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異世界生活:グリーデン編

休息もつかの間

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ポーション製造工場の建設を終えて、向日葵の元へ集合。

先程は気付かなかったが近くで見てわかったことは2つ。

ドラコは鱗を操り、なだらかにしいる。
そこへ湖の水をかけて、ウォータースライダーのようにしていること。

そして向日葵の絶対防御は健在という事。

「きゃー!」

ドラコの背を滑る向日葵の笑顔がとてもまぶしい。
見ているこっちも元気になるほどだ。

ザバァァンッ!

着水の寸前に青白い光が向日葵を包む。
創造神エマーテルの加護が発動し、向日葵へは一切衝撃が伝わっていない。

しかし、舞い上がった水しぶきは向日葵に降り注ぎ、濡れることで向日葵が『きゃーきゃー』と嬉しそうな声を出している。

防ぐものと防がないものの加減が完璧する障壁だ。

「ね、ねぇ。沈まないね」

桜がすぐに気が付いた。
その言葉に遅れて蓮も気が付いた。

着水後に沈んでいない。
水面に立ったままだ。

更に驚いたのは、球体の結界に包まれたまま、向日葵はまるでアクアボールで遊ぶように、水上を走って戻ってきた事だ。


桜もやりたそうだが、遠慮してる様子。

「行っておいで」

蓮は桜が参加しやすいように声をかけた。
もっと無邪気で良い。
お姉さんの振りをするにはまだ早い。

この世界では自由なのだ。

「僕はあっちで釣りをしてくるよ!」

蓮はそういうと以前に桜がユグドラシルに作ってもらった釣り竿をもって、少し離れた所へ移動。

水遊びの衝撃で獲物が逃げてしまうからだ。


「この辺りでいいかな」

少し距離はあるが全員の姿が一望できる。
気を付けなければならないのは大樹の家の結界の外であるという事。

索敵で周囲に魔物が居ないことを確認。
それでも、索敵をかいくぐる魔物も居るため、周囲への警戒は怠れない。

蓮は針にウマドリの肉片を付けて投げ入れる。
楽しくなって、つい遠くまで投げてしまった。

「投げすぎたな。おっ!?」

やりすぎたかと思っていると、すぐに当たりが来た。

「なかなかの大物だな!」

ユグドラシル製の釣り竿でなければ折れているかもしれない。
通常の糸であれば確実に切れて逃げられている。

バシャッ!

遠くにはねるのが見えた。
遠目に見えても分かるがかなり大きい。
恐らく桜が釣り上げたのと同じキングトラウトだろう。

竿と糸の強度を信用して力任せに巻いて行く。

「ん?あれなんだ?」

蓮の方向へ徐々に引かれているキングトラウトの向こう側に何かがいる。

索敵のスキルで探るが微かにしか反応が読めない。
恐らく気配遮断系のスキルを持っているのだろう。

「何か知らないけど絶対やらん!」

獲物を横取りなどさせない。
蓮は急いで巻き上げ、最後は力任せの一本釣り。

「よっしゃ!見たか!」

勢いよく釣り上げたため、宙を舞っている間に針が外れた。
蓮はチャンスを逃さず、アイテムボックスから世界樹の片手直剣を取り出して止めを刺し、そのまま収納。

「また詰まらぬものを切ってしまった……」

蓮が一度はやって見たかった名台詞を口にすると同時に、湖が盛り上がり、キングトラウトを追っていた者が正体を現した。


鑑定
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【プルサルディノス Level:124 】
 HP:31100  /  31100
 MP:3000    /  3000
 SP :12030  /  12410
 筋力:3300     攻撃力:3300
 耐久:5970    防御力:5970
 知力:320       魔力 :320
 抵抗:4620   抵抗力:4620
 敏捷:2010
 器用:110
 幸運:98


【スキル】
水魔法Lv4、地魔法Lv1、気配遮断Lv7、危険察知Lv3、身体強化Lv5、剛牙ごうがLv2、剛鱗ごうりんLv3、鱗撃りんげきLv3

【属性】
水Lv5、地Lv3

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

しぶきを上げながらゆっくりと陸に上がる太く短い脚。
ぶ厚く長い尻尾に硬そうな鱗。
むき出しの巨大な牙。
サルコスクスやディノスクスという恐竜を彷彿とさせる15メートルはあろうかという巨大なワニ型の魔物だ。

スキルの数は少なく、全体的にレベルは低いが、とにかく防御が高い。
恐らくドラコと同じ剛鱗というスキルの所為で鱗が強化されているのだろう。

ライトニングタイガーなど他の魔物との戦闘でレベルが上がっていなければ勝てなかったかもしれないと思うとゾッとする。



(おそらく攻撃は牙と尾……。いや自分で視野を狭めるな……)

集中。

蓮が雑念を捨てると同時に巨大な牙が襲い掛かる。

下がるでもなく、横に逃げるでもなく、蓮は半歩右前に踏み込んだ。

リルとの戦闘訓練で身に付けた見切りのスキルを活かして、回避。
フレイムボアを屠った時同様、顎の下に滑り込ませた剣を振り抜く。

剣道の抜き胴という技と同じ要領だ。

要領は同じだがリスクとプレッシャーは比にならない。

ガィィィィンッ!

蓮が回避したためプルサルディノスの巨大な上下の牙が噛み合う音と、蓮の剣が堅牢な鱗に弾かれた音が不協和音となって鳴り響く。

鑑定上は蓮の攻撃力の方が上。
しかし、それはあくまで数値上。

体勢によって力が入りきらなかった。
刃の角度が甘く、鱗に斬撃を流されてしまった。

戦闘では、数値で表すことのできない様々な要因が絡みつく。

時には気持ちで臆していたなどの精神面も影響するだろう。

「相手の出方を見るでない!」

蓮が分析をしていると、怒号が響き渡った。

振り向かなくても分かる。
リルだ。

「無い頭で考えるな!全力の一撃を繰り返すのみ!」

まるで竹刀を持った剣道の師範の様な口ぶりだ。
しかし、核心をついている。

見切る眼はある。
反応できる身体能力も有している。
後は勇気だけだ。

蓮は全身全霊の闘気を体と剣に纏わせた。

刹那。

プルサルディノスの視界から蓮は消えた。

狙うは喉。

先程は弾かれたが、背中側の鱗よりも、喉の鱗の方が柔らかい事はあっている。

狙いは良かった。

足りなかったのは相手を絶対に殺すという強い意志だけ。

プルサルディノスの意識が追い付く前に、蓮は側面から雄叫びと共に全力で蹴り上げ、プルサルディノスの巨体を少し浮かせた。

「お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙っ゙!」

すかさず、蓮はあらわになった喉目掛けて、ドラコに放った技を繰り出した。

滅龍神斬めつりゅうしんざん

ドラコの鱗には通じなかったが、この攻撃が通じない魔物はそうはいない。

蓮の全身全霊の一撃は容易にプルサルディノスの太い首を両断。

リルは勝利したことを安心しながらも、厳しく『始めからやらんか』と蓮を呟くように叱責した。

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