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異世界生活:グリーデン編
ギルドマスター グラン・モリブス
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冒険者ギルドのギルドマスターが通行料を立て替えてくれたおかげで中に入ることができた。
リルとその主人である向日葵を懐柔するためか……。
蓮と桜は顔を見合わせた。
いざとなったら戦おう。
そう目で話し、頷いた。
門をくぐり中に入ると、目に飛び込んできたのは立ち並んだ出店と多種族。
お祭りほど色とりどりでは無いが、野菜、果物、串焼き、武器、防具、よくわからない雑貨。
様々なものが店舗ではなく、出店で売られている。
買い物をしているものの後ろを通り過ぎた時に硬貨と物を交換している様子が見えた。
通行料同様に通貨で支払うのが一般的なのであろう。
そして街ゆく種族も様々。
犬や猫のような耳の者。
耳が尖った者。
筋肉が多く、背が低い者。
話に聞いた犬人族や猫人族、エルフ族やドワーフ族だろう。
肌の色は様々。
種族によっても顔立ちも様々。
しかし、日本人の様に幼くはなく、逆に大人びて見える顔立ちをしている。
ざっと見た限りでは人族の方が多い。
人族が6割、それ以外の亜人や獣人が4割といったところだ。
銃火器の様な装備は見当たらず、剣や杖、弓が多く、少数だが 篭手を付けている者が居た。
防具も金属製の重装備よりも動きやすさ重視の革製の鎧や、布の服が多い様だ。
出店だけでなく建物もあるが、中は見えない。
窓にはガラスがなく木枠で木製の雨戸がついている。
街並みとして古いヨーロッパの街並みに似ている。
地面は土だが、土埃が立っていない。
地魔法か何かで固められているようだ。
ところどころ荷台や馬型の魔物が引く馬車が通っている。
木製の車輪が壊れにくくするために石畳を避けたのかもしらない。
情報は武器だ。
蓮は目に映った全てのものから情報収集した。
「こっちだ」
ギルドマスターが先導しているからだけでではない。
すれ違う者が例外なく見たり振り返ったりしている。
フェンリルとはわからなくても巨大な白い狼型の魔物。
それに跨りご機嫌の幼児。
人目を浴びすぎて恥ずかしくて横を歩く美少女。
情報収集に勤しむ青年。
豊満な胸が強調された白い衣を纏い、新緑の葉で出来た髪を揺らしながら歩く美女。
頭部左右に禍々しい赤黒い角を携えた青年よりも背が高く鋭い眼光の美女。
まるで個性の詰め出せの様な集団が、冒険者ギルドのギルドマスターに引率されているのだ。
目を引かないわけがない。
「ここが冒険者ギルドだ」
石壁に屋根は木製。
入り口は定番の両開きウエスタンドア。
ギルドマスターは少し待つ様に言うと、中に入りすぐに出てきた。
リルが大きくて中に入らないため裏にある訓練場に椅子やテーブルを手配してくれたそうだ。
木製の屋根と柵で覆われた訓練場。
空気がこもらないように石壁ではなく、柵にされている。
地面は同じく固められた土。
大型の魔物を買い取る時はここを通って解体場に行くらしく、出入り口が大きく作られている。
街中と同じく固められた土の上に椅子とテーブルが並べれるている。
「マスター!準備できました!」
明るい声で話すのはウサギの様な長い耳と大きな胸を揺らす兎人族の女性。
振り返った時に少し見えたがお尻にも拳サイズの丸い尻尾がある。
「かわいい!」
向日葵が思わず口にした。
巨乳のウサ耳は確かに強い。
可愛いが少し怯えている様だ。
チラチラとリルやドラコ、ユグドラシルを見ている。
「大丈夫ですよ。準備ありがとうございます」
「え!?あ、いや、あの。はい!」
兎人族の女性は何やら驚きと戸惑いの表情の後に笑顔となり明るく答えた。
その驚きや戸惑いが何かを考えているとギルドマスターが言葉を発した。
「こんなところで悪いな。まぁ座ってくれ」
本来は自室で話をするそうだが、全員で入れないのだから仕方がない。
人数分の椅子が用意されていたが、向日葵は伏したリルにくるまってミカンを食べている。
こういう場に慣れていない桜は緊張した様子で席についた。
ドラコは尾が邪魔になるため丸椅子に座り、ユグドラシルは背もたれのある椅子に座り、向日葵とリルを見て微笑んでいる。
リルに包まり果物を食べる向日葵を見て、ギルドマスターが話し始めた。
