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異世界生活

異世界ハンティング②

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フレイムボアを倒し、さらに森の奥に進む。
きっとフレイムボアよりも強い魔物が居るはずだ。

現在位置は、フレイムボアを倒したところから、東側に30分程度歩いた森の中。

「先ほどの動き。なかなか良かったぞ」

先程のフレイムボアへの一撃を思い出しリルが言う。
回避もかねて右前方に踏み込み、アイテムボックスから取り出した剣をそのまま振り抜いた。

無駄のない攻防一体の動きにリルは感心した。

蓮が学生時代に打ち込んでいた剣道や空手の経験だけでは、成し得なかった動き。
荒れている時期に明け暮れた腕試しという名の喧嘩でも体得はできなかった。

それら過去の経験と、女神から授かった加護やスキルが、リルと行った命の危険を感じるほどの戦闘訓練のおかげで、噛み合い始めている。


「木の間隔が広くて助かったよ」

世界樹の片手直剣は全長が140cmセンチメートル程度。
木々の間隔が狭いと、木に当たり振りにくい。
切れ味的には木ごと両断しそうだが、洞窟など狭い空間では戦いにくいということだ。

帰宅後には、短剣やナックルもユグドラシルに頼もうと考えた。
この世界の常識を知ると同じように、この世界では戦いは不可避。

「お主の錬金と鍛冶スキルでは、まだまだ、ユグドラシルあやつの足元にも及ばんからな」

レベルはまだ低いが、蓮は錬金と鍛冶のスキルを有している。
それに加えて、鍛冶神ヘパイストスの加護まである。

ユグドラシルの生み出す衣や剣、杖などの武具は、通常の鍛冶師では到底辿り着けないほどの高性能。

しかし、蓮が錬金と鍛冶スキルを最高まで鍛え、加護の効果が発揮された武具を作れば、ユグドラシルの生み出す武具の性能を超えた武具を生み出せるかもしれない。

「ある程度戦闘慣れしたら、そういう時間も作ってみないとな」

やれることは何でもする。
鍛える。
戦略を練る。
共闘する。
武器を変える。
戦闘方法を変える。
時には逃げ、作戦を立て直す。

勝つこと、そして生き残るとが重要だ。

勝利と生への強い執着。
そして自惚れや慢心のなさ。

リルは、蓮のそれがどこから来るのかが気になったが、何やら気になる臭いがしたため、話を掘り下げるのを止めた。

リルは蓮の表情を確認。
忍び寄る魔物に気がついていないようだ。
これも経験、まだ待とう。

そう思いながらギリギリまで待つことにした。


「そうなると、肉も大事だけど、高く売れる素材が手に入ると良いんだけどな」

「ふん。ちょうど良い奴がいるではないか」

リルの言葉の後も蓮は気付いていない。
周囲を見渡すが何もいない。

「ステータスボードが目安にしかならぬと言ったのは、こういうことがあるからじゃっ!」

リルはそう言いながら、蓮を咥え、瞬時に横に飛んだ。

ジュワァッ!

次の瞬間。
上からオレンジ色の液体が勢い良く降り注ぎ、蓮の居た位置にある草木や落ち葉を一瞬で溶かした。

「なんだ!?」

慌てて上を見上げ、驚いた。
そいつはいつからそこに居たのか。
気配も音もなく突如として現れた魔物。

鋼の様に銀色にギラめく無数の鱗。
木の幹の様に太く、終わりが見えないほど長い胴体。

ジャラララッ!

見上げた先には、複数の木々に身体を絡ませながらうごめいている大蛇が居た。

「でか!なが!いつの間にいたんだ!?」

驚いた後、命の恩人であるリルに感謝を伝え、すぐざまアイテムボックスから剣を取り出し構えた。


リルと話をしていたが、蓮は警戒を怠っていなかった。
しかし、全く気付かなかった。

蓮は何か特別なスキルを有する可能性を考え、すぐに鑑定した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【メタルパイソン Level:73 】
 HP:9200  /  9350
 MP:1000    /  1000
 SP :5130  /  5200
 筋力:990     攻撃力:990
 耐久:1800   防御力:1800
 知力:350       魔力 :350
 抵抗:1800   抵抗力:1800
 敏捷:1250
 器用:300
 幸運:22

