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異世界生活:グリーデン編
伝説の魔物
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冒険者ギルドの受付横の通路を抜けて、解体場へ向かう。
訓練場の方向にあるのは大型の魔物の搬入用の裏口。
今回はギルドの建物内の通路を通り向かう。
スライド式のドアを開けて中に入ると、ちょうど小型の魔物を解体しているハンディルが居た。
「こんにちは。今回も大きいやつが多いんで持ってきました」
「おう!この前の旦那じゃねぇか!」
ハンディルは蓮を見ると、今日も何か凄い魔物を持ってきたのではないかと胸を躍らせた。
前回や同様に最も大きなテーブルに置くように指示されたため、どんどん重ねておいてゆく。
プルサルディノスにオーガを4体。
ブルーオーガとレッドオーガを2体ずつ。
オーク12体とオークジェネラル3体に、オークキングが1体。
グリフォン2体にラージグリフォン1体。
タイラントエイプ2体、オルトロス3体、アイアンリザード1体。
「お、おいおい……いったいどうやったらこんなに倒せるんだ……」
オークは討伐危険度Dランク。
オーガはCランク。
それ以外はBランクとAランク。
そして、ラージアグリフォンとタイラントエイプはA+ランクとされている超危険ランクの魔物だそうだ。
「おい!レンが来てるって聞いた……ぞ……」
遅れてグランとミミィがやってきた。
どうやら蓮が解体場に向かったことをミミィから聞き、慌ててやってきたようだ。
グランはスライド式のドアを開けたところまでは良かったが、高ランクの魔物の死体の山に度肝を抜かれた。
「あ、あのぉ。もう一匹出して良いですか?」
蓮は出しにくくなる前に先に断りを入れてから別のテーブルに取り出した。
漆黒の翼と蠍のような尾。
悪魔と獅子を混ぜ合わせたような不吉な顔立ち。
テーブルに出した瞬間、テーブルが重さに耐えきれずに潰れてしまった。
「お、おい……。これってまさか……」
「あ、あぁ。間違いないだうろな」
グランとハンディルは顔を見わせ、自身の認識が間違っていないかを確認した。
そして意見が合致したところでグランはミミィに何かを持ってくるように指示した。
「お、おい。こいつはユグドラシル様が倒したのか?」
グランの質問に蓮が『違いますよぉ』と嬉しそうに返事をする。
蓮が今まで倒した魔物の中で圧倒的に一番の大物。
自慢げに話をしたいが、遮るようにグランが言葉にした。
「そ、そうか。じゃあリル殿かドラコ殿か。なら納得だ」
「あ、ああ。噂のフェンリルか竜なら勝てるだろうな」
グランとハンディルが再び顔を見合わせて頷き合う。
蓮は慌てて自身が倒したことを説明した。
蓮の否定を聞いて、グランとハンディルの時が止まる。
「お、お待たせしました!」
ミミィが指示された物を持ってきた。
分厚く大きく、かなり古い本だ。
果たして何十年前に書かれた物だろうか。
表紙には『勇者タナカの冒険譚:第7弾と書かれている』
グランがテーブルにおいてペラペラと捲り、半分を過ぎたところで止めた。
「ここだ。ここに書かれている伝説の魔物がマンティコアなんだ」
渓谷に辿り着いたという伝説の勇者。
その名はタナカ。
いや、たぶんきっと田中だろう。
その開かれた左ページに描かれているのは、勇者とマンティコアが対峙する絵。
そして右ページの文章には『勇者はマンティコアの左目を斬りつけ生まれた死角から……』と戦いが綴られている。
「左目の傷って……」
蓮は自身が倒したマンティコアを見た。
回には傷がある。
確かに左の瞼には、蓮が斬りつけた記憶のない傷が残っている。
「この勇者って、マンティコア倒したんですよね?」
蓮の言葉を聞き、グランは首を横に振り、そして最後に近いページを開いた。
「この本によればマンティコアは闇に覆われた翼で空高く飛び、雲に隠れ逃げたそうだ」
グランの話しを聞いて、今度は蓮の時が止まる。
そして、蓮はグラン、ハンディル、ミミィと順に視線を移し、自身の成し遂げたことを実感した。