「本当に従魔なんだな……。おっと、すまん。挨拶がまだだったな。俺はグラン・モリブス。グリーデンの冒険者ギルドの責任者だ」
名乗られたのであれば、名乗り返すのが礼儀。
蓮はそれぞれを紹介した。
「ふむ。よろしくな。さて、すまんが、話す前に少し時間をくれ」
話しを進めるかと思ったがグランは先に話したいことがあると蓮達を待たせた。
「その節は助けて頂きありがとうございました」
グランがユグドラシルに感謝をし頭を下げる。
ユグドラシルはその姿に『大きくなりましたね』と優しく言う。
「あれから20年。お陰様でなんとかやってます」
聞けば、グランがまだ駆け出し冒険者だったとき、魔物との戦いで傷を負い、死にかけていたところをユグドラシルが助けたそうだ。
「あの時に世界樹の実を恵んで頂けなければ俺は今ここにいません」
グランは再びユグドラシルに頭を下げた。
本当はグリーデンの門前で目にした時に伝えたかったが、冒険者ギルドの最高責任者という立場から、他の者たちの前で頭を下げるわけにはいかなかったのだそうだ。
「変わらず真っ直ぐな良い目をしてますね」
元居た世界でもそうだった。
実力社会において、実力と人間性を兼ね揃えている者は少なかった。
ユグドラシルの目には良い人間に移っているようだ。
ユグドラシルの言葉で、蓮はグランが信用できる人間なのだと感じた。
「それで。本題に入りましょうか」
昔話に花を咲かせるためにここへ呼んだわけでない。
ユグドラシルに促され、グランは話し始めた。
堂々と端的に。
回りくどい言い方をせず。
綺麗な言葉で飾らず人間性をそのままに。
その姿は蓮にとっても桜にとっても好印象だった。
グランの話をまとめると、冒険者の登録のメリットは、
1.冒険者ギルドカードは身分証として使え、通行料も免除される。
2.任務をクリアすれば報酬が得られる。
3.魔物の解体及び素材の買い取りができる。
4.会費のようなものは無く、本来登録費で大銀貨1枚を徴収しているが、今回は特例で全員免除。
「悪い条件じゃないと思うがどうだ」
蓮は悪い条件ではないことは認めた上で、言葉を返した。
「なぜそこまでしてくれるんですか?」
「当然の質問だな。答えは2つだ」
グランは蓮の問いに取り乱すことなく簡潔に答えた。
「フェンリル、人型の竜、精霊様。俺よりも強いだろう蓮に、桜。フェンリルを従魔に持つ向日葵そんなとんでもない一行を放置はできん。ただ懐柔する気はない。」
グランは元最上位ランクの冒険者。
佇まいでリルがシルバーウルフなどではなくフェンリルだとわかったそうだ。
ドラコを竜族と見抜いたのは、竜人族には尾がない事と、強者としての勘。
リル同様に圧倒的な強さを感じるそうだ。
「冒険者ギルドの責任者として、街を守る最大限の事をしなければならない」
グランが言うには、街に害をなさず、逆に街に強い魔物が出た時などに助けてくれるだけで良いとのことだ。
さらにグランは『懐柔しようとしてできる気はしないしな』と笑って言葉を続けた。
「あ、もし可能なら難易度の高くて困ってる任務を手伝ってくれれば助かる」
「可能な限り協力します。それで、もう一つの理由は?」
蓮の言葉にグランの表情が一変。
比べ物にならないほど真剣な表情になった。
そしてゆっくりと話し始めた。
「実はな……。俺にも同じ年頃の娘がいるんだ。生活に困らせたくはないだろう」
蓮は思わず『え?それだけ?』と聞き返してしまった。
聞けばグランは奥さんとの間に1人娘がいる。
娘ができてから、子供を見捨てることができなくなり、教会が孤児を引き取っていることを知り、率先的に寄付を始めたそうだ。
「おじさん素敵」
「ま、まぁ。親になって気が付くことも多くある」
ひょっとしたら元々はそうじゃなかったのかもしれない。
しかし、大切なのは今。
子供や家族を大切にする人にはいない。
桜の言葉にグランは嬉しそうな表情で頬を赤らめた後、言葉を続けた。
「そ、それと、おじさんはやめてくれ。俺はまだ31だ」
蓮と桜は声を合わせて荒げた。
「そんな顔なのに!?」
門番も増援部隊も街中の人たちも、皆、日本人より大人びて見える顔立ちだった。
しかし、グランは別格だ。
顔立ち、貫禄、威厳。
様々な要素から確実に45歳は超えていると思っていた。
「識別玉をお持ちしました!え?あれ?どうしました?」
