上 下
20 / 112
異世界生活

女神の加護で成長チート①

しおりを挟む
訓練を終え、話す蓮達。
その後ろで音がし、振り返るとフェンリルよりも二回ふたまわりほど巨大な鳥が横たわっていた。

「美味い奴が居たぞ」

フェンリルはどこか得意げな表情を浮かべている。
しかし、血を流した巨大な鳥の登場は、日本育ちの蓮達には、主に向日葵には刺激が強すぎた。

「うえぇぇん」

向日葵の号泣に慌てた様子のフェンリル。
悪気はなかったようだ。

「ちょっといいかな?」

「ちょっといいかしら?」

闘気をむき出しにした蓮と、魔力を漲らせた桜に、フェンリルはただただ怒られた。

「む、むぅ……」

涙ぐむ向日葵を見て、そして小さく『すまぬ』と言葉を漏らした。
まだ少しすすり泣きをしている向日葵に擦り寄り、柔らかい毛で覆われた身体で向日葵を優しく包んだ。

その一連の言動を見て、ユグドラシルは驚いた。

「あなた……。ひょっとして……」

「なんと……。よもやフェンリルの王たる我が従魔になるとはな」

従魔。
聞きなれないが、向日葵のスキル欄には確か従魔術Lv10と記載されていた。

「どういうこと?」

蓮が状況を確認すると、フェンリルが答えた。

「その言葉の通り。我はこやつの従魔となったのじゃ」

その言葉を聞いて桜が『こやつって誰のこと?』と怒りを口にした。
フェンリルは桜にも弱いようで、慌てて『ヒマワリじゃったな』と訂正した。

理解が追い付かない蓮達にユグドラシルが補足する。

従魔とは、魔物と意思疎通を図り、従える事。

身体が大きい魔物や飛行能力のある魔物を移動用従魔にする事もあれば、強力な力を持つ魔物を戦闘用従魔にする事もある。
従魔契約は、主人か従魔のどちらかが死ぬまで続くそうだ。

「これも女神様のお導きか……。ヒマワリよ。我に名を授けよ」

フェンリルは納得したような表情を浮かべ、向日葵に名を付けるように言う。

言葉の意味が分かっていない向日葵に、蓮が『狼さんにお名前つけてあげて』と補足する。

「おなまえ……。んー。リル!リルちゃん!」

「ちゃ、ちゃんはやめよ」

ちゃん付けを恥ずかしがるフェンリル改めリル。
名付けたことで従魔契約完了。

完了の証に、向日葵とリルを青白い光が包み、すぐに消えた。


向日葵のステータスボードを見ると従魔の欄が増えていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ヒマワリ・ミツルギ Level:1 人族♀ 4歳】
HP:110   / 110
MP:830 / 830
SP:350   / 350
筋力:40  攻撃力:340
耐久:55  防御力:1055
知力:430  魔力:1430
抵抗:85  抵抗力:1085
敏捷:70
器用:83
幸運:7777

【ユニーク】
創造神エマーテルの加護、運命神フォルトゥナの加護、アイテムボックス、鑑定、自由奔放

【スキル】
従魔術Lv10、愛嬌Lv10、癒しLv10、水魔法Lv1、

【属性】
水Lv5、火Lv5、風Lv5、氷Lv5、地Lv5、雷Lv5、光Lv5、支援Lv10

【装備】
世界樹の衣、世界樹の杖

【従魔】
リル(フェンリル族)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「レベルが上がらなくてもステータスは伸びるんだね」

魔物などの命を奪う事で生命力が流れ込みレベルが上がる。
レベルが上がるよりも成長率は悪いが、鍛えれば各ステータスはそれぞれ成長する。

努力が目に見えるのはモチベーションに繋がる。
装備が制服からユグドラシルお手製の服と杖になったことで、攻撃力や防御力などの数値が大幅に上昇している。


「成長の確認程度の目安にしておけ」

フェンリルもユグドラシル同様にあくまで目安の数値であるという。
戦いにおいて、数値は時に意味をなさないことを経験から知っているのだろう。


「腹が減ったな。お主らの確認は後にして食わぬか?」

登場した時は威厳溢れ、神々しくさえあったフェンリル。
数は少ないが、強大な力を有するフェンリル。
リルはそのフェンリル族の王。

今は、狩ってきた巨大な鳥を前に、涎を垂らしながら尻尾を振り『こいつは美味いのだぞぉ』と言っている。
どうやら可愛げのある奴のようだ。

「先にお食事にしましょうか」

ユグドラシルはそう言うと右の掌を地にかざし、大きな木のテーブルと椅子を用意した。

更に地魔法を使い、大きな石の台を作り出した。
石の台の下に木々を並べ、リルに火を灯すように言う。

家の中にあるのと同じような、即席の石製の焼き台だ。

「さぁ、温めているうちに捌いてしまいましょうか」

ユグドラシルは食べなくても大丈夫。
リルは生のままでも食べられる。
しかし、蓮達はそうはいかない。

解体と調理をしなければならない。

「状態異常にはならぬだろう?」

お腹を壊したり病気になることはないが、そういう問題ではない。

「私がやるよ」

桜は釣ってきた魚を捌くくらいのノリで、自身が巨大な鳥を捌くというのだ。

桜は蓮に向日葵の目を覆うように指示し、世界樹の魔杖を構えた。

「リル。鳥を上に投げてくれない?」

桜の言葉に応じ、リルは巨大な鳥を咥えて、宙へ放り投げた。

投げ上げられた鳥が落下する前に、桜は結界魔法を発動。
物理障壁を生み出し、落下を止め、宙に固定した。

さらにその結界内に炎を生み出し、鳥の羽を焼き払った。

繊細な魔力制御がされており、羽は燃えているが、皮膚はほどんど焼けていない。

「あとは細切れにして、血抜きして……」

結界内に風の刃を発生させ、鳥を切り刻む。
水を発生させ、洗濯機の様に結界内で水をかき混ぜて血を洗い流す。

内臓と血を大量に含んだ水は、湖から流れる川に流し、残った肉をアイテムボックスへ流し込む。

「たいしたものじゃな」

リルが思わず賞賛する。

あっという間の出来事に、蓮は開いた口が塞がらない。
結界魔法と同時に、火魔法、風魔法、水魔法を使って見せたのだ。

腰に手を当ててドヤ顔の桜。
思わずユグドラシルを見る蓮。

ユグドラシルは『の、後程お話ししますね』と言って、食事の準備を進めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ~小さいからって何もできないわけじゃない!~

渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞! ◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。 スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。 テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。 リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。 小型オンリーテイム。 大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。 嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。 しかしリドルに不安はなかった。 「いこうか。レオ、ルナ」 「ガウ!」 「ミー!」 アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。 フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。 実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...