4 / 153
始まり
始まり①
しおりを挟む
「ひぃちゃーん!ダーーイブッ!」
ドゴッ!
「おぼっ!!?」
可愛い声と鳩尾に何かがめり込む衝撃と痛みで目が覚めた。
「にぃに!お!は!よ!」
「ひ、ひまちゃん。お、おはよう……」
可愛い声と鳩尾にめり込んだ者の正体は、溺愛する年の離れた妹の向日葵だ。
「蓮兄そろそろ起きないと遅れるよぉ。あ、起きた……?」
悶絶する俺を見て、起きたのか死んだのかを怪しみ疑問形で尋ねたのは高校2年生の妹の桜だ。
「ひぃちゃんがおこしたの!えらい!?」
「うんうん。偉いよぉ。可愛いよぉ」
桜は向日葵を抱き締めながら褒めると同時に愛でる。
愛する妹達の微笑ましい光景だが、ダメージが大きすぎるため眺めるしかできない。
しばし回復を待ってからリビングに移動した。
「蓮兄は今日も遅いんでしょ?ご飯作っておくから温めて食べてね。」
「くぅぅ。可愛くて気配りまで出来て……。なんてい良い妹なんだ。」
「毎日泣かないでよ。可愛いのは否定しないけどね。はい、こっちはお弁当」
昨年に両親を飛行機事故で亡くしたため、蓮、桜、向日葵の3人で支え合いながら生活をしている。
御剣家の長男、蓮。
産みの母親は幼い頃に病気で他界。
現在25歳。社会人2年目。
新卒で入った会社が超絶ブラックの営業会社。
パワハラ、モラハラは当たり前。
定時は18時だが、なぜか21時から始まる会議。
終電を逃すのが日課になりつつあり、職場に泊まる猛者も現れ始めている。
可愛い妹2人と少しでもコミュニケーションを取るため、終電を逃しても帰宅できるように、自転車で通勤をしている。
幼少期から剣道と空手をしていたため、身体の強さには自信がある。
今は家族と睡眠時間を優先して手付かずだが、ゲームとプラモデルが趣味だ。
「本当にいつもありがとな。なるべく早く転職するからな!」
「頑張ってくれてありがと。でも、私たちより蓮兄の身体が心配だよ」
長女、桜。
現在16歳。高校2年生。
容姿端麗、頭脳明晰。
運動は得意ではないが、家事全般をこなせる超ハイスペックな美少女。
蓮が中学3年の時に、蓮の父が再婚した相手の連れ子のため血の繋がりはない。
高校に入学して半年。殺意の湧く噂ではあるが、高校で一番モテるらしい。
「ひぃちゃんも!ひぃちゃんも!にぃにすき!」
次女、向日葵。
現在4歳。幼稚園児。
家族の中心的存在だ。
蓮の父と桜の母の間に生まれた子。
蓮と桜にとっては血の繋がった妹だ。
天真爛漫で、愛嬌があるため、誰からでも好かれる。
預かり保育を利用しながら、幼稚園へ通っている。
好きな食べ物はミカン。
「そうかそうか。お兄ちゃんも、ひまちゃんが大好きだよぉ」
あまりの愛おしさに抱き上げて頬擦りをする。
幸せをこれ以上壊させないために、妹達を守るために、頑張るしかない。
そう心に誓う日々だ。
ブーブーブー
「蓮兄。電話なってるよ」
「ん?ああ。この時間の電話なら大丈夫」
出勤、通学前の朝早い時間。
この時間になる電話は1つしかない。
他界した両親の保険金を狙っての、親戚どもの電話だ。
そのお金は妹達の将来の為に手付かずでおいてある。
朝、昼、晩と毎日連絡をしてくる。
投資の話を持ち掛けたい銀行からの電話ですら昼と夕方の2回だというのに。
全く熱心なことだ。
「全く交流何てなかったくせに……」
クズどもが……と言いそうになるが、向日葵への悪影響を考え、口を噤んだ。
「蓮兄……」
「大丈夫。適当に対応しておくから任せときな」
桜は察しが良く、優しい性格だ。
要らぬ心配をかけたくない。
「さぁ、今日も皆でがんばるぞー!」
「おー!」
無理やり暗い雰囲気を終わらせる蓮。
雰囲気をわかってはいないが、ノリで続く向日葵。
その光景で和む桜。
「ふふふ。今度のお休みは皆でピクニックでもいこっか」
「やたー!ぴっくにっく!ぴっくにっく!」
桜の提案に、不思議なリズムを取る向日葵。
「そうだな。ちょうど紅葉の季節だしな」
ピクニックといわず、異世界にでも行けたなら……。
上司にこき使われることもない。
意味不明なパワハラも残業もない。
鬱陶しい連絡もない。
そんな少しの逃避が蓮の頭を過った瞬間。
フローリングと天井に、3人を挟むように光り輝く模様が浮かんだ。
ゲームや漫画で幾度となく見たことのある魔方陣に似ているが、思考を深めるの意図的に止めた。
「掴まれ!」
「きゃぁ!なにこれ!?」
「にぃに!ねぇね!」
蓮は咄嗟に妹達を抱き寄せ、3人は光の中に消えた。
暖かい朝食やお弁当をそのままにして……。
ドゴッ!
