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異世界生活:グリーデン編

再会

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蓮は、冒険者ギルドでグランとガバルの3人で詳細の打ち合わせ。

話し合いが終盤に入ったのは2度目の鐘が鳴った後だ。

「じゃあ、まとめますね」


蓮は内寸半径30cmセンチメートル、高さ60cmセンチメートルの樽を用意。
それにジュースを入れて月に1度冒険者ギルドへ納品。
味はリンゴとミカンを1樽ずつ。
納品頻度は冒険者ギルドの売れ行きを見て増減。
樽1つがおおよそコップ1000杯相当のため、白金貨2枚で冒険者ギルドに販売。
冒険者ギルドでは、冒険者と職人にのみ販売。
単価は銅貨4枚。

ギルドカードの確認と契約書にサインした者だけが買えるようにする。
契約内容は転売禁止と厳罰について。
転売を行ったものは冒険者と職人の資格を剥奪。
契約書には職人ギルドも剥奪に同意と明記。

グランとガバルも後はやってみて調整するという事で納得。
そもそもだが、商人ギルドのように1人勝ちをしようという歪んだ人間性を持ち合わせて居なければ話し合いなど少なく、随時調整で事足りる。

「公にはしませんが、グリーデンの調合師3名に関しては望めば雇用します」

勤務地がユグドラシルの管理する森のため、必要であれば送迎するが、住み込みできるように家はユグドラシルの力を借りて用意する。
ガバルによれば調合師は3人とも女性だというので、家は一つで、個人部屋を割り振る。

「研究の資料や道具も起きやすいように、かなり広めの部屋を用意します」

勤務条件は朝の鐘から夕方の鐘まで。
月給金貨4枚。
6の月と12の月の初日に賞与あり。
週5勤務の週休3日。
連休と別で1日好きなところで休日取得。
業績によって臨時賞与あり。
書籍や道具など仕事に少しでもかかわる物は経費計上可。
食事支給あり。


「おおよそこんな感じで行こうかなと。あとは雇用契約時に聞きながら決めます」

先程まで乗り気だったグランもガバルも目を丸くして反応が薄い。
雇用条件が良くなかったのだろうか。
それとも、必要条件が抜けていたのだろうか。

蓮は少し考えてから『あ、そうか!女性の調合師なら育児に全面協力しないといけませんね!』と言って項目を追加。

子供手当で金貨1枚。
産前産後の半年間は給料保証で出勤自由。

「後は何が良いですかね?」

グランとガバルによれば、あまり手広くして畑や工場を作り村にしてしまうと、商人ギルドとは別に領主にも金銭や農作物を納めなくてはならなくなるらしい。

ユグドラシルの管理する森の中であれば領主も口出しできないため、グリーデン傍への拠点移動は止めたほうが良いと教わった。

「後は魔法の適性があるなら、英才教育できるとか……。揉めた時の後ろ盾は最強とか……」

蓮が更なる追加項目を探し始めた時に、グランとガバルが止めに入った。

「じょ、条件が良過ぎるわい!」

「なんだ週休3日って!?」

受付嬢ですら、かなり優遇して月給金貨2枚。
賞与などは無し。
休みは週に1日。
交代制で働いている。

王都レグナムには騎士団と魔法騎士団がある。
給料だけで言えば、その団の上位者と同等かそれ以上だそうだ。

「職を奪った上にグリーデンから移住する可能性があるんですから、このくらい当然です」

職を失ったからと言って、そこに付け込んで安く雇おうなどしない。
逆に謝罪金も兼ねて、高待遇にするのは道理。

「老後の資金とか子供の養育費とか馬鹿にならないんですから。しっかり稼いでもらわないと」

蓮がそう言うと、グランとガバルは顔を見合わせて『ポーションの次は労働条件の常識を壊す気か?』と頭を抱えた。

悪いことではないのだから、やると決めたらやる。
せっかくの異世界スローライフ。
前の世界と違って、有言実行できる力もある。
味方も居る。
やれることは何でも挑戦しないともったいない。

