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異世界生活:グリーデン編
フェンリルとドラゴンと精霊の素材
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桜の話しを聞き終え、今度は蓮が今日の出来事や今後について説明することにした。
マンティコアが特別指定討伐対象だったこと。
そのため近日、レグナムから視察団が来ること。
パレードへの出席は拒めない事などを説明。
「グランさんによれば、15日前後は拘束される可能性があるみたいなんだ」
特別指定討伐対象の討伐によるパレード自体は1日。
しかし、その前に王への謁見やパレードの準備や練習がある。
パレード後は、蓮の脅威的な戦闘力を取り込もうと王都に住めと言う話があると予測されるそうだ。
その話を聞いて『しつこいようなら帰ればいいじゃない』とドラコが言う。
グランに迷惑がかかることを説明すると『人間って面倒なのね』とため息をついた。
残された時間は約10日。
蓮はその短い期間にやることを説明。
まずは武器作り。
その後、おそらく調合師と面談し、雇用。
一緒に大樹の家に戻り、予備のポーション樽を作成。
王都に拘束される期間分を事前に収めておきたいことなどを説明した。
そして最後に、不確定要素が多いため、大枠でしか説明ができないと言葉を付け加えた。
「あ、そうだ。武器はミスリルで作るんだけどさ……」
蓮はミスリルを加工するために火力が足らないため、ドラコに助力を依頼。
まんざらでもない表情でドラコは快諾した。
頼られて気分が良いようだ。
その話を聞いてユグドラシルが『あら。お声がけいただけましたら新しい剣をご用意いたしますのに……』と寂しそうに言葉にした。
控えめにいっても神々しい巨乳美女のユグドラシルの容姿と表情に、蓮は不覚にもドキっとしてしまった。
『甘えてばかりはいられませんし、やってみたかったんです』と慌てて否定するが、鼻の下を伸ばしているのではないかと疑う桜の視線が突き刺さり痛い。
「ふ、ふん!ミスリルなんかで作るなら私の鱗で作ればいいじゃないの!」
腕組みをし、なぜかやや不機嫌そうにドラコが言う。
蓮が『いやいや。もらうわけにはいかないよ』と言うと、ドラコはそっぽを向きながら『べ、別にあんたならいいわよ』と答えた。
少し頬を赤らめているようにも見える。
蓮はリルとドラコを家族に迎え入れた時に、2人の身体の一部をもらわないと決めた。
家族を魔物として見たり、素材として見たくなかったからだ。
その思いは桜も同じだった。
リルとドラコはそのことに気が付いていた。
両名共に絶対強者にして、超がいくつ付くか分からないほどの希少な魔物。
目撃した人間、特に人族は怯えて逃げ出すか素材を手に入れようと無謀な戦いを挑むかの二択だった。
だからこそ、蓮たちと居ることが新鮮であり心地よくあった。
「良いのですか?」
ユグドラシルがドラコに聞くとドラコは『き、聞くんじゃないわよ』と答えた。
何やらユグドラシルも嬉しそうな笑みを浮かべている。
蓮は意味は理解できなかったが、何か特別な想いがある事だけは感じ取れた。
「ありがとう。一生の宝物になるように最高の剣を作るよ」
大切な家族から受け取る体の一部と特別な想い。
蓮が真っすぐな瞳でドラコに伝えると、ドラコは今まで以上に赤面し『好きにしなさい』と答えた。
「ひぃちゃんも!ひぃちゃんも!」
話を聞いていた向日葵が、自分も新しい物が欲しいとせがむ。
それを聞いたユグドラシルが誉だと言わんばかりに明るい表情で『ではサクラ様とヒマワリ様の分は私が明日お作りしますね』と答えた。
「ふむ。では我の毛も使うと良い」
その言葉に最も驚いたのは白狼族の3人。
ついで、ドラコとユグドラシルも目を見開くようにして驚きの表情を浮かべた。
「あんた本当に丸くなったわね」
あまりの驚きにドラコは声を漏らした。
ユグドラシルは精霊のため崇められる事はあっても狙われる事はない。
そのため、リルやドラコとは少し立場が違う。
ドラコよりも長く生きているリルは経験が多い分、より一層、人間への嫌悪は強い。
そのリルが人間。
しかも人族へ自ら体毛を提供する。
ドラコ以上に大事なのだろう。
竜族の鱗。
フェンリルの王の体毛。
精霊ユグドラシルが提供する世界樹の装備。
何かとんでもないことが起こりそうな予感がする。
桜も向日葵もフェン達も興味津々。
「私も一緒に行きたい!メイちゃんも行かない?」
桜の誘いにメイも心が躍る。
一体何ができるのか興味しかない。
「お、俺らもいいか?」
フェンとローも冷静を装って入るが、誰もが知る最強の種族である竜族の鱗とフェンリルの体毛で何ができるのかが楽しみで仕方がないという表情だ。
蓮はもちろん快諾。
明日の朝。
1回目の鐘が鳴る頃に武器防具工房テルムに行くことを説明。
「王都に行ったら暫く会えないだろうから、今のうちに遊んでおこうね」
桜と向日葵に、メイに依存してほしくはないが、せっかくできた異世界の友人との思い出を大切にしてほしい。
そう思い声をかけると桜は頷き、向日葵は少し寂しそうな表情を浮かべた。
「またあるよ。きっと。ううん。絶対!」
冒険者は危険と隣り合わせ。
いつ死を迎えるか分からない職業だ。
その事を知っているからこそメイは断言を避けそうになった。
しかし、必ず生きて再会するという決意を込めて、断言することにした。
「さっき受付で聞いたんだが……」
フェンが先ほどクエスト完了の報告をしたときに、受付からゴブリン討伐と調査の特別クエストへの出発を早めると言われたそうだ。
思いのほか早くにAランク昇格が決まった事と、ゴブリンの動きが活発化しているそうだ。
出発は3日後の早朝。
明日は工房テルムへの見学と自由行動。
明後日はアイテムや装備を整える準備の日にあてるそうだ
蓮はゴブリンの話を聞くたびに嫌な予感がして仕方がない。
根拠も何もない漠然とした不安なはずなのだが、予知のスキルのせいか確信に近いものがある。
不安を煽る訳にもいかないため、健闘を祈る事しかできず、その日は眠り熊で休むこととなった。
マンティコアが特別指定討伐対象だったこと。
そのため近日、レグナムから視察団が来ること。
パレードへの出席は拒めない事などを説明。
「グランさんによれば、15日前後は拘束される可能性があるみたいなんだ」
特別指定討伐対象の討伐によるパレード自体は1日。
しかし、その前に王への謁見やパレードの準備や練習がある。
パレード後は、蓮の脅威的な戦闘力を取り込もうと王都に住めと言う話があると予測されるそうだ。
その話を聞いて『しつこいようなら帰ればいいじゃない』とドラコが言う。
グランに迷惑がかかることを説明すると『人間って面倒なのね』とため息をついた。
残された時間は約10日。
蓮はその短い期間にやることを説明。
まずは武器作り。
その後、おそらく調合師と面談し、雇用。
一緒に大樹の家に戻り、予備のポーション樽を作成。
王都に拘束される期間分を事前に収めておきたいことなどを説明した。
そして最後に、不確定要素が多いため、大枠でしか説明ができないと言葉を付け加えた。
「あ、そうだ。武器はミスリルで作るんだけどさ……」
蓮はミスリルを加工するために火力が足らないため、ドラコに助力を依頼。
まんざらでもない表情でドラコは快諾した。
頼られて気分が良いようだ。
その話を聞いてユグドラシルが『あら。お声がけいただけましたら新しい剣をご用意いたしますのに……』と寂しそうに言葉にした。
控えめにいっても神々しい巨乳美女のユグドラシルの容姿と表情に、蓮は不覚にもドキっとしてしまった。
『甘えてばかりはいられませんし、やってみたかったんです』と慌てて否定するが、鼻の下を伸ばしているのではないかと疑う桜の視線が突き刺さり痛い。
「ふ、ふん!ミスリルなんかで作るなら私の鱗で作ればいいじゃないの!」
