異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー

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異世界生活:グリーデン編

異世界で初めての鍛冶

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職人ギルドでの話を終えて武器防具工房テルムへ移動。

向日葵の事は桜たちに頼み、蓮とザディオはさっそく鍛冶の準備。
桜たちは出店で食事を買ってきたり、工房の裏でピクニックをしたりして時間を潰しておくそうだ。

蓮はザディオに説明するために作りたい武器の形状を絵に描いた。

なかご目釘穴めくぎあながある事は同じだが、片刃であることや刀身の湾曲、しのぎや峰など細かく説明。

その間にドラコは鱗を用意するために工房の裏へ出た。
一度人化を解いて竜型に戻り、向日葵が大の字で寝転がれるほど大きく分厚い赤黒色せきこくいろの鱗を1枚を抱えて帰ってきた。

左には鱗を、そして何やら右側には直径30cmセンチメートルほどの真玉しんぎょくの何かを抱えている。
赤黒い鱗よりも明るく、緋色に所々、闇を混ぜ込んだような色。

「か、感謝して使いなさいよね」

蓮は差し出された鱗と何かを受け取り重さに驚いた。
ドラコは軽々しく持っているため油断したが、重さに気が付き力を込めるのが一瞬遅れていれば床に落としていたところだ。

気を取り直し、蓮はドラコに感謝を伝え、受け取った鱗と球体を鑑定した。

鑑定
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【赤黒竜の鱗 レア度:SS】
・高濃度の魔素を含んでおり、超高硬度。
・魔力伝導率(大)。
・闘気伝導率(大)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
緋緋色金ひひいろかねレア度:SSS】
・高濃度の魔素を含んでおり、超高硬度。
・魔力伝導率(大)。
・闘気伝導率(大)。
・火魔法(大)
・火耐性(大)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ドラコによれば、竜族の中でも上位の者の体内でのみ生成される特殊な物質。
1000年程度生きた竜族は、物質がもっと大きくなるため、吐き出し、竜の山の頂に成長の証として飾るそうだ。

「そんな大事な物……。本当にもらって良いの?」

蓮が聞くとドラコは『だ、だから感謝して使いなさいって言ってるでしょ』と恥ずかしそうに答えた。
身体の一部を渡すのだ。
女性として恥ずかしくなるのは当然だろうと思い、蓮はそれ以上を聞かなかった。
そのやりとりを遠目に見ていたユグドラシルは、蓮の鈍さとドラコのはっきりとしない態度に歯がゆさを感じながらも微笑ましく思い何も言わずに笑みを浮かべた。

蓮はさっそく2つの素材を錬金術で質を高める。
ミスリルの時とは比べ物にならないほどのMPを持って行かれる。
鱗だけでもMPが枯渇してしまい、見かねたユグドラシルは、蓮に世界樹の実を3つ渡した。

それだけではまた枯渇してしまうと思い、MP、知力、抵抗力を上昇させる魔力系統向上マジックブーストという支援魔法を蓮に使用した。

爆発的に増えたMPのお陰で緋緋色金ひひいろかねの時は枯渇には至らなかったが、回復が必要になるほどには持って行かれた。

錬金術を使用したことで鱗と緋緋色金ひひいろかねは元よりも二回りほど小さくなったが、その分、純度と硬度はより高くなっている。

「全く分からねぇが混ぜた方がいい気がするな」

ザディオの鍛冶師としての勘が言っているそうだ。
緋緋色金ひひいろかねの硬度は極めて高い。
しかし、靭性じんせいが足りないため、緋緋色金ひひいろかねだけで作ると武器が折れやすくなくなる可能性がある。
そのため、鱗も混ぜ込みながら作った方が良いというのだ。

ザディオが経験則で説明すると、蓮は鍛冶神ヘパイストスの加護と予知スキルのお陰で、ザディオの読みが正しいことを理解する事ができた。

蓮は緋緋色金ひひいろかねのインゴットを、ザディオは鱗からできたインゴットを火箸で挟み、同時に炉に入れる。
そしてそれをドラコの火魔法で加熱する。

ミスリルの時とは比べ物にならないほどの熱量。
ドラコが一瞬でも魔力制御を失敗し、周囲に熱が漏れ出れば、瞬く間に工房は消し炭と化すだろう。

特に緋緋色金ひひいろかねは火耐性(大)を有している。
真剣な表情で炎を操るドラコを見て、火魔法に優れたドラコでなければ、加工できるほどの温度まで加熱することはできなかっただろうと感じた。