偉業のはずが、どこか取り返しのつかないことをしでかしたかのような雰囲気だ。
「か、買い取れます?」
蓮の質問にグランとハンディルは『白金貨何枚になるかわからない』と答えた。
当然のように支払いは後日となり、できる限りで買取を依頼した。
あまり大々的に市場に出すと、大騒ぎになる可能性が高いため、少しずつ進めてくれるそうだ。
蓮は後を任せて小熊のしっぽに移動。
蓮が行くと桜と向日葵に遅いと怒られてしまった。
メイとの食事を楽しみにしていたのだろう。
向日葵の号令で頂きます。
食べながら談笑する。
リンゴポーションを買ったこと。
浮いたお金でメイの短剣を新調したこと。
次のクエストが完了すればAランク冒険者に昇格すること。
クエストで野宿をするときにフェンが夕食を失敗して喧嘩になったこと。
異世界ならではの出来事が多く、白狼の一団の話しはいつも新鮮。
時間はあっという間に過ぎていった。
「気を付けてくださいね」
食事を終える頃、気になる話があり、蓮は少し心配そうに白狼の一団に伝えた。
聞けば7日後以降のクエストはゴブリンの数を減らす事と増えた原因の調査だそうだ。
ゴブリンはまだ対峙したことはないが、数が多く狡猾で残忍な性格だと以前に教わった。
場所はグリーデンから遠く東側に移動した先にあるイースト村という小さな村。
小さいが農業が盛んで、グリーデンで使用される農作物の多くを担っている、生命線ともいえる村だそうだ。
「ああ。任せておけ」
フェンの表情からは過信や慢心、油断は感じられない。
しかし、不安が尽きない。
「まぁその前に後1つ討伐クエストを達成しないといけないんだけどね」
優しい口調で話すのはロー。
ゴブリン関係のクエストは通常FランクやEランク程度の物が多い。
今回、恐らく増えている理由にゴブリンジェネラルやゴブリンキングなど、上位種が居ることが想定されるため、グランの判断でAランクに引き上げられている特別クエストだそうだ。
本来はAランク冒険者が受けるクエストだが、クエストの達成率の高さから、次のクエスト達成でのAランクを昇格を見越して抜擢されたらしい。
何かあれば無理をせずに逃げることも視野に入れるように伝え、食事を終えた。
訓練場の方向にあるのは大型の魔物の搬入用の裏口。
今回はギルドの建物内の通路を通り向かう。
スライド式のドアを開けて中に入ると、ちょうど小型の魔物を解体しているハンディルが居た。
「こんにちは。今回も大きいやつが多いんで持ってきました」
「おう!この前の旦那じゃねぇか!」
ハンディルは蓮を見ると、今日も何か凄い魔物を持ってきたのではないかと胸を躍らせた。
前回や同様に最も大きなテーブルに置くように指示されたため、どんどん重ねておいてゆく。
プルサルディノスにオーガを4体。
ブルーオーガとレッドオーガを2体ずつ。
オーク12体とオークジェネラル3体に、オークキングが1体。
グリフォン2体にラージグリフォン1体。
タイラントエイプ2体、オルトロス3体、アイアンリザード1体。
「お、おいおい……いったいどうやったらこんなに倒せるんだ……」
オークは討伐危険度Dランク。
オーガはCランク。
それ以外はBランクとAランク。
そして、ラージアグリフォンとタイラントエイプはA+ランクとされている超危険ランクの魔物だそうだ。
「おい!レンが来てるって聞いた……ぞ……」
遅れてグランとミミィがやってきた。
どうやら蓮が解体場に向かったことをミミィから聞き、慌ててやってきたようだ。
グランはスライド式のドアを開けたところまでは良かったが、高ランクの魔物の死体の山に度肝を抜かれた。
「あ、あのぉ。もう一匹出して良いですか?」
蓮は出しにくくなる前に先に断りを入れてから別のテーブルに取り出した。
漆黒の翼と蠍のような尾。
悪魔と獅子を混ぜ合わせたような不吉な顔立ち。
テーブルに出した瞬間、テーブルが重さに耐えきれずに潰れてしまった。
「お、おい……。これってまさか……」
「あ、あぁ。間違いないだうろな」
グランとハンディルは顔を見わせ、自身の認識が間違っていないかを確認した。
そして意見が合致したところでグランはミミィに何かを持ってくるように指示した。
