異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー

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異世界生活:グリーデン編

目指せ!異世界ホワイト企業①

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ゴッ!

「ゔっ゙!ったぁ」

久しぶりの衝撃と痛み。
蓮の頬にめり込んだのは、向日葵の寝返りにより発生した流星踵落とし。
向日葵のユニーク欄に記載さている自由奔放の効果なのか、蓮の予知スキルをも掻い潜る。
そして、蓮の人外級のステータスでもなぜかダメージを負う。

一方の向日葵は創造神エマーテルの加護により鉄壁でノーダメージ。
何とも恐ろしい、不可避で天災のような一撃。

自然治癒のレベルが上がったためか、痛みが引くのも早い。

丁度光が差し込み始めているため、起きる時間ではあるのだが、もう少し気持ち良く目覚めたいものだ。

「2人共。朝だよぉ」

蓮は2人を起こしてから外に出る。
小屋に伏せるリルとドラコに挨拶をしていると、ユグドラシルも大樹の家の幹から出てくるように、徐々に姿を現した。
休む時は大樹の家と同化しているようだ。

「おはようございます」

蓮たちの声が聞こえたから、調合師用に作った家から3人が出て来た。

「良く寝られましたか?」

蓮が尋ねると、3人は『こんな快眠初めてです!』や『最っ高だった』とそれぞれ言葉にした。

街に出て、ユグドラシル製のベッド以外で初めて寝た。
そのため、蓮も一般的なベッドと、ユグドラシル製のベッドの差を知ったが、圧倒的な差だ。

魔素を流し込むだけでお湯が出る風呂。
魔素を流し込むだけで綺麗になるトイレや風呂場。
快眠のベッドと肌触りの良い布団。

そして、高待遇の雇用条件。

ウィステリアは『生涯雇用でお願いします!』と敬礼をした。
明るくて元気で無邪気な様子に和む。

遅れて出て来た桜たちにも聞こえたようで、笑いながら近づいてきた。

「さっそく朝食を作りますね」

「うん。頼むよ」

食堂に移動。
蓮達は席に付き、リルたちはテラスで伏して待つ。

桜は厨房に入り、街で買ってきたパンや卵、野菜、調理器具などをアイテムボックスから取り出した。
朝食はサンドイッチ。
金に糸目をつけずに塩や胡椒、醤油や砂糖、酢や油なども大量に買い込みアイテムボックスに収納しているそうだ。

「これはこの世界にないみたいだから、お口に合えば良いんですけど……」

そう言いながら、桜は厨房で何やら黄色や赤色ものをパンに塗る。
切った野菜と薄焼きにした卵を挟み、サラダたまごサンド。
薄く切って焼いたウマドリと野菜を挟み、チキンサラダサンド。
数種類のサンドイッチを1つの大皿に並べていく。

日本と同じような調味料が多数あったと喜んでいたが、手に入らなかったものもあったようだ。

「そういえば何か昨日の夜に作ってたな」

蓮は桜が、昨晩、大樹の家の中のキッチンで何かを作っていたことを思い出した。

「運ぶよぉ」

手際よくサンドイッチを作り終え、風魔法で7枚の取り皿をそれぞれの前に並べてゆく。

「お待たせしましたぁ。先に食べててくださいね」

桜はそう言うと、すぐにテラスに移動し、大きな肉塊をアイテムボックスから取り出した。
リルとドラコに用意するのは、ウマドリとホーンブルの丸焼き。
昨晩、帰路の途中によるご飯分を。
帰宅後に翌朝分を、蓮が必死に探して狩ってきておいたのだ。

解体と血抜きは済ませているため、結界魔法で閉じ込め、結界内に火魔法を発生させて焼く。

ほどよく焼ければ風魔法に塩と胡椒を乗せて運び、全体的に味付けをする。

最後に風魔法で真っ二つに切り、片方ずつリルとドラコの前に置いた。
地面にそのまま置くのではなく、地魔法でそれぞれに大きな石畳を用意している。

火、風、地、結界の4つの魔法を駆使して調理する様に、調合師の3人は驚いた。

「あ、あんなの四魔帝テトラゴーノンでもできないよね?」

「え、ええ。おそらく。」

ウィステリアが発した聞きなれない単語。
蓮が興味を示し聞くとフィーネに『え?知らないんですか?』と聞き返されてしまった。
違う大陸から来たなどと嘘をついて誤魔化すのか迷ったが、いずれ話す時が来ることを想定して正直に異界人であることを話すことにした。

すると、ある程度の人間関係ができ始めているからか、雇い主だからか、変な目で見られることはなかった。
逆に、蓮の人外的な身体能力や桜の魔法の申し子のような魔法操作、向日葵のフェンリル族と竜族すらも従魔にする力にも得心が言ったようだ。

「精霊様もいらっしゃいますしね」

フローネも納得の様子だ。
グランに、あまり口外しない方が良いと言われたが、距離近く関わる者には話しておいた方が楽なのかもしれないと感じた。

「それで四魔帝テトラゴーノンっていうのはね」

ウィステリアによれば王都レグナムには、魔法において傑出した才能を持つ者が4人居る。
それぞれ、2属性ほど8や9などの高いレベルを持ち合わせており闇雷帝あんらいてい光水帝こうすいてい風氷帝ふうひょうてい地炎帝ちえんていと呼ばれているそうだ。

王都レグナムの最高戦力にして、王族の次に権力があるらしいが、桜はそれを上回るほどの魔法操作だというのだ。

「ぜひとも関わりたくないけど……」

元居た世界でも往々にしてあることだ。
そういった力ある物で人格者は少ない。
とくに実力主義で魔法優先主義のこの世界ならば、なおの事だろう。

蓮は予知スキルで嫌な予感しかしなかった。

「ま、まぁ食べましょうよ」

暗くなる蓮。
その雰囲気を変えるために桜は食事を促した。

「おててとぉ!おててをあわせてぇ!いただきまーーす!」

まるで必殺技でも放つかのように食事の号令をかける向日葵。
元居た世界での食事の合図みたいなものだと説明し、食事を始める。

「んんんーっ!」

ウィステリアは小さな口をいっぱいにして叫んでいる。
恐らく『おいしー!』と言っているのだろう。

フィーネとフローネもあまりの美味しさに顔を見合わせた。

「お口に合ったようで良かったです」

良い反応を示され、桜も嬉しそうだ。
向日葵は、『はむっ!はむっ!』っと美味しそうに食べている。
その光景を見てユグドラシルは微笑んでいる。

桜が先ほどパンに塗ったのはマヨネーズ。
様々な調味料が売られている中、ケチャップとマヨネーズは見当たらなかったそうだ。
店員に聞いても上手く伝わらなかったため、この世界にはないのかもしれないと思い、自作に至ったそうだ。

あっという間に完食。
食休みをしてから仕事に入ることにした。

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