34 / 153
異世界生活:グリーデン編
異世界道中
しおりを挟む
大樹の家からドラコの背に乗り南下。
空の旅でグリーデンへと向かった。
だいぶ近くまで来たが、そのまま街に降りれば大騒ぎになることは火を見るよりも明らか。
ドラゴン襲来と思われてはいけないため、山脈を超え、グリーデンより数km北側の丘で降りることにした。
「どう呼べば良いのかな?」
ユグドラシルに、到着したら呼ぶように言われていたが、肝心の呼び方が分からない。
「もういますよ」
気が付けばもう後ろに居た。
突然の登場に驚いていると『少し傷つきますよ?』と怒られた。
蓮は機嫌を直してもらうために謝る。
蓮が心に念じたことを読み取り、現れたそうだ。
謝罪を受けると、ユグドラシルは『冗談ですよ』と言って笑みを浮かべた。
桜はその光景が、人間関係的に距離が近づいているように見えて嬉しく思った。
「じゃあ行こうか」
「ふむ。では我の背に乗るがよい」
蓮が出発を促すと、リルが背に乗るように言う。
向日葵を連れて歩くには少し距離があるため助かる。
蓮は向日葵を抱き上げて、リルの背に乗せた。
「お主らも乗れ。その方が速い」
蓮と桜は申し出に甘えて乗ることにした。
桜が乗る時に重くないかを尋ねると『ふん。羽根のようじゃな』とリルが答えたため、嬉しそうな表情を浮かべた。
(リ、リルの奴……かっこいいこと言うな……)
蓮はいつか自分も使おうと、かっこいいセリフとして心の中に書きとめた。
さっそく出発。
と思ったが、歩き始めてすぐに地鳴りがしたため振り返った。
地鳴りの原因はドラコだ。
ドラコの巨体で地に足をつけて歩くと地鳴りがするのだ。
「ド、ドラコはここに居てくれる?すぐ戻るからさ」
「ドラコはいっしょにいかないの?」
蓮の言葉に、向日葵が寂しそうに聞くが仕方がない。
ドラゴンが人の街に行けば大騒ぎだ。
蓮が向日葵を宥めるていると、言葉を遮るようにドラコが言う。
「え、いやよ。いくわよ」
聞き間違いかと思いドラコを見るが顔が本気だ。
「さ、流石にまずいんじゃないかな?」
「ふん。蹴散らせば良かろう」
常識的に考えて大問題になるのではないかと心配する桜をよその、もめる気満々のリル。
このままでは死屍累々。
蹴散らせば良い訳が無い。
「はぁ……仕方ないわね。あんまり好きじゃないんだけど……」
ドラコはそう言うと、魔素を漲らせ、全身を青白い光で包むと、徐々に縮んでいき、人型となった。
「さ、いきましょうか」
鼻筋の通った美しい顔立ち。
長身ですらりと伸びた脚。
炎の様な深紅の瞳。
赤黒い鱗の面影を残した綺麗になびく長い髪。
ドラコは人化のスキルで人型になったのだ。
竜の誇りともいえる太い角が、左右のこめかみ辺りから下向きに渦巻くように生えている。
尾は身体のサイズに合わせて縮んではいるが、無くならずに長く伸びている。
「え……」
「ちょっと!?蓮兄は見ないの!」
桜は後ろに座っている蓮に見ないように言い、慌ててユグドラシルに服を作るように言う。
ドラコには、服を用意していないときは人型にならない様に説明。
ユグドラシルの用意した服を着るが、突起が浮き出て胸が凶悪なことになっているため、先端付近を補強してもらった。
パンツは蓮や桜と同じ。
ただし、尾が出せるようにされている。
トップスは首や胸、腹や背は覆うが、肩や肩甲骨付近には布が無い。
翼を生やせるようにするためだそうだ。
「尻尾も隠したいんだけど、無いと歩きにくいのよね」
角は竜族としての誇りがあるため隠さない。
尾も翼同様に隠すことはできるのだが、バランスがとりにくくなるため、そのまま。
翼の身を隠しているそうだ。
再びリルの背に乗り、今度こそ出発。
リルが大きいとはいえ、3人乗せるのは気が引ける。
蓮は桜と向日葵だけを乗せるように言い、自身は降りて、ドラコとユグドラシルと歩くことにした。
「時間はあるんだしゆっくり行けばいいさ」
せっかくなので道中も楽しもう。
そう思い、歩き始めた。
「ドラコも大きかったねぇ」
ピキィィィンッ!
