異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー

文字の大きさ
上 下
82 / 153
異世界生活:グリーデン編

ゴブリンの集落

しおりを挟む
蓮は空を駆け抜け、急いで移動。
ユグドラシルは植物間を移動し、フェンとローはリルの背に並走した。

すぐにゴブリンの集落付近に到着。

近づき、目に飛び込んできた光景は最悪の一歩手前だった。
ユグドラシルが管理する森を隔てている山脈の麓付近。
木々が無く、開けた所にゴブリンの集落は作られていた。

盗んできた布を張って作ったかのようなテントがいくつもある。

そして、中央付近には丸太のような杭が4本あり、人族の男性2人と人族の女性1人がはりつけにされている。

「畜生!ほどきやがれ!」

男性の1人が身をくねらせて抜け出そうとするが、グルグル巻きにされているため、縄はほどけない。
横で女性もいるが、抜け出せそうにない。
女性の衣服に乱れが無いため、襲われてはいないようだ。

もう一人の男性は諦めてしまっているのか、涙を流してうなだれている。

その周囲には大きさの異なるゴブリンが20体程度居て、もがく姿をあざけ笑っている。
初めて見る。
暗い緑色の毛のない肌に覆われ、鬼のような目つきと歯をしている。
背丈は蓮の腹まで程度しかない。
かといって残忍で狡猾な性格と、数が多いため油断はできない。

大きい方がホブゴブリン。
蓮よりも少し大きいくらいで手足が長く、剣を振ればかなり間合いが遠いだろう。

「ブレイドがいねぇ……」

フェンによれば掴まっているのはバッツとハングとレベッカ。
フェンたちが最初に発見した時には4人揃っていたが、今はリーダーの大剣使いのブレイドが居ない。

蓮は少し離れたところで交戦しているグランの傍にある死体が、ブレイドであることが予知スキルで分かったが、言葉にはしなかった。

「あの穴の中にもいますね」

大きな岩の間に熊でも入れそうな穴があり、その奥はかなり深く広くなっている。
ユグドラシルによれば、その中に数多くのゴブリンが居るそうだ。

「慎重に助けましょう。眠らせたり、麻痺させたりできますか?」

力押しの戦闘で100体を超える魔物が散り散りになっては倒しにくい。
一網打尽にするためと、安全に助け出すために蓮は案を出した。

睡眠スリープは使えるけど、さすがにこの数には……」

ローが睡眠スリープという支援魔法を使えるそうだが、数が多すぎる。
獣人であり、身体能力は高いが、魔法が苦手なためだろうか。
それとも、この数を眠らせられるのは上位の魔法師だけなのだろうか。

「私が眠らせましょう」

「ありがとうございます。まずは静かに助け出しましょう」

一瞬でゴブリン達を無力化しなければ、レベッカ達が殺されるかもしれない。
静かに進めなければ、騒ぎを聞きつけて上位種が現れるかもしれない。

幸いなのは磔が十字架状で、手首など各部が縛られているのではないこと。
乱雑に縄でグルグル巻きにされているだけだ。
これなら剣を一振りするだけで縄を切り、助け出すことができる。

「お願いします」

蓮の指示するとユグドラシルが手に粉を作りだし、優しい風に乗せて粉を集落全体に撒いた。
ユグドラシルの優れているところは、粉を上から撒くのではなく、風に乗せて集落内を巡らせたことだ。

ゴブリンからすれば風が吹いた程度にしか思わないだろう。
そう誤認させながら、テント内にも隙間を通して粉を風て運び込んでいる。

「な、なんだ!?急に睡魔が……。く……そ……」

磔にされていたバッツ達も巻き込んでしまったが、作戦は成功。
ドサドサと音を立てて、次々とゴブリンが倒れ込んでゆく。
いくつかのテントが揺れていた。
恐らくテント内のゴブリンも寝て倒れたのだろう。

木の陰から10秒ほど様子を見るが動く気配はない。

蓮たちは急いで近づき、不屈の剣の3人の縄をほどき救助し、木の陰に戻って来た。

「ユグドラシルさん。状態異常回復魔法リカバリーをお願いします」

蓮の指示でユグドラシルが支援魔法を使用すると、不屈の剣の3人は目を覚ました。

「っ!?」

「静かに。大丈夫。助けに来ました」

状況が分からずに大きな声を発しそうになったレベッカの口を抑え、落ち着かせる。
レベッカは安心し涙を流し頷いた。

「とりあえずこの集落を終わらせます。手伝ってください」

作戦は文字通り寝首を搔くこと。
武器はゴブリン達の持っている剣、短剣、斧など数多くある。
それを拾って、寝ているゴブリンの首を指していく。

「腹や胸では叫ぶ可能性があります。喉を深く差してください」

蓮は迅速に作戦を説明。
すぐに行動に移した。

グザッ……。
ズボッ……。

門番のゴブリン。
火の番をしていたゴブリン。
磔にしていた所にいたゴブリンとホブゴブリン。

ゴブリン達が持っていた武器を拾い、喉に突き立て殺してゆく。
幸いゴブリンメイジやゴブリンアーチャー、ゴブリンプリーストなど他の種類はいなかった。

喉を刺すときに、中にはもがく個体も居たが、蓮の言う通り喉を深く差したため、もがくだけで声は出せないでいた。
テントの中まで止めを刺し終え、死体は一旦放置。

すぐに洞窟の方向へ向かう。

「この中にはゴブリンジェネラルやゴブリンキングは居ないですね」

蓮が気配探知のスキルで探るが中に居るのは下位種のゴブリンばかり。

「リル。3か所の出入り口を塞いで、水魔法で溢れさせくれ」

洞窟の中で生活しているという事は夜目が効く可能性が高い。
洞窟の中に入って戦うのは不利でしかない。

それならば、入り口を全て塞ぎ、水攻めにすれば良い。
残酷だが、最も効率が良いと思い、蓮が指示をするとリルは感心し頷いた。

ゴオォォォオォ!

リルが全て出入り口を地魔法で塞ぎ、水魔法を流し込む。
外に出ようとしても、水魔法で押し返されるため出てこれない。

不意を突かれなす術もなく、洞窟内のゴブリンは全滅。

「お、お前……。いったいどんな修羅場をくぐり抜けてきたんだよ」

思い付きも最適。
指示も的確で、手際も良い。
あまりの戦闘慣れにフェンが驚き言葉にした。

「ただの平凡な民間人ですよ。僕はグランさんを助けに向かいます」

「ま、待ってくれ!」

蓮は冗談交じりに応え、すぐさま蓮はグランの救助へ向かう。
するとフェンに呼び止められた。

「お、俺も行く!このままじゃ終われねぇ!」

大敗を期した相手に恐怖しながらでも立ち向かう。
フェンを動かしているものは、冒険者としての、白狼族として誇り。
侮辱されたままでは終われない。

「もちろん僕も行くよ」

静かで穏やかに見えるが、ローも同じ想いのようだ。
蓮は頷き、ユグドラシルに支援魔法をかけるように依頼。

ステータスを増幅させ、共に戦いに挑むことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

処理中です...