「まぁ、その辺はお前さんの好きにすりゃ良いわい」

そしてガバルは『しかし、冒険者ギルドだけで販売すんのか?』と言葉を続けた。

その言葉に蓮は少し先に考えていた展開を話した。

「冒険者と職人の距離感が近くなるかなって思ったんです」

今回の案が上手くいき、ジュースが広まれば、冒険者の懐に余裕ができる。
次に冒険者が揃えるのは装備だ。

その時に身近に話せる鍛冶師が居れば、相談しやすい。
職人が直接交渉する術を持てば、職人は高く売り、冒険者は安く買うことができる。

「素材の入手は任せてください」

蓮は笑って見せた。

グランとガバルは考えたこともなかった。
その案に、興味を示し、話し合いに熱が入る。

蓮の持ち込む素材は優先的に職人ギルドへ提供。
それで作った武器や防具を、冒険者ギルドで販売するのはどうだろうか?

いや、そもそも解体できるものを職人ギルドで雇えばいいのではないか?

ガバルとグランが鼻息を荒くして話し合う、
2人ともより良くしようという建設的な話が好きなようだ。

熱が入り長引きそうになったため、素材を安く提供して、武器や防具なども安く冒険者に提供していこうという方向性だけを決めて切り上げた。

「この件が落ち着けばまた話し合いましょう」

「おう。そうだな。そういえば商品名は何にするんだ?」

リンゴジュースとミカンジュースで売り出すつもりだったが、それだと回復効果があるイメージがわかない。

リンゴポーションとミカンポーションという名で売り出すことにした。


3度目の鐘が鳴る時には冒険者ギルドになければならない。

蓮は今のうちに食事を済ませることにした。
グランやガバルにも声をかけたが、勤務に戻らなければならないと言って断られてしまった。

この世界の人間は勤勉なのだと改めて実感する。

「入れてもらえるかな……」

異世界に来て色々な店に行ってみたい気持ちもあるが、今日はあまり時間が無い。

蓮がやってきたのは小熊のしっぽ。

両開きの自在扉を押して入ると、ベアードと目が合った。

蓮が会釈をし、食事をしても良いかと聞くと、カウンターに案内してくれた。

「すみません。ここ以外に食べれるところ知らなくて」

「ん?冒険者ギルドの中にも食堂があっただろう?」

蓮があっと驚いた表情を浮かべていると、呆れられた。
たしかに、初日の昼食を冒険者ギルドでご馳走になった。
しかし、その時は訓練場で食べていたため気づかなかったのだ。

蓮が昨夜に食べた料理と同じものを注文し待っていると、他の客がやってきた。

「おいベアード!なんで人族が居るんだよ!」

入って来て早々に、後ろから声が聞こえてきた。

ここは獣人が営む店。
獣人優先なのか、人族は人族の店に行けと言う声が上がっても仕方がないと言えば仕方がない。

「すみません。ここしか行く当てがなかったもので……。あっ」

「お、お前は!」

蓮が謝罪しながら振り向くと、そこには門前に居た耳が白い毛で覆われている男性が居た。

髪の毛も耳も白く綺麗。

「フェン。昨日言ってた人族って……」

昨日門前に居た男性はフェンと言うようだ。
やや長髪で整った顔立ち。

話しかけた男性は短髪の男性。
同じく髪も耳も白い毛で覆われている。

「ちょっと!お兄ちゃん!ロー!いじめちゃだめじゃない!」

2人の男性の後ろから小柄な女性が現れ制止した。
細身で明るく、愛らしい顔立ち。
尾も耳もフェン同様の髪色だが、どことなく桜を彷彿とさせる。

「あのぉ。せっかくのご縁という事で、嫌でなければ一緒に食べませんか?」

蓮が声をかけると、戸惑った表情で3人はこっちを見た。
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