向日葵の無邪気な爆弾投下に空気が張り詰める。
密かにレベルの上がる桜の憤怒の波動。
圧に耐え切れず、無害そうな小型の鳥型の魔物が数羽落ちて来た。
「ひまちゃん?どうかした?」
「う、ううん。ドラコもせがたかいなって」
昨日の今日で触れてはいけない五大禁忌に触れかけた向日葵。
まだまだ4歳。
忘れてしまっていたのだろう。
忘れかけていた恐怖を一瞬にして思いだし、天才的な緊急回避を図るが、桜の機嫌はグリーデンにつくまで斜めだった。
楽しいはずの道中が、重い空気に包まれたことは言うまでもない。
空気は重かったが、しばらく歩き、魔物に遭遇することもなく無事にグリーデンに到着。
上空から少し見たが、街は円形。
直径は2、3kmといったところだろうか。
東西南北に、出入り口なのか、外壁が太くなる部分があった。
現在は北側。
蓮の思った通りで、外壁の途切れている部分は門となっていた。
地魔法で作られたのか、人力で作られたのか、外壁には綺麗な四角い大きな石が積み重ねられている。
高さも一軒家ほどありそうだ。
門自体は木製で、今は開かれているが、丸太で作られているため頑丈で重そうだ。
門の前には2人の強面の門番が居る。
金剛力士像の様に筋骨隆々の見るからに強うそうな。
そして暑苦しそうな巨漢だ。
1人の背には大きな斧。
1人の手には太く長い槍。
鋭い眼光でこちらをにらみつけている。
果たして無事に通れるのだろうか。
空の旅でグリーデンへと向かった。
だいぶ近くまで来たが、そのまま街に降りれば大騒ぎになることは火を見るよりも明らか。
ドラゴン襲来と思われてはいけないため、山脈を超え、グリーデンより数km北側の丘で降りることにした。
「どう呼べば良いのかな?」
ユグドラシルに、到着したら呼ぶように言われていたが、肝心の呼び方が分からない。
「もういますよ」
気が付けばもう後ろに居た。
突然の登場に驚いていると『少し傷つきますよ?』と怒られた。
蓮は機嫌を直してもらうために謝る。
蓮が心に念じたことを読み取り、現れたそうだ。
謝罪を受けると、ユグドラシルは『冗談ですよ』と言って笑みを浮かべた。
桜はその光景が、人間関係的に距離が近づいているように見えて嬉しく思った。
「じゃあ行こうか」
「ふむ。では我の背に乗るがよい」
蓮が出発を促すと、リルが背に乗るように言う。
向日葵を連れて歩くには少し距離があるため助かる。
蓮は向日葵を抱き上げて、リルの背に乗せた。
「お主らも乗れ。その方が速い」
蓮と桜は申し出に甘えて乗ることにした。
桜が乗る時に重くないかを尋ねると『ふん。羽根のようじゃな』とリルが答えたため、嬉しそうな表情を浮かべた。
(リ、リルの奴……かっこいいこと言うな……)
蓮はいつか自分も使おうと、かっこいいセリフとして心の中に書きとめた。
さっそく出発。
と思ったが、歩き始めてすぐに地鳴りがしたため振り返った。
地鳴りの原因はドラコだ。
ドラコの巨体で地に足をつけて歩くと地鳴りがするのだ。
「ド、ドラコはここに居てくれる?すぐ戻るからさ」
「ドラコはいっしょにいかないの?」
蓮の言葉に、向日葵が寂しそうに聞くが仕方がない。
ドラゴンが人の街に行けば大騒ぎだ。
蓮が向日葵を宥めるていると、言葉を遮るようにドラコが言う。
「え、いやよ。いくわよ」
聞き間違いかと思いドラコを見るが顔が本気だ。
「さ、流石にまずいんじゃないかな?」
「ふん。蹴散らせば良かろう」
常識的に考えて大問題になるのではないかと心配する桜をよその、もめる気満々のリル。