腕組みをし、なぜかやや不機嫌そうにドラコが言う。
蓮が『いやいや。もらうわけにはいかないよ』と言うと、ドラコはそっぽを向きながら『べ、別にあんたならいいわよ』と答えた。
少し頬を赤らめているようにも見える。
蓮はリルとドラコを家族に迎え入れた時に、2人の身体の一部をもらわないと決めた。
家族を魔物として見たり、素材として見たくなかったからだ。
その思いは桜も同じだった。
リルとドラコはそのことに気が付いていた。
両名共に絶対強者にして、超がいくつ付くか分からないほどの希少な魔物。
目撃した人間、特に人族は怯えて逃げ出すか素材を手に入れようと無謀な戦いを挑むかの二択だった。
だからこそ、蓮たちと居ることが新鮮であり心地よくあった。
「良いのですか?」
ユグドラシルがドラコに聞くとドラコは『き、聞くんじゃないわよ』と答えた。
何やらユグドラシルも嬉しそうな笑みを浮かべている。
蓮は意味は理解できなかったが、何か特別な想いがある事だけは感じ取れた。
「ありがとう。一生の宝物になるように最高の剣を作るよ」
大切な家族から受け取る体の一部と特別な想い。
蓮が真っすぐな瞳でドラコに伝えると、ドラコは今まで以上に赤面し『好きにしなさい』と答えた。
「ひぃちゃんも!ひぃちゃんも!」
話を聞いていた向日葵が、自分も新しい物が欲しいとせがむ。
それを聞いたユグドラシルが誉だと言わんばかりに明るい表情で『ではサクラ様とヒマワリ様の分は私が明日お作りしますね』と答えた。
「ふむ。では我の毛も使うと良い」
その言葉に最も驚いたのは白狼族の3人。
ついで、ドラコとユグドラシルも目を見開くようにして驚きの表情を浮かべた。
「あんた本当に丸くなったわね」
あまりの驚きにドラコは声を漏らした。
ユグドラシルは精霊のため崇められる事はあっても狙われる事はない。
そのため、リルやドラコとは少し立場が違う。
ドラコよりも長く生きているリルは経験が多い分、より一層、人間への嫌悪は強い。
そのリルが人間。
しかも人族へ自ら体毛を提供する。
ドラコ以上に大事なのだろう。
竜族の鱗。
フェンリルの王の体毛。
精霊ユグドラシルが提供する世界樹の装備。
何かとんでもないことが起こりそうな予感がする。
桜も向日葵もフェン達も興味津々。
「私も一緒に行きたい!メイちゃんも行かない?」
桜の誘いにメイも心が躍る。
一体何ができるのか興味しかない。
「お、俺らもいいか?」
フェンとローも冷静を装って入るが、誰もが知る最強の種族である竜族の鱗とフェンリルの体毛で何ができるのかが楽しみで仕方がないという表情だ。
蓮はもちろん快諾。
明日の朝。
1回目の鐘が鳴る頃に武器防具工房テルムに行くことを説明。
「王都に行ったら暫く会えないだろうから、今のうちに遊んでおこうね」
桜と向日葵に、メイに依存してほしくはないが、せっかくできた異世界の友人との思い出を大切にしてほしい。
そう思い声をかけると桜は頷き、向日葵は少し寂しそうな表情を浮かべた。
「またあるよ。きっと。ううん。絶対!」
冒険者は危険と隣り合わせ。
いつ死を迎えるか分からない職業だ。
その事を知っているからこそメイは断言を避けそうになった。
しかし、必ず生きて再会するという決意を込めて、断言することにした。
「さっき受付で聞いたんだが……」
フェンが先ほどクエスト完了の報告をしたときに、受付からゴブリン討伐と調査の特別クエストへの出発を早めると言われたそうだ。
思いのほか早くにAランク昇格が決まった事と、ゴブリンの動きが活発化しているそうだ。
出発は3日後の早朝。
明日は工房テルムへの見学と自由行動。
明後日はアイテムや装備を整える準備の日にあてるそうだ
蓮はゴブリンの話を聞くたびに嫌な予感がして仕方がない。
根拠も何もない漠然とした不安なはずなのだが、予知のスキルのせいか確信に近いものがある。
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