タイミングよく来た兎人族の女性が空気に困惑する。
衝撃の余韻を残したまま、何とも言えない雰囲気のまま、冒険者登録をすることとなった。
リルとその主人である向日葵を懐柔するためか……。
蓮と桜は顔を見合わせた。
いざとなったら戦おう。
そう目で話し、頷いた。
門をくぐり中に入ると、目に飛び込んできたのは立ち並んだ出店と多種族。
お祭りほど色とりどりでは無いが、野菜、果物、串焼き、武器、防具、よくわからない雑貨。
様々なものが店舗ではなく、出店で売られている。
買い物をしているものの後ろを通り過ぎた時に硬貨と物を交換している様子が見えた。
通行料同様に通貨で支払うのが一般的なのであろう。
そして街ゆく種族も様々。
犬や猫のような耳の者。
耳が尖った者。
筋肉が多く、背が低い者。
話に聞いた犬人族や猫人族、エルフ族やドワーフ族だろう。
肌の色は様々。
種族によっても顔立ちも様々。
しかし、日本人の様に幼くはなく、逆に大人びて見える顔立ちをしている。
ざっと見た限りでは人族の方が多い。
人族が6割、それ以外の亜人や獣人が4割といったところだ。
銃火器の様な装備は見当たらず、剣や杖、弓が多く、少数だが 篭手を付けている者が居た。
防具も金属製の重装備よりも動きやすさ重視の革製の鎧や、布の服が多い様だ。
出店だけでなく建物もあるが、中は見えない。
窓にはガラスがなく木枠で木製の雨戸がついている。
街並みとして古いヨーロッパの街並みに似ている。
地面は土だが、土埃が立っていない。
地魔法か何かで固められているようだ。
ところどころ荷台や馬型の魔物が引く馬車が通っている。
木製の車輪が壊れにくくするために石畳を避けたのかもしらない。
情報は武器だ。
蓮は目に映った全てのものから情報収集した。
「こっちだ」
ギルドマスターが先導しているからだけでではない。
すれ違う者が例外なく見たり振り返ったりしている。
フェンリルとはわからなくても巨大な白い狼型の魔物。
それに跨りご機嫌の幼児。
人目を浴びすぎて恥ずかしくて横を歩く美少女。
情報収集に勤しむ青年。
豊満な胸が強調された白い衣を纏い、新緑の葉で出来た髪を揺らしながら歩く美女。
頭部左右に禍々しい赤黒い角を携えた青年よりも背が高く鋭い眼光の美女。
まるで個性の詰め出せの様な集団が、冒険者ギルドのギルドマスターに引率されているのだ。
目を引かないわけがない。
「ここが冒険者ギルドだ」
石壁に屋根は木製。
入り口は定番の両開きウエスタンドア。
ギルドマスターは少し待つ様に言うと、中に入りすぐに出てきた。
リルが大きくて中に入らないため裏にある訓練場に椅子やテーブルを手配してくれたそうだ。
木製の屋根と柵で覆われた訓練場。
空気がこもらないように石壁ではなく、柵にされている。
地面は同じく固められた土。
大型の魔物を買い取る時はここを通って解体場に行くらしく、出入り口が大きく作られている。
街中と同じく固められた土の上に椅子とテーブルが並べれるている。
「マスター!準備できました!」
明るい声で話すのはウサギの様な長い耳と大きな胸を揺らす兎人族の女性。
振り返った時に少し見えたがお尻にも拳サイズの丸い尻尾がある。
「かわいい!」
向日葵が思わず口にした。
巨乳のウサ耳は確かに強い。
可愛いが少し怯えている様だ。
チラチラとリルやドラコ、ユグドラシルを見ている。
「大丈夫ですよ。準備ありがとうございます」
「え!?あ、いや、あの。はい!」
兎人族の女性は何やら驚きと戸惑いの表情の後に笑顔となり明るく答えた。
その驚きや戸惑いが何かを考えているとギルドマスターが言葉を発した。
「こんなところで悪いな。まぁ座ってくれ」
本来は自室で話をするそうだが、全員で入れないのだから仕方がない。
人数分の椅子が用意されていたが、向日葵は伏したリルにくるまってミカンを食べている。
こういう場に慣れていない桜は緊張した様子で席についた。
ドラコは尾が邪魔になるため丸椅子に座り、ユグドラシルは背もたれのある椅子に座り、向日葵とリルを見て微笑んでいる。
リルに包まり果物を食べる向日葵を見て、ギルドマスターが話し始めた。
「本当に従魔なんだな……。おっと、すまん。挨拶がまだだったな。俺はグラン・モリブス。グリーデンの冒険者ギルドの責任者だ」
名乗られたのであれば、名乗り返すのが礼儀。
蓮はそれぞれを紹介した。