このままでは死屍累々。
蹴散らせば良い訳が無い。
「はぁ……仕方ないわね。あんまり好きじゃないんだけど……」
ドラコはそう言うと、魔素を漲らせ、全身を青白い光で包むと、徐々に縮んでいき、人型となった。
「さ、いきましょうか」
鼻筋の通った美しい顔立ち。
長身ですらりと伸びた脚。
炎の様な深紅の瞳。
赤黒い鱗の面影を残した綺麗になびく長い髪。
ドラコは人化のスキルで人型になったのだ。
竜の誇りともいえる太い角が、左右のこめかみ辺りから下向きに渦巻くように生えている。
尾は身体のサイズに合わせて縮んではいるが、無くならずに長く伸びている。
「え……」
「ちょっと!?蓮兄は見ないの!」
桜は後ろに座っている蓮に見ないように言い、慌ててユグドラシルに服を作るように言う。
ドラコには、服を用意していないときは人型にならない様に説明。
ユグドラシルの用意した服を着るが、突起が浮き出て胸が凶悪なことになっているため、先端付近を補強してもらった。
パンツは蓮や桜と同じ。
ただし、尾が出せるようにされている。
トップスは首や胸、腹や背は覆うが、肩や肩甲骨付近には布が無い。
翼を生やせるようにするためだそうだ。
「尻尾も隠したいんだけど、無いと歩きにくいのよね」
角は竜族としての誇りがあるため隠さない。
尾も翼同様に隠すことはできるのだが、バランスがとりにくくなるため、そのまま。
翼の身を隠しているそうだ。
再びリルの背に乗り、今度こそ出発。
リルが大きいとはいえ、3人乗せるのは気が引ける。
蓮は桜と向日葵だけを乗せるように言い、自身は降りて、ドラコとユグドラシルと歩くことにした。
「時間はあるんだしゆっくり行けばいいさ」
せっかくなので道中も楽しもう。
そう思い、歩き始めた。
「ドラコも大きかったねぇ」
ピキィィィンッ!
向日葵の無邪気な爆弾投下に空気が張り詰める。
密かにレベルの上がる桜の憤怒の波動。
圧に耐え切れず、無害そうな小型の鳥型の魔物が数羽落ちて来た。
「ひまちゃん?どうかした?」
「う、ううん。ドラコもせがたかいなって」
昨日の今日で触れてはいけない五大禁忌に触れかけた向日葵。
まだまだ4歳。
忘れてしまっていたのだろう。
忘れかけていた恐怖を一瞬にして思いだし、天才的な緊急回避を図るが、桜の機嫌はグリーデンにつくまで斜めだった。
楽しいはずの道中が、重い空気に包まれたことは言うまでもない。
空気は重かったが、しばらく歩き、魔物に遭遇することもなく無事にグリーデンに到着。
上空から少し見たが、街は円形。
直径は2、3kmといったところだろうか。
東西南北に、出入り口なのか、外壁が太くなる部分があった。
現在は北側。
蓮の思った通りで、外壁の途切れている部分は門となっていた。
地魔法で作られたのか、人力で作られたのか、外壁には綺麗な四角い大きな石が積み重ねられている。
高さも一軒家ほどありそうだ。
門自体は木製で、今は開かれているが、丸太で作られているため頑丈で重そうだ。
門の前には2人の強面の門番が居る。
金剛力士像の様に筋骨隆々の見るからに強うそうな。
そして暑苦しそうな巨漢だ。
1人の背には大きな斧。
1人の手には太く長い槍。
鋭い眼光でこちらをにらみつけている。
果たして無事に通れるのだろうか。
858
お気に入りに追加
1,901
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる