異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー

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異世界生活:グリーデン編

親心と兄心

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錬金術の練習と素材の用意を終えて、冒険者ギルドへ着いた。
空が夕焼けに染まり始める。
間もなく3回目の鐘が鳴る頃だろう。

受付に行くがまだ桜たちの姿は見えない。

「ミミィさん。妹はまだ戻ってないですか?」

「あ、レン様。はい。まだです」

心配そうに聞く蓮に対して、申し訳なさそうな様子のミミィ。
蓮に黙ってクエストへの同行許可を出したことで自責の念があるのだろう。

蓮と桜はCランク冒険者。
Bランクのクエストまでしか受けることはできない。
そのため、ドラコとユグドラシルが自分たちが護衛するから大丈夫だ言い、フェンたちに同行という形で行動を共にすることとなった。

朝、アニィから聞いた話では、フェン達が受けたクエストはAランクの討伐系クエスト。
討伐対象はシルバーウルフ。
ホワイトウルフを複数従えているため、討伐が困難。
放置すれば群れは増え、村や旅人、行商人などを襲い、被害が拡大する。
難易度が高い分、重要な任務だ。
失敗は死を意味するだろう。

そんな危険なクエストに同行するなど蓮が許すはずがない。

妹の成長と捉えるべきか、危険行動と捉えるべきかは迷うところだが、ドラコとユグドラシルには言って聞かせなければならない。

許可を出したこと自体は受付の落ち度ではあるが、この世界の住人が精霊に言われて断れるわけがない。

「そんな顔しないでください。せっかくの美人が台無しですよ」

蓮が笑顔で言うとミミィは頬と長く伸びた耳を赤らめながら『ふ、ふざけないでください』と怒った素振りを見せたが、まんざらでもない様子だ。

「それで売れ行きはどうですか?」

蓮が聞くと、横に居たアニィが『うちの子をたぶらかさないでくださいね』と前置きをして状況説明をしてくれた。

「どの味が、どれだけ売れたかは分かりませんが、現時点でおおよそ白金貨4枚の売り上げがあります」

蓮が納めたポーションはリンゴ、ミカン、ブドウの3つの味。
それぞれ1000杯は注げるように樽を作っている。
1杯銅貨4枚で販売するため1樽白金貨4枚相当。
3樽完売で白金貨12枚。

つまり現時点で3分の1程度のポーションが無くなっている計算になる。

「1人2杯までに制限して良かったですね」

聞けばグリーデンで活動している冒険者は約300人。
職人は全業種の合計で約80人。

半数以上の者が毎日2杯ずつ買いに来ている計算になる。
制限をかけなければ買い占めが起きていただろう。

しかし2日で3分の1なら後4日でなくなる計算になる。

グランにパレードなどで王都に拘束される日数を確認して、樽をいくつ予備で用意しすれば良いのか計算しなければならない。

「後でグランさんと話をさせてください」

そういうと蓮は振り返り、出入り口を見た。
その行動を不思議に思い、ミミィとアニィもつられて出入り口を見る。

すると細い腕で自由扉を押し、騒がしい一団が入って来た。
話している途中から接近を感じ取っていたため、蓮は間もなく桜たちが入ってくるとわかった。

自由扉を押した細い腕の主はメイ。
メイと手を繋いで入ってきたのは向日葵。
その光景を優しい表情で身ながらすぐ後ろから入ってきたのが桜。
次いでフェンとロー、ドラコとユグドラシルだ。

リルは外で待っているようだ。

「にぃにー!」

「おかえりぃ!」

蓮は駆け寄った向日葵を抱き上げてクルクルと回い抱き留めた。

叱る。注意する。指摘する。促す。
兄として、保護者として言わなければならないことは多くある。

「おかえり」

蓮が向日葵を抱えたまま桜に近づき声をかける。
メイが桜を擁護するために割って入ろうとするのをフェンが止めた。
家族の問題に他者が介入するものではないと、同じく妹を愛する兄として、身をもって知っているからだ。

「た、ただいま……。その……。ごめんなさ」

蓮は謝ろうとする桜の前に人差し指を立てて制止。
そして向日葵と同じように抱き締めた。

「ちゃんと声かけてから出かけようね。スマホないからさ」

蓮は冗談交じりに、もう一度先日と同じ約束をし、一切の指摘をしなかった。
『兄であり保護者だから、心配や迷惑はかけてもいい。でも黙っていくのは無しにしよう』と言葉を続けた。

蓮の言葉に桜が頷く。

「ご飯食べならが冒険の話しを聞かせてよ。楽しかったんでしょ?」

蓮が明るく言うと桜の表情も明るい表情で『うん!』と答えた。

「ドラコとユグドラシルさんは、1週間ひまちゃんの抱っこ禁止で許してあげるね」

晩御飯抜き。
ゲンコツ。
廊下に立ってなさい。

古くから色々な罰の方法があるが、2人にはこれが1番効くだろう。

「そ、そんなぁ!悪かったよぉ!」

「どうかお考え直しくださいぃ!」

案の定、半泣きで謝ってきた。
二度と無断で討伐クエストに行かないことを固く約束させて許すことにした。


受付でフェン達がクエスト完了の手続きとクエスト報酬の受け取りを済ませるのを待ち、一緒に一度外に出て裏から解体場へ移動。

向日葵は裏の訓練場でリルとドラコとユグドラシルと追いかけっこをしている。
ほどよく追いかけられ、そして捕まるを繰り返しているため上機嫌だ。

その間に討伐クエストの魔物をハンディルに渡す。
多くの者はアイテムボックスを持っていない。
そのため、討伐した魔物の身体の一部を持ち帰りクエスト完了報告と一緒に受付に渡すのが通例。
しかし、今回は桜が素材がもったいないと丸ごと持ち帰ったため、解体場に届けに来たのだ。

「また来たのか!?」

蓮が解体場に入るや否やハンディルが後ずさりした。
今回は白狼の一団の分だと説明し、桜がアイテムボックスからどんどん狼型の魔物を出してゆく。

「お、お前ら兄妹揃って怪物だな」

桜がアイテムボックスから取り出したのはシルバーウルフ1体とホワイトウルフ17体。
群れとしてはかなり大型の部類だったそうだ。

先ほどやっと蓮の持ち込んだ魔物の解体が終わったばかりだそうだ。
そのため、代金もまだ計算ができていないらしい。

桜が予備のリンゴを渡しながら『すみません。体調気をつけてださいね』と言うとハンディルは恥ずかしそうに『ま、任せとけってんだ』と言って解体を始めた。

ハンディルは巨人族の血を引くため大柄。
小柄で顔立ちの整った桜の、意図せず行う上目遣いの破壊力は大きかったようだ。

解体を待っていては遅くなるため、素材の代金受け取りは明日にしてもらった。
グランにパレードで何日程度拘束されるのか確認して、小熊のしっぽに移動することにした。
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