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異世界生活:グリーデン編

死線を超えて

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蓮が目覚めた時、目に映ったのは暗闇に散りばめられた無数の輝く星。
輝き草も何もない大地を、明かり無しで見えるほどに照らされている。

マンティコアあいつはっ!?っつぅ……」

かすれ行く意識の中で、マンティコアのもがく音が聞こえなくなり、リルが何かを話していたのを聞いた。

「無理をすれば死ぬぞ」

リルはそう言うと、足元にあった世界樹の実を食べるように指示。
リルの声が聞こえ、蓮はゆっくりと体を起こし、手に取り一齧り。
すると、たちまち傷も体力も、枯渇していた魔力も完全回復。

「よくやったな」

リルはそう言いながら森に視線を向けた。
その視線の先にはマンティコアが横たわっていた。

リルによれば腐食が進まぬように、時空魔法で時を止め、他の魔物が寄り付かないように結界魔法をかけて保存しているそうだ。

「お主を完治させても良かったが、自然治癒のスキルを鍛える良い機会と思ってな」

支援魔法で蓮を完治させることもできるが、それだと蓮自身の自然治癒の能力が育たないため、スキルは成長しない。

眠っている最中に自然治癒のスキルがLv6になるのを確認した。
起きてすぐに世界樹の実を食せば傷も残らないだろうと思い待っていたそうだ。

大きなダメージを自身の治癒能力で完治させてこそ身につくスキル。
リルやドラコ、先程倒したマンティコアは、高レベルの自然治癒を有していた。
それだけ死線をくぐり抜けてきたという事だ。

「先は遠いなぁ」

「ふん。遥か格上に勝てたのだ。今回はそれで満足しておけ」

リルは『驕らないのは良いことだがな』と言葉を続けた。
その言葉に蓮は嬉しそうな笑みを浮かべ『いつか追い付いてやるからな』と答えた。

弟子の成長を喜ぶ師匠と、師匠に近づくことを喜ぶ弟子の様に互いに笑顔を見せる。

「さて、動かないとな」

蓮がそう言うと、結界魔法と時空魔法を解くようにリルに言い、マンティコアをアイテムボックスへ収納した。

戦い始めたのが夕暮れ前。
今が夜なのか深夜なのか分からないが、桜と向日葵が心配しているだろう。

「案ずるな」

蓮とマンティコアの戦闘中。
大きな力の衝突を感じ取ったユグドラシルが念話でリルに状況を確認してきた。
その時に交戦状況を説明。

蓮が眠っている間に、ユグドラシルは植物間を移動し、桜と向日葵はドラコの背に様子を見に来たそうだ。
火傷だらけ、傷だらけで、死んだように眠る蓮を見て、桜と向日葵からとてつもなく怒られたそうだ。

ひとしき怒られた後に、ユグドラシルから預かったのが先ほど食べた世界樹の実。

リルの様子からして、凄く凄く怒られたのだろう。
きっと自分自身も、大樹の家に戻れば、無茶な戦いをしたことを怒られるのだろう。

「なるべく早くは帰りたいんだけど……」

蓮は動けるようになったことで少し余裕ができた。
そして家に帰れば怒られるとわかっているため、少しだけ逃避することにした。

谷底を覗きこむと、戦闘前に見た時よりも輝きを増した青白い鉱石があった。
谷底には鉱石だけでなく月明かりを反射する川も輝く草もあるため、視界は悪くない。

「あれ取ったら帰ろうか」

周囲の気配を探るが魔物はいない。
リルにも確認するが、リルの空間把握のスキルにも反応はないようだ。

リルは崖の上から敵を警戒。
何かあれば遠吠えで知らせる。

蓮は崖を滑るように降り、鉱石に近寄った。

「綺麗だな」


鑑定

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ミスリル鉱石 レア度:S】
・高濃度の魔素を含んでおり、超高硬度。
・魔力伝導率(大)。
・闘気伝導率(大)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

小さい小石程度のものから、崖の断面や岩壁から30cmセンチメートルほど見えているものもある。

見えている部分は一角に過ぎず、取り出せばかなりの大きさになるのかもしれない。

「これがミスリルか」

ゲームや漫画で見たことはあるが、実際に見ると宝石よりも惹きつけるものがある。

試しに落ちている拳程度の大きさものを拾ってみると見た目の大きさからは想像できない重量で驚いた。

1kgキログラムほどあるのではないだろうか。

これは一つ一つ集めるのは骨が折れそうだ。

「できますように……」

時間短縮のために蓮は、触れずにアイテムボックスへの収納が可能か試みた。

シュンッ。

祈りながら試したが、問題なく収納できて安堵した。
落ちているものに狙いを定めドンドン収納していく。

「これもいけるかな?」

試しに岩壁が見えていたミスリル鉱石に狙いを合わせて見ると、問題なく収納でき、抉れた岩だけが残った。

あまり取りすぎるのも良くないが、また来ることを思えば、多めに取っておきたい。
蓮は家族分の武器や防具を作るのに足りる分を収納し、谷底を後にした。

「おまたせ」

蓮がそう言うとリルは谷底を見ながら『丁度良かったな』と言葉にした。

リルによればマンティコア級の強い魔物が近づいてきているそうだ。

森から1体。
まだ距離はあるが谷底から2体。
そして竜の山の方向から1体。

流石に今から相手などしていられない。

出会わないように気を付けながら、急いで帰ることにした。

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