先に赤く光を放つほど加熱された鱗の温度を保ちながら、緋緋色金ひひいろかねへの加熱を加速する。

2つが同じように赤く染まったのを確認し、蓮とザディオは二つを重ね、交互につちを振り下ろした。
フェン達の剣を作り終えてから、余ったミスリルで作った特製の鎚。

コォーン……。
コォーン……。

その音を聞き、再びユグドラシルが駆け付け蓮とザディオに支援魔法をかける。
使用したのは昨日同様の身体能力向上ストレングス自動回復オートヒール
しかし、使用した魔法は同じでも、ユグドラシルの支援魔法は桜よりも遥かに効果が高い。

蓮とザディオは込めると力と速さを増して対を振り下ろす。
ドラコも真剣な表情で温度を下げないように火魔法を駆使している。

叩き、伸ばし、混ぜ込むように折り返し、また叩き伸ばす。
その工程を5回ほど繰り返してから刀の形に整えてゆく。

時を忘れ、集中に集中を重ね。
蓮は錬金術の2つ目の効果である伝導率向上を図るために、SPとMPを惜しみなく注ぎ続けた。

様々な工程を経て刀身を作り、柄を作り、鍔を作る。
蓮の筋力は充分なため、軽量化を図らずに、柄も鍔も同材質。

周囲の声や音が聞こえなくなるほどに鍛冶に没頭すること数時間。
完成の気配を感じ桜と向日葵とユグドラシルが工房に入って来た。

「これをお使いください」

ユグドラシルが差し出したのは極めて細く束ねられたリルの毛。
フェンに渡した剣には革を巻き付けていた。
同じように何かを巻き付けるのだろうと思い、リルが気を利かせたそうだ。

扉の向こうに見えるリルと目が合い、蓮は頷き、仕草で感謝を示した。

出来た刀の柄に巻き付け、柄頭を刀身と同じ材質でて止める。

「できた!」

蓮の完成の声と同時に完成した刀が光を放つ。

「し、神剣化しんけんかしやがったか!」

ザディオが言葉を発した。
それはただの武具が、女神に見初められ、魔物に対する圧倒的な力を宿すときに起こる特殊な現象。

光が収まると同時に蓮は鑑定した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【神剣・竜狼蓮華りゅうろうれんげ:レア度SSS】
・物理攻撃力:+5100
・魔力伝導率:+1500%
・闘気伝導率:+1500%
・特殊効果:滅魔、斬撃強化、身体強化、火魔法耐性、獄炎ごくえん、時空魔法耐性、敏捷強化
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

刀身と鍔は、闇の炎を形にしたかのような赤黒い煌めきを放っている。
空気ですら斬り裂きそうな鋭利な刀身と、白銀に彩られた綺麗な柄。

刀剣としての美しさもさることながら、性能の高さに驚く。
同じ材質でも形状が異なれば、ここまでの性能は出なかったのかもしれない。

鑑定をした蓮とザディオは、歓喜し、言葉無く勢いよく手を取り合った。
まるで腕相撲をするように手を握り互いに喜びを分かち合った。

ザディオは神剣を自身が生み出したこと、超希少素材を扱えたことを誇りに思い、一生の思い出になったと感謝を言葉にした。

蓮は素材を提供してくれたドラコとリル、そして力を貸してくれたユグドラシルに感謝を伝えた。

「鞘は私が用意しても?」

ユグドラシルがそう言うと蓮は『ぜひ』と笑顔で依頼した。
するとユグドラシルは刀に合わせて、黒檀こくたんの様に黒い樹を生み出し、形状を変えて鞘を作り蓮に渡した。
桜と向日葵の羨ましそうな表情を見て、ユグドラシルは『お家に帰ったら用意しますね』と言葉にし、2人を宥めた。
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