「おぼっ!!?」
可愛い声と鳩尾に何かがめり込む衝撃と痛みで目が覚めた。
「にぃに!お!は!よ!」
「ひ、ひまちゃん。お、おはよう……」
可愛い声と鳩尾にめり込んだ者の正体は、溺愛する年の離れた妹の向日葵だ。
「蓮兄そろそろ起きないと遅れるよぉ。あ、起きた……?」
悶絶する俺を見て、起きたのか死んだのかを怪しみ疑問形で尋ねたのは高校2年生の妹の桜だ。
「ひぃちゃんがおこしたの!えらい!?」
「うんうん。偉いよぉ。可愛いよぉ」
桜は向日葵を抱き締めながら褒めると同時に愛でる。
愛する妹達の微笑ましい光景だが、ダメージが大きすぎるため眺めるしかできない。
しばし回復を待ってからリビングに移動した。
「蓮兄は今日も遅いんでしょ?ご飯作っておくから温めて食べてね。」
「くぅぅ。可愛くて気配りまで出来て……。なんてい良い妹なんだ。」
「毎日泣かないでよ。可愛いのは否定しないけどね。はい、こっちはお弁当」
昨年に両親を飛行機事故で亡くしたため、蓮、桜、向日葵の3人で支え合いながら生活をしている。
御剣家の長男、蓮。
産みの母親は幼い頃に病気で他界。
現在25歳。社会人2年目。
新卒で入った会社が超絶ブラックの営業会社。
パワハラ、モラハラは当たり前。
定時は18時だが、なぜか21時から始まる会議。
終電を逃すのが日課になりつつあり、職場に泊まる猛者も現れ始めている。
可愛い妹2人と少しでもコミュニケーションを取るため、終電を逃しても帰宅できるように、自転車で通勤をしている。
幼少期から剣道と空手をしていたため、身体の強さには自信がある。
今は家族と睡眠時間を優先して手付かずだが、ゲームとプラモデルが趣味だ。
「本当にいつもありがとな。なるべく早く転職するからな!」
「頑張ってくれてありがと。でも、私たちより蓮兄の身体が心配だよ」
長女、桜。
現在16歳。高校2年生。
容姿端麗、頭脳明晰。
運動は得意ではないが、家事全般をこなせる超ハイスペックな美少女。
蓮が中学3年の時に、蓮の父が再婚した相手の連れ子のため血の繋がりはない。
高校に入学して半年。殺意の湧く噂ではあるが、高校で一番モテるらしい。
「ひぃちゃんも!ひぃちゃんも!にぃにすき!」
次女、向日葵。
現在4歳。幼稚園児。
家族の中心的存在だ。
蓮の父と桜の母の間に生まれた子。
蓮と桜にとっては血の繋がった妹だ。
天真爛漫で、愛嬌があるため、誰からでも好かれる。
預かり保育を利用しながら、幼稚園へ通っている。
好きな食べ物はミカン。
「そうかそうか。お兄ちゃんも、ひまちゃんが大好きだよぉ」
あまりの愛おしさに抱き上げて頬擦りをする。
幸せをこれ以上壊させないために、妹達を守るために、頑張るしかない。
そう心に誓う日々だ。
ブーブーブー
「蓮兄。電話なってるよ」
「ん?ああ。この時間の電話なら大丈夫」
出勤、通学前の朝早い時間。
この時間になる電話は1つしかない。
他界した両親の保険金を狙っての、親戚どもの電話だ。
そのお金は妹達の将来の為に手付かずでおいてある。
朝、昼、晩と毎日連絡をしてくる。
投資の話を持ち掛けたい銀行からの電話ですら昼と夕方の2回だというのに。
全く熱心なことだ。
「全く交流何てなかったくせに……」
クズどもが……と言いそうになるが、向日葵への悪影響を考え、口を噤んだ。
「蓮兄……」
「大丈夫。適当に対応しておくから任せときな」
桜は察しが良く、優しい性格だ。
要らぬ心配をかけたくない。
「さぁ、今日も皆でがんばるぞー!」
「おー!」
無理やり暗い雰囲気を終わらせる蓮。
雰囲気をわかってはいないが、ノリで続く向日葵。
その光景で和む桜。
「ふふふ。今度のお休みは皆でピクニックでもいこっか」
「やたー!ぴっくにっく!ぴっくにっく!」
桜の提案に、不思議なリズムを取る向日葵。
「そうだな。ちょうど紅葉の季節だしな」
ピクニックといわず、異世界にでも行けたなら……。
上司にこき使われることもない。
意味不明なパワハラも残業もない。
鬱陶しい連絡もない。
そんな少しの逃避が蓮の頭を過った瞬間。
フローリングと天井に、3人を挟むように光り輝く模様が浮かんだ。
ゲームや漫画で幾度となく見たことのある魔方陣に似ているが、思考を深めるの意図的に止めた。
「掴まれ!」
「きゃぁ!なにこれ!?」
「にぃに!ねぇね!」
蓮は咄嗟に妹達を抱き寄せ、3人は光の中に消えた。
暖かい朝食やお弁当をそのままにして……。
1,481
お気に入りに追加
1,902
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる