鞭のように長い十数本の腕を生やし、先端を鋭い斧に変化させ、次々に蓮を斬りつけた。

回避と斬撃を繰り返し、斧を切り落としていくが、すぐに再生する。
自動修復のスキルのおかげで質量が減らないことも、厄介でしかない。

核を探すべく、距離を取り観察しようとするが、すかさず大地の槍が蓮を襲う。
ミスリルゴーレムが得意とする地魔法だ。

跳躍し、身を捻りながら回避する。

接近戦だけでなく、魔法で中距離攻撃も仕掛けてくる。
今までの動物的な敵とは異なり知性を感じる戦い方。

蓮も闘気と力を込めて遠距離から斬撃を飛ばすが、表面に小傷を付けることなく斬撃波は霧散した。

「やっぱり無駄か」

竜狼蓮華に闘気を流し込んで直接斬りつけるしか、有効な攻撃手段がない。
臆していては勝つことはできない。

蓮は覚悟を決めて、全身と刀に闘気を纏わせた。
ぼんやり煙のように纏うのではなく、超高濃度に圧縮して闘気を纏い、武器に備わった闘気伝導率で斬撃を強化。
一瞬で間合いを詰めて、雄叫び共に放つ全身全霊の一撃。

「どうだ!?」

全力で刀を振り抜き、勢いのままに後方まで駆け抜けて振り返る。
両断はしたものの、すぐさま修復が始まったため、ミスリルゴーレムの身体が切り崩れることはなかった。
痛覚や感情が無いのか、ミスリルゴーレムは怯む様子もなく、振り返り、蓮に指を向けて攻撃の照準を合わそうとする。

「くっそー!今の本気だったんだけどなー!」

大抵の魔物は一撃で屠ってきた。
しかし、こいつは何度斬っても死なない。
それどころかダメージすら与えられていない。
歯がゆさと無力さに苛立ちを感じ、ミスリルゴーレムをにらみつける。

腹立たしいことに斬ったそばから傷がふさがっていく。

「ん?リル!あそこ!傷の中に少し色の濃い部分がある!」

大きな斬り傷の中に、濃い球体状のものが移動するのが見えた。

「それじゃ!」

リルの声に導かれるように、蓮は再び闘気を纏った。

蓮に斬撃を出させまいと、ミスリルゴーレムは斧の先端を、銃口のように変化させた。
蓮が想像した最も危険な攻撃手段。
十数本の腕の先端から連続かつ超高速で射出されるミスリルの杭。

杭を視覚で捉えることは困難。
向けられた銃口の角度から弾道を予測し、隙間を縫うように回避し、ミスリルゴーレムに接近。

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

台地が揺れるような雄叫びを上げながらが全力の居合斬り。
左下から右上へと、斜めに斬りつける。
斬り口から微かに見える色の濃い部分。
更に強く闘気を込めながら、手首を返し、右上から左下へと同じ軌道で斬りつける。

一撃、二撃、三撃、四撃。
マンティコアの強靭な体毛を斬り裂いた時のように、寸分たがわず斬りつけてゆく。

ミスリルゴーレムも負けじと形状変化。
胸部や腹部から長く鋭い針を無数に出して、攻防一体の攻撃を繰り出す。
伸び迫る針を、蓮は回避するのではなくすべて切り落とし、その場にとどまった。

五撃、六撃、七撃、八撃。

「まだまだぁ!」

ここで引けば後がない。
止めを刺しきれずに距離を取ればミスリルの杭でハチの巣にされる。

時間にして1秒にも満たない間に蓮は10を超える斬撃を重ね、ついに核に傷をつけた。

まだ小傷程度だが、効果は充分。
ミスリルゴーレムの動きが急激に鈍くなった。

勝機。
蓮は立ち込めるほどの闘気を全て竜狼蓮華に圧縮。
最大まで斬撃を高め、全力で核を斬りつけた。

「やったか……」

最後の一撃で核を両断。
ミスリルゴーレムは崖から大岩が転がり落ちるかのような音を立てながら崩れ落ちた。

ミスリルゴーレムの生命力が蓮に流れ込み、レベルが上がり、勝利を確信。
蓮が手を振ると、ドラコは地に降り立ち、バスケットから桜と向日葵が出て来た。

「にぃに!かっこいい!」

「うんうん!凄い!全然見えなかったよ!」

ヒーローが悪役を倒したのを目の当たりにした少年のように目を輝かせている。
妹達のその尊敬と憧れの視線が最大の誉れだ。
疲れが一気に吹き飛び『お兄ちゃんは凄いだろぉ』と笑って答えた。

早速ミスリルゴーレムの身体を余すことなく収集。

鑑定
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ミスリルゴーレムの破片 レア度:SS】
・純度100%。
・高濃度の魔素を含んでおり、超高硬度。
・魔力伝導率(大)。
・闘気伝導率(大)。
・魔法耐性(大)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

核を失ったミスリルゴーレムの身体の一部を手に取り鑑定すると、蓮が錬金術で作ったミスリルのインゴットよりも高性能で驚いた。
小さいかけらもあるが、大きい物は蓮よりも大きい。
一体何tなんトンあるのだろうか。

数世代先まで遊んで暮らせるのではないだろうか。

「にぃに……」

何やら向日葵が両手を後ろに回してもじもじしている。
どうしたのかと聞くと、ゆっくりと両手を前に出し『もってかえってもいいの?』と蓮に聞く。

その手には小さなミスリル鉱石が2つ乗せられていた。

「いいよ!綺麗な宝石だね!もう一つ足して、お兄ちゃんとお姉ちゃんとひまちゃんみたいにして玄関に置こうか!」

蓮がそういうと『わーい!』と喜び何やら不思議な踊りをしている。
喜びの舞とでも名付けておこう。

前回のように強力な魔物の接近は感知していないが、ミスリルゴーレム級の魔物との連戦はきつい。
収集と少し観光を終え、渓谷を後にし帰路についた。
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