「お、おい。こいつはユグドラシル様が倒したのか?」
グランの質問に蓮が『違いますよぉ』と嬉しそうに返事をする。
蓮が今まで倒した魔物の中で圧倒的に一番の大物。
自慢げに話をしたいが、遮るようにグランが言葉にした。
「そ、そうか。じゃあリル殿かドラコ殿か。なら納得だ」
「あ、ああ。噂のフェンリルか竜なら勝てるだろうな」
グランとハンディルが再び顔を見合わせて頷き合う。
蓮は慌てて自身が倒したことを説明した。
蓮の否定を聞いて、グランとハンディルの時が止まる。
「お、お待たせしました!」
ミミィが指示された物を持ってきた。
分厚く大きく、かなり古い本だ。
果たして何十年前に書かれた物だろうか。
表紙には『勇者タナカの冒険譚:第7弾と書かれている』
グランがテーブルにおいてペラペラと捲り、半分を過ぎたところで止めた。
「ここだ。ここに書かれている伝説の魔物がマンティコアなんだ」
渓谷に辿り着いたという伝説の勇者。
その名はタナカ。
いや、たぶんきっと田中だろう。
その開かれた左ページに描かれているのは、勇者とマンティコアが対峙する絵。
そして右ページの文章には『勇者はマンティコアの左目を斬りつけ生まれた死角から……』と戦いが綴られている。
「左目の傷って……」
蓮は自身が倒したマンティコアを見た。
回には傷がある。
確かに左の瞼には、蓮が斬りつけた記憶のない傷が残っている。
「この勇者って、マンティコア倒したんですよね?」
蓮の言葉を聞き、グランは首を横に振り、そして最後に近いページを開いた。
「この本によればマンティコアは闇に覆われた翼で空高く飛び、雲に隠れ逃げたそうだ」
グランの話しを聞いて、今度は蓮の時が止まる。
そして、蓮はグラン、ハンディル、ミミィと順に視線を移し、自身の成し遂げたことを実感した。
偉業のはずが、どこか取り返しのつかないことをしでかしたかのような雰囲気だ。
「か、買い取れます?」
蓮の質問にグランとハンディルは『白金貨何枚になるかわからない』と答えた。
当然のように支払いは後日となり、できる限りで買取を依頼した。
あまり大々的に市場に出すと、大騒ぎになる可能性が高いため、少しずつ進めてくれるそうだ。
蓮は後を任せて小熊のしっぽに移動。
蓮が行くと桜と向日葵に遅いと怒られてしまった。
メイとの食事を楽しみにしていたのだろう。
向日葵の号令で頂きます。
食べながら談笑する。
リンゴポーションを買ったこと。
浮いたお金でメイの短剣を新調したこと。
次のクエストが完了すればAランク冒険者に昇格すること。
クエストで野宿をするときにフェンが夕食を失敗して喧嘩になったこと。
異世界ならではの出来事が多く、白狼の一団の話しはいつも新鮮。
時間はあっという間に過ぎていった。
「気を付けてくださいね」
食事を終える頃、気になる話があり、蓮は少し心配そうに白狼の一団に伝えた。
聞けば7日後以降のクエストはゴブリンの数を減らす事と増えた原因の調査だそうだ。
ゴブリンはまだ対峙したことはないが、数が多く狡猾で残忍な性格だと以前に教わった。
場所はグリーデンから遠く東側に移動した先にあるイースト村という小さな村。
小さいが農業が盛んで、グリーデンで使用される農作物の多くを担っている、生命線ともいえる村だそうだ。
「ああ。任せておけ」
フェンの表情からは過信や慢心、油断は感じられない。
しかし、不安が尽きない。
「まぁその前に後1つ討伐クエストを達成しないといけないんだけどね」
優しい口調で話すのはロー。
ゴブリン関係のクエストは通常FランクやEランク程度の物が多い。
今回、恐らく増えている理由にゴブリンジェネラルやゴブリンキングなど、上位種が居ることが想定されるため、グランの判断でAランクに引き上げられている特別クエストだそうだ。
本来はAランク冒険者が受けるクエストだが、クエストの達成率の高さから、次のクエスト達成でのAランクを昇格を見越して抜擢されたらしい。
何かあれば無理をせずに逃げることも視野に入れるように伝え、食事を終えた。
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