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ジェットコースター

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 宇宙は膨張している。ならば、我々は宇宙の果てに行くことはできない。
 いや、我々の力ではビックバンを見るようなことさえできるはずがない。近付けば近くほどその力は強大であり、美しくあり、爆音である。
「だからいったでしょ!」
美雪は心底腹を立てていた。ここは、とある遊園地。
「今の怖かった?まあ、これより怖くないアトラクションは山ほどあるから安心しろよ」
「そんなこと言うけどさ、乗れない人の気持ちわかってないでしょ?まずさ、書いてあったじゃん。心臓の弱い方は乗らないでくださいって。私、心臓弱いも同然だもん。それに…」
「わかったわかった。謝るからさ、そんなにぐちぐち言うなよ」
「一旦休む。それかパレード見る」
「ええ、もう?遊園地に来てからまだ今のアトラクションしか乗ってないよ」
「あれは私にとってみれば、4つぶん乗ったようなものなの!」
悠人は美雪に連れられ、少し歩いたところにある芝生広場に腰を下ろした。
「だってさ、早くて高いだけならまだわかるのよ」
「うん」
「なのに回転もするのよ!」
「うんうん」
「いや、まず乗車場よ、おかしいのは。なんで、前向きと後ろ向きがあるの?後ろ向きだと、あんなの次になるが起こるかわからないでしょ?そこではなんとか前向きに私が座って、悠人が後ろ向きの方に座ったけどさ、何が起きたか覚えてる?いきなり落とされた後に前後が逆になったのよ!そうなれば前が後ろで後ろが前でしょ?そんな理不尽なことある?ちょっとさ、開発者呼んできてよ」
「まあまあ」
「そこでまあむちゃくちゃ腹立ててだけどさ、その後のあれは何あれは」
「あれって?」
「暗闇で次にどうなるかあんまりよくわからないことよ!あんなの自分がどう動くか予測不可能になっちゃうじゃない。」
「わかってないなー。あれが面白いんだろ?」
「わかってないのはそっちよ。もしも、今震度7の地震が起きたとしてここから見える、あの野外のジェットコースターがバキバキになって、コースターがあなたの頭を直撃したらどう思う?聞いてないわよ!ってなるでしょ?12月20日に震度7の地震が起きます、なんてことがわかればジェットコースター直撃を避けるために、家に閉じこもるでしょ?」
「家に閉じこもるのもあんまり良くないんじゃないか?」
「うるさいわね、そんな細かいことに目をつけて。でもわかるでしょ?小中高大就職、定年まで働いて老後をおくる。それがわかるからみんな楽なのよ。でも、明日から全世界の会社が無くなりましたとかってなったらどう思うの?それと同じよ。行き先が無くなるなんて」
「だから、無くなってないって」
「まあいいわ、でも最後はなんなの?」
「最後って、あの爆発か?」
「そうそう、ビッグバンよ!よく考えて、宇宙空間を表現してるアトラクションなんだよね?だったら、ビッグバンの爆発音が聞こえるっておかしくない?真空状態では音が聞こえないって開発者は習わなかったのかしら。それにあんな近くでビッグバンが起きたら、暑いどころの話じゃないわよ。どんなだけサウナ好きなノルウェー人でも日本人でも死んじゃうわ」
「アトラクションにディテール求めるなよ。あんなのはキャーキャー言って楽しめればいい物なんだからさ」
「確かに、言い過ぎたわ。じゃあこれだけ最後に言わせて。ジェットコースターを降りてから現実世界に戻るの早いと思わない?余韻ってものはないの?余韻ってものは。映画みたいにエンドロールを流すとか工夫できないのかしら。キャーキャーにも余韻を作るべきだわ。そして明日の仕事を思い出し、虚無感を与えられるべきよ」
「パレード観ようか」
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