【スキル】
毒牙Lv5、猛毒液Lv6、消化液Lv4、気配遮断Lv6、遮音Lv2、鎧皮Lv5、鱗撃Lv4、身体強化Lv3、危険察知Lv3、熱感知Lv4、地魔法Lv1、光魔法Lv1、

【属性】
水Lv1、地Lv2、光Lv1

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


リルが『ステータスボードは目安だ』と何度も言う理由が分かった。

「気配遮断に遮音!?これのせいか!」

蓮がいかに剣聖と並ぶステータスを有していても、不意打ちを喰らえば、ひとたまりもない。

今回の場合で言えば、リルが助けてくれなかったら、消化液をもろにかぶり、頭から溶けていたかもしれない。
蓮は想像して背筋が凍った。

「リルはどうやって気づいたの?」

「スキルと臭いと経験じゃな」

そもそもリルが有する危険察知や索敵など、敵を察知することに有効なスキルのレベルが高い。
そのため、メタルパイソンの気配遮断や遮音では隠れ切れていなかったのだ。

それ以外には、リルが言うには、メタルパイソンの毒液や消化液の臭いが微かにしたらしい。
これは鼻が利く狼型の魔物であるリルの特性ともいえるもののため、真似しようがない。

最後に経験。
枯れ木ではなく、新緑が芽吹くような枝葉が落ちていた。
その事から魔物が木の上を移動している事を想定していたそうだ。

リルはいったいどれほどの死線をくぐり抜けてきたのだろうか。
あとどのくらい経験を積めば追いつけるのだろうか。

そんな思考が蓮の脳を巡る。
しかし、すぐさま蓮は思考を止め、戦闘に集中した。

「見える。なら問題ない」

メタルパイソンが有している隠密系スキルは気配遮断と遮音のみ。
認識阻害のように目で見えていても認識できないものや、姿を見えなくするようなものではない。
目視できるなら対応できる。

蓮は覚悟を決めると同時に、跳躍した。

木から木へ、木の幹を蹴りながら飛び移り、一気にメタルパイソンの頭部に接近。

蓮は真っ直ぐに縦に切りつけた。

ヒュンッ!

蓮の剣は空を斬る。
メタルパイソンは顔の向きはそのままに、首を引いて後方へ下がったのだ。

攻撃後に生じる隙をつき、メタルパイソンの毒牙が蓮を襲う。

メタルパイソンは自身の攻撃が、宙に浮いている蓮を捉えると確信した。

ギャイィンッ!

勢いよく噛みつき、上下の金属の牙がぶつかる音が鳴り響く。

しかし、メタルパイソンの口内に蓮はいない。

ジャラッ!?

蓮を見失ったメタルパイソンが、すぐさま熱感知のスキルで蓮を捕捉。
しかし、時すでに遅し。

蓮は上から勢いよく落下。

剣に闘気を纏わせながら、上段から一気に振り下ろし、メタルパイソンの首を両断した。
落下する頭部はそのままアイテムボックスへ。
メタルパイソンの生命力が流れ込み、蓮のレベルが上がるり、全身に力が漲る。

「これ念じたら入るかなぁ?」

メタルパイソンは木に絡まるように状態を維持していた。
その為、死して残った胴体は複数の木に絡まりついたまま。

ほどいてアイテムボックスに投げ入れるのは大変だ。

そう思い、蓮は試しに胴体に触れて収納するように念じてみると絡まっていた胴体部分は消えた。

どうやらうまくいったようだ。

「お主。今何をしたのだ?」

宙に浮いていた蓮。
リルも、身動きが取れずにメタルパイソンの毒牙が直撃すると思い、助けに入ろうとした。

「あの不自然な動き。何かの魔法か?」

メタルパイソンの毒牙を交わす時、蓮は宙に浮いたまま、微動だにせず、そのまま体が後方に下がった。

そして、そのまま上昇。
その後、急降下して首を両断したのだ。

長く生きるリルですら見たことない魔法。

果たして蓮は一体何をしたのか。
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