「ふむ。よろしくな。さて、すまんが、話す前に少し時間をくれ」
話しを進めるかと思ったがグランは先に話したいことがあると蓮達を待たせた。
「その節は助けて頂きありがとうございました」
グランがユグドラシルに感謝をし頭を下げる。
ユグドラシルはその姿に『大きくなりましたね』と優しく言う。
「あれから20年。お陰様でなんとかやってます」
聞けば、グランがまだ駆け出し冒険者だったとき、魔物との戦いで傷を負い、死にかけていたところをユグドラシルが助けたそうだ。
「あの時に世界樹の実を恵んで頂けなければ俺は今ここにいません」
グランは再びユグドラシルに頭を下げた。
本当はグリーデンの門前で目にした時に伝えたかったが、冒険者ギルドの最高責任者という立場から、他の者たちの前で頭を下げるわけにはいかなかったのだそうだ。
「変わらず真っ直ぐな良い目をしてますね」
元居た世界でもそうだった。
実力社会において、実力と人間性を兼ね揃えている者は少なかった。
ユグドラシルの目には良い人間に移っているようだ。
ユグドラシルの言葉で、蓮はグランが信用できる人間なのだと感じた。
「それで。本題に入りましょうか」
昔話に花を咲かせるためにここへ呼んだわけでない。
ユグドラシルに促され、グランは話し始めた。
堂々と端的に。
回りくどい言い方をせず。
綺麗な言葉で飾らず人間性をそのままに。
その姿は蓮にとっても桜にとっても好印象だった。
グランの話をまとめると、冒険者の登録のメリットは、
1.冒険者ギルドカードは身分証として使え、通行料も免除される。
2.任務をクリアすれば報酬が得られる。
3.魔物の解体及び素材の買い取りができる。
4.会費のようなものは無く、本来登録費で大銀貨1枚を徴収しているが、今回は特例で全員免除。
「悪い条件じゃないと思うがどうだ」
蓮は悪い条件ではないことは認めた上で、言葉を返した。
「なぜそこまでしてくれるんですか?」
「当然の質問だな。答えは2つだ」
グランは蓮の問いに取り乱すことなく簡潔に答えた。
「フェンリル、人型の竜、精霊様。俺よりも強いだろう蓮に、桜。フェンリルを従魔に持つ向日葵そんなとんでもない一行を放置はできん。ただ懐柔する気はない。」
グランは元最上位ランクの冒険者。
佇まいでリルがシルバーウルフなどではなくフェンリルだとわかったそうだ。
ドラコを竜族と見抜いたのは、竜人族には尾がない事と、強者としての勘。
リル同様に圧倒的な強さを感じるそうだ。
「冒険者ギルドの責任者として、街を守る最大限の事をしなければならない」
グランが言うには、街に害をなさず、逆に街に強い魔物が出た時などに助けてくれるだけで良いとのことだ。
さらにグランは『懐柔しようとしてできる気はしないしな』と笑って言葉を続けた。
「あ、もし可能なら難易度の高くて困ってる任務を手伝ってくれれば助かる」
「可能な限り協力します。それで、もう一つの理由は?」
蓮の言葉にグランの表情が一変。
比べ物にならないほど真剣な表情になった。
そしてゆっくりと話し始めた。
「実はな……。俺にも同じ年頃の娘がいるんだ。生活に困らせたくはないだろう」
蓮は思わず『え?それだけ?』と聞き返してしまった。
聞けばグランは奥さんとの間に1人娘がいる。
娘ができてから、子供を見捨てることができなくなり、教会が孤児を引き取っていることを知り、率先的に寄付を始めたそうだ。
「おじさん素敵」
「ま、まぁ。親になって気が付くことも多くある」
ひょっとしたら元々はそうじゃなかったのかもしれない。
しかし、大切なのは今。
子供や家族を大切にする人にはいない。
桜の言葉にグランは嬉しそうな表情で頬を赤らめた後、言葉を続けた。
「そ、それと、おじさんはやめてくれ。俺はまだ31だ」
蓮と桜は声を合わせて荒げた。
「そんな顔なのに!?」
門番も増援部隊も街中の人たちも、皆、日本人より大人びて見える顔立ちだった。
しかし、グランは別格だ。
顔立ち、貫禄、威厳。
様々な要素から確実に45歳は超えていると思っていた。
「識別玉をお持ちしました!え?あれ?どうしました?」
タイミングよく来た兎人族の女性が空気に困惑する。
衝撃の余韻を残したまま、何とも言えない雰囲気のまま、冒険者登録をすることとなった。
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